2020年4月から導入されたTOEICのオンライン受験は、従来の会場受験とは試験時間、場所、受験方法が大きく異なります。
TOEICのオンライン受験は原則団体受験ですが、一部の語学学校ではIPテストを個人で受けることもできます。
この記事では、オンライン受験の特徴と受験方法、オンライン受験のメリットとデメリット、オンライン受験ができるスクールについて紹介します。
TOEICのオンライン受験とは
TOEICとは、英語を用いたコミュニケーションおよびビジネス能力を検定するための語学検定試験です。
正式名称は「国際コミュニケーション英語能力テスト(Test of English for International Communication)」です。
合否ではなくスコアによって英語運用能力を判定するシステムを採用しており、世界的にひろく知られています。
非英語圏の国では雇用・人事評価の際の判断材料として活用されるケースも多く、日本では大学や大学院における入学試験のかわりにもなっています。
TOEICの特徴は、最大で4技能の能力を測定でき、5種類の試験が用意されている点です。
- TOEIC Listening & Reading Test(TOEIC L&R):「読む・聞く」力を検定する
- TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W):「話す・書く」力を検定する
- TOEIC Speaking Test:「話す」力を検定する
- TOEIC Bridge Listening & Reading Tests:初級者の「読む・聞く」力を検定する
- TOEIC Bridge Speaking & Writing Tests:初級者の「話す・書く」力を検定する
検定したい技能や自身の英語力によって受験する試験を自由に選べます!
さらに、TOEICには、試験方式として「公開テスト(SPテスト)」と「団体特別受験制度(IPテスト)」の2種類があります。
それぞれの違いは以下のとおりです。
- 公開テスト:主に個人向けに実施されているもの
- IPテスト:企業・学校などの団体向けに実施されており、公開テストの過去問題で構成された試験を受験するもの
※IPテストは、公開テストを団体で受ける「公開テスト団体一括受験申込」とは異なります。
今回のテーマである「オンライン受験が可能なTOEIC」は「IPテスト」のみに対応したものです!
オンライン受験と会場受験の違い
TOEICの受験方法は、オンライン受験と会場受験の2種類です。
それぞれの受験方法には、以下のような違いがあります。
オンライン受験
- 自宅やオフィスなどのインターネット環境が整った場所で受験
- 定められた期日までであれば受験日時は自由
- 試験時間は、リスニングとリーディングを合わせて約1時間
- 問題数は、リスニング、リーディングでそれぞれ45問
- 問題はUnit構成となっており、Unit1とUnit2でそれぞれリスニングとリーディングがある
会場受験
- 全国約80都市の指定された試験会場で受験
- 試験日は年に10~13日ほど(各日、午前と午後の2回実施)
- 試験時間は、リスニングとリーディングを合わせて約2時間
- 問題数は、リスニング、リーディングでそれぞれ100問
- 問題はPart構成となっており、Part1~4がリスニング、Part5~7がリーディング
また、オンライン受験版IPテストの問題構成は、以下のとおりです。
リスニングセクション | リーディングセクション | |
Unit 1 | 写真描写問題 応答問題 会話問題 説明文問題 | 短文穴埋め問題 長文穴埋め問題 読解問題 |
Unit 2 | 応答問題 会話問題 説明文問題 | 短文穴埋め問題 長文穴埋め問題 読解問題 |
オンライン受験の申し込み方法
オンライン受験は、基本的に団体向けのプログラムであるため、所属している企業や学校で実施していない場合は申し込めません。
しかし、いくつかの語学学校では学校で申し込んでいるIPテストの個人受験を認めています。
そのため、所属している団体でIPテストを実施しておらず、個人でIPテストに申し込みたい場合は語学学校での受験となるでしょう。
オンライン受験のメリット
TOEICのオンライン受験は、会場受験とは大きくシステムが異なります。
そのため、会場受験にはないメリットがあることも事実です。
以下では、オンライン受験のメリットについて紹介します。
試験時間が2時間から1時間に
公開テストは、リスニングセクションが100問で約45分、リーディングセクションが 100問で75分となっています。
それに対してオンライン受験版IPテストは 、リスニングセクション計45問・所要時間は約25分で、リーディングセクションに至っては計45問・所要時間約37分間と設定されています。
その理由は、オンライン受験では「CAT」というテストシステムが採用されているためです。
CATとは、正式名称「Computer Adaptive Test」の略称で、受験者の英語力に応じて出題される問題が調整されるテストシステムです。
このシステムが導入されたことにより、従来よりも少ない問題数と時間で受験者の英語力を検定できるようになっています。
いつでも好きな時間に受験できる
従来のテスト方式では、自宅から近い場所を試験会場として選んではもらえるものの、指定された時間に試験会場で試験を受ける必要があります。
また、公開テストは日曜日にしか開催されないため、日曜日に仕事を休めなかったり、急な予定が入ってしまったりする方は受験しにくい面もあります。
しかし、オンライン受験では試験日や試験開始時間を自由に設定できるため、自身の都合に合わせて受験できます。
会場や日時は申し込みをする団体が決めるため、必ずしも自由にとはいきませんが、公開テストに比べれば柔軟性が高いことは確実でしょう。
自宅で受験できる
会場受験の場合、家から近い会場を希望できるものの、電車やバスの時間を含めれば1時間程度かかってしまうこともあります。
地方に住んでいる方はさらに遠い場合もあるでしょう。
また、自宅受験では会場よりもはるかにリラックスできる環境で受験できます。
私自身、会場受験をする際に隣の人の咳でリスニングの音声がうまく聞き取れなかった経験がありますが、自宅受験ではそのような懸念もなくなりますね!
結果がすぐに確認できる
モチベーションを維持した状態で結果を確認できるため、試験後の振り返りや苦手分野の対策にも積極的にとりかかれるでしょう。
受験後の結果確認に関するスケジュールは以下のとおりです。
試験の種類 | オンライン確認 | 郵送 |
TOEIC(公開テスト) | 受験日から17日後 | 受験日から30日以内に発送 |
TOEIC Bridge(公開テスト) | なし | 受験日から35日以内 |
TOEIC(IPテスト/会場受験) | なし | IIBCへのデータ到着から5営業日後 |
TOEIC(IPテスト/オンライン受験) | 受験直後 | IIBCへのデータ到着から4営業日以内 |
IPテストは公開テストよりも結果の発送がはるかに早く、オンライン受験の場合は試験終了直後に結果が確認できます!
オンライン受験のデメリット
オンライン受験にはさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。
受験上の注意にあたる部分でもあるため、受験を検討する際はデメリットも理解しておくとよいでしょう。
以下では、従来の試験と比較しつつ、オンライン受験のデメリットについて解説します。
先読みができない
オンライン受験では、TOEICのリスニング対策の定番である「先読み」ができません。
「先読み」とは、リスニング音声が流れる前に、印刷された問題文をみて問われる内容を把握しておくことです。
しかし、オンライン受験版IPテストの場合は「先読み」できません。
その理由は、リスニング問題が1問ずつ表示されるためです。
1問解答すると次の問題が表示されるシステムであるため、先に問題文に目を通すことはできず、流れる音声に全力で耳を傾けるしかありません。
時間配分が決められている
公開テストの場合、時間配分が決められているのはリスニングとリーディングの各セクションごとの時間だけです。
リスニングは音声に合わせて問題を解き進めますが、リーディングはそれぞれのパートにどれくらいの時間をかけるかは自由に決められます。
しかし、オンライン受験ではユニットごとに制限時間が設けられており、ユニットをまたいで問題を解いたり、見直したりすることはできません。
そのため、得意分野を先に解いておき、余った時間に応じて苦手分野にしっかり時間をかける方法や、わからない問題をとばしておいて、あとから解く方法などは使えません。
解答せずに空欄にしておくと、制限時間になったタイミングで次のユニットに進んでしまうため、注意しましょう!
受験に集中できる環境を整える必要がある
オンライン受験は、好きな場所で受けられる一方、受験に集中できる環境をみずから整える必要があります。
公開テストの場合は、試験会場に向かう手間や時間はあるものの、会場は「試験をする」という前提でセッティングがなされています。
そのため、私たち受験者も集中して試験に臨むことが可能です。
しかし、自宅で受験する際には、家族の在宅時間や環境音に配慮したり、気が散らないようにデスク周りを整理したりと、さまざまな準備が必要です。
オンライン受験のリスニングではイヤホンやヘッドホンを利用しますが、遮音性の高い密閉型が個人的にはおすすめです!
1問あたりの比重が増える
オンライン受験は、公開テストに比べ、約半分の問題数で受験できますが、満点はいずれも990点です。
そのため、自動的に1問あたりの比重が増えます。
TOEICスコアは素点で算出するわけではないため、配点が変わるという表現は正しくありませんが、1問誤答したときのスコア変動は大きくなるでしょう。
TOEICのオンライン受験でよくある質問
ここまでTOEICのオンライン受験について解説しましたが、公開テストに比べると認知度、受験者数ともに少ないため、Web上でヒットする情報も少なくさまざまな疑問があるでしょう。
以下では、TOEICのオンライン受験に関してよくある疑問について回答します。
個人での申し込みはできない?
2021年7月現在、オンライン受験はIPテストのみに対応している制度です。
IPテストは、団体のみ申し込みできる試験形態であるため、個人受験は基本的にできません。
しかし、一部の語学学校や英語スクールでは、指導の一環としてTOEIC IPテストを活用しています。
そのため、所属している企業や学校でIPテストを実施していない方でも、語学学校の一員として個人受験ができます。
以下のスクールではTOEIC IPテストを受けられるだけでなく、スコアアップの実績も豊富です!
スクール | 特徴 |
トライズ | TOEIC650点オーバーの上級者も平均150点アップ |
PROGRIT | 受講前後のTOEIC IPテストが無料になる特典つき |
イングリッシュカンパニー | 3か月でTOEICスコア300点アップの実績あり |
ステージライン | 全プランが月謝制のため、リーズナブルにお試し可能 |
MAKIEIGO | 動画講座+IPテスト受験が可能なコースあり |
申し込み団体に所属していない人も受験できる?
IPテストは、企業や学校が申し込むシステムです。
基本的に主催団体に所属していることが受験者になるための必須条件であるため、部外者は申し込みができません。
そのため、自宅や職場の近くの語学学校でオンライン受験版のIPテストが開催されることになっても、その語学学校の一員でない限りは申し込みできないため、注意が必要です。
公式認定証はもらえる?
公式認定証とは、TOEICスコアを証明するための書類です。
名前や顔写真とともにスコアが掲載されます。
しかし、オンライン受験では公式認定証が発行されません。
かわりに「スコアレポート」と呼ばれる個人成績表が発行されます。
なお、スコアレポートはpdf形式で発行されるため、ダウンロードして自身で保管しておく必要があります。
公式認定証が受験から2年間再発行を認めているのに対し、スコアレポートのダウンロード期限は試験結果を確認できるようになった日の翌月末までである点に注意しましょう!
就活や受験にオンライン受験のスコアを利用できる?
「公式認定証」と「スコアレポート」は名前が異なるものの、いずれもTOEICスコアであることに変わりはありません。
つまり、IPテストで算出されたスコアも英語資格として履歴書などに記載できます。
しかし、スコアの価値は同じでも「公式認定証」は発行されません。
そのため、学校や企業にIPテストのスコアをTOEICスコアとして提出する際は、公式認定証の提出が必要かを確認する必要があります。
カンニング対策はどうなっている?
公開テストでは正式な試験官、IPテストの会場受験では主催団体の職員が試験監督をしています。
一方、自宅でオンライン受験をする場合、もちろん試験官はいません。
しかし、時間的な制約が大きなTOEICでは、ほとんどカンニングをする余裕はないでしょう。
また、2021年3月からITを活用したカンニング対策も導入されています。
まず、受験者がPCのWebカメラを通じて、試験を受けている様子を撮影して主催者側に送ります。
その映像をAIが解析して目の動きからカンニングの有無を特定するシステムです。
TOEICの受験前に対策するなら…
TOEICで高スコアを取得するには、試験対策が必須です。
TOEICでは難易度のブレが少ないうえ、問題数や問題形式、出題内容が毎回同じであるため、しっかり対策しておくことをおすすめします。
いろいろな対策方法があってどれを選ぶべきかわからない方は、以下を参考にしてください。
スキマ時間に学習したいならアプリがおすすめ
スキマ時間を活用するには、アプリ学習です。
とくにTOEIC対策をする方におすすめしたいのが「スタディサプリ」です。
スタディサプリのTOEIC L&Rコースでは、3分でできる演習・講義のコンテンツが充実しており、通勤・通学の合間にもサッと学習できます。
また、本番試験にして20回分もの演習問題が収録されている点もうれしいポイントです。
たくさん問題を解きたいなら問題集がおすすめ
とにかくたくさん問題を解くには、問題集がおすすめです。
TOEICのような試験でスコアをとるには、問題形式に対する慣れが重要です。
独特のスピード感や時間配分、先読みのテクニックなどを練習するのに、問題数をこなすことは欠かせません。
さまざまな問題集の中でどれを買うべきか迷っている方は、以下の記事を参考にしてみてください!
語学学校やスクールでもオンライン受験はできる!
TOEICのIPテストのみに認められているオンライン受験は、自宅やオフィス、学校で、自由な時間に受験できるシステムです。
とくに新型コロナウイルスのリスクを懸念している方にとっては、ぜひ利用すべき制度でしょう。
また、問題数や試験時間が短く、公開テストよりもリーズナブルな価格で受験できる点も、オンライン受験の魅力です。
所属している企業や学校ではもちろん、語学学校や英会話スクールでも開催している場合もあるので、ぜひチェックしてみてください!