世界で最も有名な英語の資格試験の1つとして挙げられる「IELTS(アイエルツ)」は、海外留学や海外移住には必須であるといわれています。
グローバル化が進む近年、将来的に海外で就職を希望する方も少なくないのではないでしょうか。
海外で働くためには、英語力を証明するために、IELTSのスコアの提出が必ず求められるといっても過言ではありません。
本記事では、海外で医師として働くために必要なIELTSのスコアやそのための勉強をする時に意識したいことなどについて、詳しく紹介します。
IELTSを受験すれば海外で医師になれるの?
海外で働くことを目指す日本人医師にとって、語学能力は必須です。
英語圏で医師として活動するためには、英語力の証明が必要になります。
英語力を証明する条件として、IELTSアカデミック・モジュールを受験して、基準を満たすスコアが求められます。
IELTSアカデミックを受験する理由
IELTSには、アカデミック・モジュールとジェネラル・トレーニング・モジュールの2つの種類があります。
一般的に、アカデミックは英語圏の大学や大学院への留学に、ジェネラルは英語圏の国(オーストラリアやカナダなど)への移住または永住に必要だといわれています。
そのため、海外で医師として活動するにはIELTSジェネラルを受験することが必要だと思いがちですが、英語圏で医師や看護師として働く際に必要なのは、実はアカデミックなのです。
IELTSアカデミックを受験して基準スコアを取得することは、英語圏で医師や看護師として働く際の登録申請の条件として、必要になります。
海外で医師として活動を希望している方は、アカデミックを受験しましょう。
IELTSアカデミックとIELTSジェネラルの具体的な試験内容やどちらを受験すべきかなど、以下のページで違いを詳しく紹介しています。
IELTSのテストの種類について、知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
医師として活動するために必要なIELTSのスコア
英語圏で医師として活動するために必要なIELTSのスコアは以下の通りです。
国名 | IELTSスコア | ||||
---|---|---|---|---|---|
リスニング | リーディング | ライティング | スピーキング | オーバーオール | |
イギリス | 7.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 | 7.5 |
オーストラリア | 7.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 |
ニュージーランド | 7.5 | 7.0 | 7.0 | 7.5 | – |
カナダ | 7.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 | 7.0 |
※上記のスコアは、2019年2月の時点でのデータです。
最新情報や詳細は各国のMedical Councilにお問い合わせください。
IELTSの試験は、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4技能で構成されています。
各技能のスコアとオーバーオールと呼ばれる、各技能の平均スコアが提示されます。
たとえば、イギリスでは各技能のセクションで7.0以上、オーバーオール7.5以上のスコアが必要とされています。
オーストラリア、カナダでは各技能とオーバーオールが7.0以上、ニュージーランドではリスニングとスピーキングが7.5以上、リーディングとライティングでは7.0以上のスコアが求められます。
日本人のIELTSアカデミックのスコア平均は、リスニングが5.9、リーディングが6.1、ライティングとスピーキングが5.5、オーバーオールが5.8だといわれていますので、スコア7.0以上を狙うのはかなりハードルが高いといえるでしょう。
IELTSについて、詳しく知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。
IELTSのスコア基準や試験概要、サンプル問題と解答例も紹介しています。
IELTSの勉強を始める時に意識したいこと
前述の通り、英語圏で医師として活動するためにはIELTSアカデミックの高いスコアが求められます。
IELTSで高得点を取るためには、効果的かつ効率よく勉強をする必要があります。
そこで、IELTSの勉強を始める時に意識したいことをここでは4つ紹介します。
勉強時間は必ず確保する
IELTSでハイスコアを取るためには、相応の勉強時間が必要です。
英語圏で医師として活動するために必要なスコア7.0〜7.5以上を目指すのであれば、300〜400時間の勉強時間が必要だといわれています。
一般的にIELTSでオーバーオールを0.5上げるためには、勉強時間は200〜300時間が基準です。
試験を受ける予定の時期から逆算し、どの機関でどれくらいの時間を使って勉強すれば目標のスコアに到達するのか計算してみます。
そして、具体的な学習計画を立てることが大切です。
学習計画を立てることができたら、次は勉強する時間を確保します。
学校生活を送りながら、または働きながら勉強をすることはカンタンなことではありませんが、できる限り継続して勉強することをおすすめします。
試験内容を大まかに理解しておく
問題集やテキストを解くような具体的な勉強に入る前に、IELTSの試験内容について大まかに理解しておきましょう。
IELTSは英語の知識量ではなく、英語の運用能力を測る試験です。
実際に使う場面に即した実践的な英語力、コミュニケーション力を問われる試験のため、試験の内容にも特徴があります。
また、採点基準もIELTS独特のため、採点基準もしっかり理解しておきましょう。
特に、日本人で苦手だと感じる方が多いライティングとスピーキングでは採点基準をしっかり理解することが重要なポイントです。
参考書または、テキストにしたがって勉強する
前述の通り、IELTSは試験内容や採点基準に特徴があります。
IELTSに特化した参考書やテキストにしたがって勉強しましょう。
IELTS公式問題集と、旺文社から出版されている実践IELTS英単語がおすすめです。
IELTSに特化した参考書やテキストは多数出版されていますが、特にリーディングの対策は、公式問題集だけで十分だといっても過言ではありません。
また、複数の参考書やテキストに挑戦することも避けましょう。
同じテキストを繰り返し解くほうが、記憶が定着しやすいためです。
基礎的な勉強だけでなく、問題集を解いて時間配分や試験の雰囲気に慣れる
IELTSを受験すると決める以前に、英語の基礎勉強は十分してきた、という方も少なくないでしょう。
しかし、前述の通り、IELTSは試験内容や採点基準に特徴があるため、かならずIELTSの公式問題集を使って、時間配分や試験の流れに慣れるようにしましょう。
IELTSでは、特にライティングとスピーキングの試験内容が特徴的だといわれています。
ライティングでは、グラフや表を読み解き、何を表しているのかということを書くこと、またそれに対して自分の意見を述べることが求められます。
スピーキングは試験官とマンツーマンの面接形式で行われ、質問に対して解答したり、試験官から渡されるトピックカードの内容に対して2分間のスピーチをしたりします。
どちらもしっかりとした対策が必要なため、公式問題集を解き、問題の傾向や時間配分などIELTSの試験に慣れておくことが大切です。
以下のページでは、特にIELTSを初めて受験する方へ向けて、全セクションに共通する対策方法を詳しく解説しています。
IELTSの試験に臨むうえで、おすすめのテキストや単語帳などの教材も紹介していますので、あわせてお役立てください。
IELTSで目標スコアを取得するためには、IELTSの対策をしっかりとして学習する必要があります。
特に、高いスコアを狙うのであればなおさらです。
そうはいっても、「勉強する時間がない」、「独学では限界を感じたりしている」という方には、IELTS公式団体であるバークレーハウスのIELTS対策講座がおすすめです。
生徒1人ひとりのレベルや都合に合わせた柔軟なIELTS対策のレッスンプランをご用意しています。
以下のページでは、IELTS講師による、IELTS対策のレッスンプランのサンプルを紹介しています。
IELTS対策のレッスンプランがどのような内容なのか、興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
日本人医師がつまずきやすいIELTSのセクションとは?
実際に、日本人医師がIELTSの受験に挑戦した時につまずきやすいセクションは、スピーキングとライティングの2つだといわれています。
スピーキング
スピーキングがつまずきやすいセクションである理由として、以下の2つが挙げられます。
- ・日本では英語で会話をする機会が少ないため
- ・IELTSでハイスコアを取る方法を知らないため
英語に自信がある方でも、日本では実際に英語で会話をする機会が少ないため、いざIELTSの試験の本番になると実力を発揮できなくなってしまうこともあり得ます。
IELTSのスピーキング試験では、沈黙の時間が続くと強制終了されてしまいます。
たとえば、予想外の質問をされた時に、何と言って場を持たせればいいのかということや、どんな単語や文法、どのようなことに注意して話せばいいのか。
こういったことを理解していないと、IELTSのスピーキングでつまずいてしまうでしょう。
また、IELTSのスピーキング試験では、以下の4つの独自の採点基準があります。
- ・Fluency and Coherence(流暢さと論理的一貫性)
- ・Lexical Resource(語彙の豊富さと適切さなどの語彙力)
- ・Grammatical Range(文法力の幅広さ)
- ・Pronunciation(発音)
採点基準を理解していないと、IELTSで高いスコアを取ることはできません。
採点基準を理解することがスコアアップへの近道です。
練習をする際にも、4つの採点基準を心がけて話す意識を持つことが大切です。
IELTSのスピーキング試験の採点基準については、以下のページでIELTS対策専門の講師が詳しく解説しています。
スピーキングセクションの概要も紹介しているので、あわせてぜひご一読ください。
ライティング
ライティングがつまずきやすいセクションである理由は以下の4つが挙げられます。
- ・文字数や時間制限があるため
- ・医学論文とは勝手が異なるため
- ・採点基準に見合った解答の方法を知らないため
- ・スコアアップに1番時間がかかるため
英語で医学論文を書いている医師であっても、IELTSのライティング試験でハイスコアを取れるとは限りません。
IELTSのライティングセクションは、前述の通り、グラフや表を読み解き、何をあらわしているのかということを書くこと、またそれに対して自分の意見を述べることが求められます。
文字数の制限があり、与えられたトピックやグラフなどを制限時間内にIELTSのライティングスタイルに仕上げられるまでに、ある程度の習得期間が必要になります。
ライティングセクションもスピーキングセクション同様、独自の採点基準があります。
【タスク1】
- ・Task Achievement(タスクを十分かつ適切に達成しているか)
- ・Coherence and Cohesion(論理の一貫性と流れの良さ)
- ・Lexical Resource(単語の難易度だけでなく選択も適切にできているか)
- ・Grammatical Range and Accuracy(文法の幅と正確に使用できているか)
タスク1の採点基準である「Task Achievement」では、求められる文字数の150字以上で書いているか、他の採点基準では「グラフや表を正確に読み取れているか」、「正確かつ簡略にまとめられているか」などが見られます。
【タスク2】
- ・Task Response(タスクに十分かつ適切に対応しているか)
- ・Coherence and Cohesion(論理の一貫性と流れの良さ)
- ・Lexical Resource(単語の難易度だけでなく選択も適切にできているか)
- ・Grammatical Range and Accuracy(文法の幅と正確に使用できているか)
タスク2においては、「Task Response」では、必要とされる文字数の250字以上で書かれているかがチェックされます。
また、具体的には「自分の意見を言えているか」、「意見をサポートする理由が書かれているか」といった点が採点の基準になります。
採点基準を理解しないと、どこに気をつけてライティングをおこなえば良いかわからず、減点対象となる可能性もあるので注意が必要です。
採点基準をしっかり把握することも、IELTSでハイスコアを獲得するために重要なポイントであるといえるでしょう。
IELTSのライティング試験で高得点を狙うには、採点基準を理解したうえで、適切な勉強方法もおこなわなければなりません。
以下のページでは、IELTSライティングのタスク1とタスク2それぞれの書き方の攻略法を解説しています。
具体的な勉強方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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スコア獲得後について
海外で医師として活動するためには、IELTSのスコアを獲得した後に必要なことがあります。
たとえば、オーストラリアで医師として活動するためには、IELTSで必要とされるスコア取得後に、AMC(Australian Medial Council)で筆記試験と臨床試験に合格しなければなりません。
これら試験の合格は、オーストラリアで医師として永住権を獲得しようとしている方や、3年以上の長期期間働きたいと考えている方に必要です。
試験に合格した後は、1年間の研修(試験と同時並行)を行い、General Registrationに登録できます。
まとめ
海外で医師として活動するためには、相応の語学力が必要です。
英語圏で医師として活動するには、IELTSアカデミックのスコアを獲得することが必須だといわれています。
必要なIELTSアカデミックのスコアは7.0〜7.5というハイスコアであるため、相応の勉強時間が必要になり、IELTSの採点基準に適した方法で勉強することが大切です。