TOEICの受験経験がある、または受験を検討している方のなかには、自分のTOEICスコアが世界的な基準でどのレベルに相当するのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、TOEICのスコアをCEFRに換算する方法を紹介します。
CEFRに換算することで、グローバルな基準で英語の習熟度が測れるため、自分の英語力の目安を把握するのに役立ちます。
また、TOEICのスコアをCEFRに換算するメリットもあわせて解説するため、ぜひ参考にしてください。
CEFR(セファール)とは
CEFRとは、“Common European Framework of Reference for Languages” を省略した呼称で、日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」と訳されます。
発祥の地はヨーロッパであり、さまざまな言語が話されるヨーロッパ諸国において外国語習熟度の基準を設定するために開発されました。
かつてはヨーロッパ市民のために作られた基準でしたが、現在では世界中で英語力の一般的な基準としての役割をもっており、言語教育の向上に寄与しています。
CEFRの6つの基準
CEFRでは、外国語習熟度を以下の6つのレベルに分類しています。
CEFRの基準
- C2
- C1
- B2
- B1
- A2
- A1
各レベルの能力基準は文部科学省によって明確に区分され、それぞれのレベルに対応する各検定の級や点数も設定されています。
以下では、各英語力レベルの基準を解説します。
段階 | CEFR | 習熟度 |
---|---|---|
熟練した言語使用者 | C2 | 聞いたり読んだりした、ほぼすべてのものを容易に理解できる。 一般的ではない話し言葉や書き言葉でも、相手から得た情報をまとめ、根拠も論点も一貫した方法で再構築できる。 自然に、流暢かつ正しく自己表現ができる。 |
C1 | 話題を問わず、複雑な内容かつかなり長い文章を理解して、その文の含意まで把握できる。 言葉を探しているという印象を与えずに、流暢かつ自然な自己表現ができる。 日常的な生活や、学業や職業の側面で、適切な言葉を効果的に用いることができる。 複雑な話題について明確で、しっかりとした構成の、詳細な文章を作れる。 | |
自立した言語使用者 | B2 | 話者の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的・具体的に関わらずどのような話題でも、複雑な文章の大体の内容を理解できる。 外国語の母語話者と緊張せずに自然なやり取りができるくらい、流暢かつ自然に会話ができる。 話者の専門分野に限らない幅広い話題について、詳しくわかりやすい文章を作れる。 |
B1 | 仕事、学校、娯楽といった身近な話題について、相手が標準的な話し方であれば大体の要点を理解できる。 外国語が話されている国において、起こりうる事態に対処できる。 身近な話題や関心のある話題について、理解しやすい簡単な文章を作れる。 | |
基礎段階の言語使用者 | A2 | 個人、家族、友人に関する基本的な情報や、自身が直接的に関わる事象に関して、よく使われる表現が理解できる。 日常的な範囲で簡単な内容であれば、単純で直接的な情報交換ができる。 |
A1 | よく使われる日常表現や基本的な言い回しを理解しており、それらを使って会話ができる。 自己、他人に関する紹介や個人的な話題に関しての質問、応答ができる。 相手がゆっくり、はっきりと協力的な話し方をしてくれる場合には、簡単なやり取りができる。 |
また、CEFRでは外国語の習得レベルを、基礎・自立・熟練という3つのカテゴリーに分けています。
この3つの段階に加えて、さらに2段階に分けた6つのレベルで設定されています。
各レベルの能力基準は明確に定義されており、それぞれがしっかりと区別されています。
そのため、目標とする英語力にもとづいて、どのレベルを目指すかを逆算するのに役立ちます。
CEFRが日本で注目されている理由
ここまでCEFRの特徴を紹介してきましたが、なぜCEFRは日本で注目されつつあるのでしょうか。
その理由として、昨今英語教育が重要視されるようになり、国内で英語検定の受験が増えたことにより、各英語検定間でわかりやすい評価基準が必要になったことが挙げられます。
以前は日本国内で主流であったのは英検やTOEICでしたが、現在ではケンブリッジ英語検定やGTEC、IELTS、TOEFLなどの受験者が増えています。
さまざまな英語試験のなかで、試験の種類を問わず、能力を公平に評価するためのわかりやすい基準が必要とされているため、CEFRの重要性が高まっているのです。
TOEICスコアをCEFRに換算するメリット
TOEICスコアをCEFRに換算することには、多くのメリットがあります。
この変換を行うことで、英語力の評価が国際的な基準にもとづいて行われ、自身のスキルを客観的に把握できるようになります。
具体的なメリットについて、以下で詳しく紹介します。
英語資格試験をいくつも受験する必要がない
CEFRは、英語の習熟度や運用能力を国際的、総合的に評価するための基準です。
そのため、TOEICスコアをCEFRに換算することで、自分のTOEICスコアがほかの英語能力試験でどれくらいのスコアやレベルに相当するのかを比較できます。
英語力を証明するために複数の英語資格試験を受験することは時間の無駄ですが、CEFRを使用することで、異なる試験間での比較が容易になります。
CEFRを活用することで、必要のない試験に時間を費やすことを避け、本当に必要な英語試験に集中できるため、学習効率が向上します。
自分の英語力を証明できる
TOEICスコアをCEFRに換算しておくことで、TOEICの受験が一般的ではない国や、TOEICの存在を知らない方に対しても、自身の英語力を証明できます。
これにより、世界中どこにいても自分の英語力を証明できるため、留学や海外就職を検討している人にとって便利な仕組みといえます。
TOEICのスコアをCEFRに換算する方法
それでは、実際にTOEICのスコアをCEFRの基準に合わせてみましょう。
TOEICスコアをCEFRに換算するには、異なる方法にもとづく2種類の対照表があります。
1つ目は、文科省が平成30年に発表した対照表で、2つ目はTOEICを運営するIIBC(一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会)が提供している対照表です。
これら2つの対照表は、異なる換算方法が使われているため、自分の目的に合った方法で換算すると良いでしょう。
文科省による対照表
文科省が発表した対照表では、TOEICにおける「L&Rのスコア」と「S&Wのスコア」を足して求められる合計点数から、CEFRに換算されています。
TOEICの点数換算では、CEFRの最高レベルであるC2に該当する点数がないため記載していません。
CEFR | L&Rスコア+S&Wスコアの合計点 |
C1 | 1,305〜1,390(L&R 945〜/S&W 360〜) |
B2 | 1,095〜1,300(L&R 785〜/S&W 310〜) |
B1 | 790〜1,090(L&R 550〜/S&W 240〜) |
A2 | 385〜785(L&R 225〜/S&W 160〜) |
A1 | 200〜380(L&R 120〜/S&W 80〜) |
IIBCによる対照表
IIBCが発表した対照表では、4技能ごとのスコアがそれぞれCEFRに換算されています。
各スキルの習熟段階を知れるため、苦手なスキルを知りたい方におすすめのスコア換算方法です。
こちらも同じく、CEFRの最高レベルであるC2に該当する点数がありません。
CEFR | Listening | Reading | Speaking | Writing |
C2 | – | – | – | – |
C1 | 490〜 | 455〜 | 180〜 | 180〜 |
B2 | 400〜 | 385〜 | 160〜 | 150〜 |
B1 | 275〜 | 275〜 | 120〜 | 120〜 |
A2 | 110〜 | 115〜 | 90〜 | 70〜 |
A1 | 60〜 | 60〜 | 50〜 | 30〜 |
CEFRに換算されるTOEIC以外の資格・検定
TOEICのスコアをCEFRに換算する方法を紹介しましたが、CEFRに換算することで比較できるほかの英語検定にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下では、CEFRに換算できる6つの英語検定を紹介します。
英検
英検は、老若男女問わず幅広い年齢層が受検できるため、多くの受験者が点数の比較対象となることが特徴です。
日本ではもっとも一般的な英語検定であり、近年では、一定の級以上を取得しておくことで高校や大学の入試、単位認定で優遇される仕組みが導入されています。
英検をCEFRに換算する際は、1級〜3級における英検CSEスコアをもとに、点数に応じてC1〜A1に分類されます。
IELTS
IELTSは “International English Language Testing System” を省略した呼称です。
英語を第二言語として学びたい方や、イギリス英語圏に移住や留学を考えている方が多く受験しています。
IELTSをCEFRに換算する際は、スコアに応じてC2〜B1に分類される仕組みとなっています。
ケンブリッジ英語検定
ケンブリッジ英語検定は、CEFRの開発元であるケンブリッジ大学英語検定機構が運営しており、グローバルスタンダードを重視した英語検定として知られています。
単に英語の知識を測るだけではなく、実際に英語の知識を使いこなせているかを重視している検定です。
ケンブリッジ英語検定をCEFRに換算する際は、C2〜A1まで、すべてのレベルに対応しています。
GTEC
GTECは、ベネッセが実施している英語4技能検定で、受験対象年齢を幅広くカバーしています。
小学生から社会人まで、それぞれの年齢に合ったテストが提供されている点が最大の特徴といえます。
GTECをCEFRに換算する際は、スコアに応じてC1〜A1までのレベルに分類されます。
TEAP/TEAP CBT
TEAPは、上智大学と日本英語検定協会によって共同開発され、大学入試向けの英語能力試験です。
TEAPは、大学教育レベルの英語力を測るテストであり、TEAP CBTは現代の特徴であるグローバル×IT社会を牽引する思考力・判断力・表現力を測るテストにとなっています。
TEAP/TEAP CBTをCEFRに換算する際は、スコアに応じてC2〜A2のレベルに分類されます。
TOEFL
TOEFLは、全部で4種類の試験プログラムがありますが、一般的にTOEFL iBTのことを指すことが多いです。
TOEFL iBTは、大学や大学院レベルの学術的な英語力を測るテストであり、主にアメリカ英語圏へ留学を考える学生が受験しています。
TOEFL iBTをCEFRに換算する際は、スコアに応じてC1〜B1のレベルに分類されます。
CEFRで見るTOEICの難易度
前述したように、CEFRを活用することでTOEICと点数の比較ができる英語検定は多くあります。
そのなかで、TOEICの難易度はどの位置に該当するのでしょうか。
ここでは、CEFRへの換算表を使って、IELTSの難易度を詳しく見てみましょう。
TOEICの平均点数
ETSが発表したデータによると、2022年のTOEIC公開テストにおける日本の平均スコアは、以下のとおりです。
2022年度のTOEIC平均点
- Listening:309点
- Reading:252点
- Speaking:113点
- Writing:132点
IIBCが発表しているTOEICとCEFRの対照表と、実際の各テストスコアを比較したところ、B1〜A2に該当していることがわかりました。
B1〜A2の範囲は、CEFR基準のなかでも中級者くらいの英語レベルに相当するため、このことからTOEICの受験者層は英語中級者が多いと考えられます。
TOEICの難度は英検と同じくらい?
CEFRの基準に従って比較すると、TOEICと英検のスコアはともにC1〜A1の範囲に分類されます。
しかし、上記にもとづいてTOEICの難易度が英検と同じくらいであるといえるかというと、そうではありません。
TOEICと英検では問題傾向が大きく異なるため、一概に「同じくらいのレベル」とは言いきれません。
ただし、平均スコアに着目すると、TOEICの平均スコアが当てはまるB1レベルは、英検のスコアでいうと2級から準1級の範囲に相当します。
単純な点数の換算だけでいうと、TOEICの方がやや平均が高いといえるかもしれません。
\ 難易度について詳しく知りたい方はこちら!/TOEICの受験がおすすめの人
いくつもの選択肢がある英語試験のなかで、TOEICの受験がおすすめの方にはどのような特徴があるのでしょうか。
以下では、TOEICの受験をおすすめしたい人物像を2つ紹介します。
TOEICスコアを認めている学校を受験する人
前述したとおり、受験や単位認定で優遇される英語試験はいまだに英検がメインですが、なかにはTOEICスコアを受験の優遇措置として採用している大学もあります。
希望する大学がTOEICスコアを受験要件として採用しているか確認し、要件を満たす場合は、TOEIC受験を検討してみても良いでしょう。
就活などに活かしたい人
英語能力の評価として、日本でもっとも活用されているのはTOEICであり、とくに企業で広く認められています。
そのため、就職・転職・キャリアアップなど、英語力を仕事の場に活かしたいと思っている方は、TOEICの受験がおすすめです。
自身のTOEICスコアをCEFRに換算してみよう
今回は、TOEICスコアをCEFRに換算する方法と、そのメリットについて紹介しました。
CEFRを活用することで、TOEICスコアを簡単にほかの英語検定と比較できるようになります。
これにより、自身の英語力を客観的に把握し、目標に向けた効果的な学習計画を立てることが可能です。
TOEICの受験を検討している方や、英語力を仕事や留学に活かしたいと思っている方は、ぜひ一度、受験してみてください。