TOEIC IPテストとは、企業や学校などの団体で実施される試験です。
公開テストと同じく、ETS(Educational Testing Service)が作成しており、国際ビジネスコミュニケーション協会が運営していますが、試験形式や会場、受験料など、公開テストとは異なる点も多くあります。
この記事では、TOEIC IPテストの概要やメリット、デメリット、公開テストとの違い、よくある質問への回答について紹介します。
TOEIC IPテストとは
TOEIC IPテストのIPとはInstitutional Programの略語です。
個々の団体により実施される形式のテストを意味しますが、試験の基本的な仕組み、難易度などはTOEICの公開テストと変わりません。
TOEIC IPテストの目的は、企業や学校によってさまざまですが、主に以下のようなものがあります。
- 昇格や昇給の基準
- 海外赴任者の選抜
- 英語研修の効果測定や授業におけるクラス分け
- 入学試験や単位認定
もちろん、IPテストは受験者が自身の英語力を第三者に証明する資格としての効力も持ちあわせています。
マークシートとオンラインの2種類がある
TOEIC IPテストには、以下の2種類の試験方式があります。
- 試験会場でマークシート方式により解答する方式
- パソコンの画面上でオンラインにより解答する方式
オンライン方式は2020年4月からスタートしたこともあり、マークシート方式ほどはまだ知られていません。
しかし、オンライン方式のさまざまな利便性に加えて、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスのような感染症にかかるリスク、今後のネットワーク環境のさらなる改善などを背景に、オンライン方式のTOEIC IPテスト受験者が増加することが見込まれます。
TOEIC IPテストと公開テストの違い
次に、TOEIC IPテストと公開テストの問題内容や受験申し込み方法について解説します。
まず、出題範囲、スコアによる評価基準などにおいては、IPテストも公開テストも変わりません。
試験の内容や難易度は同じといえるでしょう。
TOEIC IPテストは企業や学校などの団体が実施する方式のため、受験申し込みも受験者が所属・登録をしている団体によってなされます。
一方、公開テストの申し込みは、団体一括受験申し込みの場合を除いて、個人で受験手続を行い、指定された受験会場でほかの一般受験者と一緒に受験します。
リサイクル問題の割合
IPテストと公開テストにおいて出題される問題には、以下のような違いがあります。
- TOEIC IPテスト:過去に出題された問題がリサイクルされる
- 公開テスト:新しく作成された問題が多く使われる
上記の違いが受験者にとって有利、不利の差を生むかという点ですが、いずれの場合も算出されるTOEICスコアに違いはないでしょう。
過去に出た問題であっても、それに類似した新しい問題であっても、同じ実力を持った人は同じ正解率で結果を出すと考えられるからです。
ここで大事なことは、新しい問題といっても出題の難易度に違いはないように精査されて作成されているため、いずれの場合であっても正解率に差は出ないわけです。
また、TOEICではスコアの均一化が行われるため、万が一問題の難易度に多少の差が生まれても、英語力に応じたスコアが正確に算出されます。
もっとも、何年も前に出た問題と正答を丸暗記していれば、リサイクルされた問題が有利になる可能性はありますが、TOEICは過去問を公開していないので現実的ではありません。
学校や会社、自宅で受験できる
TOEIC IPテストマークシート方式の試験会場は、実施者である学校や会社が指定した教室やオフィスです。
試験の監督は教員や上司などが行います。
TOEIC IPテストのオンライン方式の場合は、自宅のパソコンを使って受験することも可能です。
自分が通学している学校や通勤している会社での受験の場合、会場までの交通や試験施設の使い勝手がよくわかっているというメリットがあります。
自宅で受ける場合は、そもそも外出する必要がないというメリットがありますが、静かに受験できる環境を自分で確保する必要があります。
試験の種類 | 会場 | 監督 |
IPテスト(マークシート方式) | 申込み団体が指定する教室やオフィス | 申込み団体の教員や社員 |
IPテスト(オンライン方式) | 受験者が自由に選択可能 | なし |
公開テスト | 運営団体が指定する会場 | 運営団体の試験官 |
TOEIC IPテストのメリット
IPテストには、そのほかにも公開テストと比べて大きなメリットがあります。
主なメリットは以下の4つです。
- 受験料や交通費をはじめ、受験にかかる費用が安い
- 試験の時間帯が自由に選べる
- 試験時間自体が短い(オンライン方式の場合)
- 試験結果が出るまでにかかる時間が短い(オンライン方式の場合)
以下では、4つのメリットについて具体的に解説します。
公開テストよりも価格が安い
TOEIC公開テストの受験料は、6,490円です。
受験から1年後の同月から3か月以内に再受験する場合、リピート割引が適用されますが、それでも5,846円がかかります。
これに対して、TOEIC IPテストの受験料は4,230円です。
マークシートとオンライン、いずれの方式も価格は一律です。
また、学校や会社を試験会場としたIPテストで通学・通勤定期券を使用できる場合は、交通費も含めた受験にかかる総費用はもっと安くなるでしょう。
TOEICのテストは複数回受けることが多いので、この受験にかかる総費用の差は決して少なくありません。
試験の種類 | 受験料(通常) | 受験料(リピート割引) |
IPテスト | 4,230円 | 割引制度なし |
公開テスト | 7,810円 | 7,150円 |
※価格はいずれも税込
24時間いつでも受けられる
TOEIC IPテスト(オンライン)で自宅のパソコンを使って受験する場合、本人の好きな時間帯に試験を始められるというメリットがあります。
朝型や夜型など、集中できる時間帯は人それぞれです。
公開テストはあらかじめ試験時間が決められているため、体のリズムを試験時間に合わせる必要があります。
しかし、オンライン方式のIPテストであれば、頭が一番さえているタイミングで受験できます。
たとえば、夜型の人であれば家や外の環境が静かな夜中に試験を始めることもできます。
また、リスニングではイヤホンを使えるため、音声が聞きとりやすい点もメリットです。
試験時間が1時間で済む
TOEIC IPテスト(オンライン)は、TOEIC IPテストマークシート方式や公開テストと比べると、問題数や試験時間が約半分です。
TOEIC IPマークシート方式のテストや公開テストは問題が200問で試験時間が120分であるのに対し、オンライン方式のTOEIC IPテストの問題数は90問、試験時間は60分です。
IPテスト(オンライン)の試験時間が半分で同じ基準によるスコアが出せる秘密は、CATにあります。
CATとは、Computer Adaptive Testingの略称で、受験者の能力に合わせて出題する問題を変えていくシステムです。
受験者の解答の正誤をリアルタイムに把握することで、受験者ごとにその人のレベルにあった難易度の問題を出題していきます。
本来、英語レベルの低い人から高い人まで、広範囲にわたって英語レベルを正しく判定するにはさまざまな問題に解いてもらう必要があります。
オンライン方式ではCATの導入により、マークシート方式よりも少ない問題数でTOEICスコアを算出できるようになっています。
結果が出るまでの期間が短い
同じIPテストでもマークシート方式とオンライン方式の場合で、結果が出るまでの期間が異なります。
マークシート方式のIPテストでは結果を受け取れるまで1週間程度、オンライン方式では試験終了直後に受け取れます。
従来の公開テストの場合は試験実施後結果を受け取れるまで約1か月かかることを考えると格段の差があります。
TOEIC IPテストのデメリット
TOEIC IPテストを受験した場合は、公式認定証(Official Score Certificate)が受け取れません。
公式認定証は、公開テストを受験した場合のみ、発行されます。
そのかわり、写真のついてないスコアレポートという形でスコアが証明されます。
写真がついてない=替え玉受験が疑われるということではないので、受け手(たとえば、採用する企業や学校側)がIPテストを「どうとらえるかの問題」ということです。
企業や学校によっては認められない場合がある
公開テスト、IPテストのいずれであっても、TOEICスコアに変わりはないため、基本的に問題ありません。
ただ、就職や入学を希望する企業、学校などの応募先がTOEICの公式認定証を求めている場合は、TOEIC IPテストのスコアレポートをTOEICの正式スコアとして認めない可能性があるため、注意が必要です。
その場合は、TOEICの公開テストを受ける必要があるでしょう。
ただし、今後はIPテストのスコアレポートが(とくに日本で)採用側に受け入れられる方向にシフトしていく可能性が高いでしょう。
TOEIC IPテストに関するQ&A
IPテストは、公開テストに比べると情報が少なく、 IPテストに関して疑問を持っている方も多いようです。
以下では、IPテストについてのよくある質問に回答します。
TOEIC IPテストの過去問は公開されている?
TOEIC IPテストは、公開テストと同様、過去問を公開していません。
しかし、実は韓国では公開テストの過去問をまとめた問題集が販売されています。
日本国内の書店では販売されていませんが、Amazon内では普通に購入できます。
TOEIC IPテストと公開テストはどちらを受けるべき?
まず、以下の2つの条件を満たす場合、公開テストを受験すべきです。
- TOEICテストを受ける目的が大学入試や就職
- 応募先が公開テストによるTOEICのスコアを要求している
しかし、TOEICテストでベストスコアを提示したいと思っている受験者ならば、1回の試験で完結ということはないはずです。
TOEICテストを複数回受けるとすると、IPテストか公開テストかによって費用は大きく異なります。1回あたり2,260円の差があるため、公開テストを3回受験する費用でIPテストは4回受験できます。
そのため、費用を抑えて受験するには「両方をうまく組み合わせて受けるべき」です。
公開テストのスコアでないといけないのか、IPテストのスコアでも問題ないのかを確認したうえで、どちらを受験するか決めるとよいでしょう。
TOEIC IPテストは公開テストよりも簡単?
TOEIC IPテストのマークシート方式とオンライン方式、公開テストは、いずれも同程度の難易度となるよう、テスト問題の精査が行われています。
そのため、形式によって簡単だったり、難しかったりすることはありません。
むしろ、自分にとっての「テストの受けやすさ」を重視して本来の実力が出せるよう、検討すべきでしょう。
TOEIC IPテストのスコアは履歴書に書ける?
TOEIC IPテストのマークシート方式、オンライン方式のいずれも履歴書に書いて問題になることはありません。
しかし、前述したようにTOEIC公開テストのスコアを要求している組織に応募するならば、公開テストのスコアを履歴書に明記する必要があるでしょう。
とくに記載がない場合はIPテストであることを気にする必要はありません。
TOEIC IPテストのスコアに有効期限はある?
TOEICスコアに有効期限はありません。
しかし、IPテストのスコアレポートや公開テストの公式認定証を再発行できる期間には制限があります。
いずれも試験日から2年以内のものに限り再発行が可能です。
とくに有効期限はないものの、たとえば就職に際して大学入学時のスコアを提示すると「それ以後は英語を勉強してスコアを伸ばすという努力がされてない?」と思われる可能性もあります。
そのため、英語力をアピールする場面では少なくとも2年以内、できれば1年以内に取得したTOEICスコアを提示する方がよいでしょう。
TOEIC IPテストと公開テストは目的に応じて使い分けるべき
TOEIC IPテストとTOEIC 公開テストについては、どちらか一方に決めるという二者択一ではなく、それぞれの違いや特性を理解したうえで使い分けることをおすすめします。
IPテストは英語学習のペースメーカーとして定期的に受けながら学習の指標にしつつ、実力がついてきたタイミングや、スコアが求められるタイミングでは公開テストを受験しておくのがよいでしょう。