TOEICで高スコアを目指すうえで「単語力」は非常に重要です。
専門スクールやアプリを利用してTOEIC対策をする方も多いですが、単語帳をまったく使わない方はいないでしょう。
しかし「TOEIC対策」を謳っている単語帳が多く、どう選んでよいかわからないとの悩みもよく耳にします。
今回の記事では、TOEICで必要となる単語数や効率のよい覚え方、絶対に失敗しない単語帳の選び方、レベル別のおすすめ単語帳について解説します。
都内の私立大学でTOEIC対策講座を担当している私が解説します!
TOEICで求められる単語力とは?
TOEICはビジネス英語が中心となっており、ビジネスに関連する単語が多く登場します。
そのため、日常英会話で出てくるような、くだけた表現やスラングよりも、ビジネスシーンでよく使用される単語を知っておくことが必要です。
単語のレベルも多岐にわたっており、「successful」や「research」といった基本英単語から、「amendment(改正、修正)」や「commensurate(見合った、釣り合った)」のようなハイレベルな単語までさまざまです。
ただし、ハイレベルな英単語の出題はビジネスの場でよく使われる単語に限られます。
TOEICを対策、受験するにあたり、経営や経済の専門用語は必要ありませんが、さまざまなビジネスシーンで使用される単語は、レベルの高低に関わらず覚えていく必要があります。
さらに、TOEICではtime management(時間配分)が重要なカギを握ります。
多くの受験者が、リーディングセクションで時間が足りず、最後を空欄のまま、あるいは適当にマークシートを埋めて提出しています。
この背景には単語を見て瞬間的に意味を認識することが難しく、単語の意味を考えている時間が長いことも一因としてあります。
そのため、単語を学習する際、意味を覚えるだけではなく「瞬時に単語の意味がわかるトレーニング」も同時に行うことが大切です。
とくに「confident(自信がある)」と「confidential(秘密の、機密の)」のように似ているけれど意味がまったく違う単語は、本番で遭遇すると考えこんでしまいがちです。
con-やcom-から始まる単語は混同しやすいものが多いので、違いを区別して正確に覚えることも必要です!
1回の試験で登場する英単語の数は約10,000語
1回の試験に登場する英単語の数は、重複を除くと2,500語前後といわれていますが、そのテストの回によって比較的難易度が高い単語が多く出題されることもあるため、幅広く単語を習得しておく必要があります。
まずは、自身の目標点を明確にし、その点数を獲得するためにはどのレベルの単語が必要なのかを意識しながら対策することをおすすめします。
学習した単語数にとらわれずに、なるべく多くの単語を覚えるという気持ちで学習していくことが大切です。
TOEICスコアと単語数の目安
TOEICスコア600点が目標の人は約5,000語の知識が必要です。
一般的に中学・高校の学習範囲で3,000語程度であるため、高校卒業程度の英語力をもっている方の場合、追加で2,000語を学習する必要があります。
これは共通テストやMARCHレベルと同じくらいです。
700点レベルになると7,000語、800点で8,000語と、およそ1,000語ずつ単語数が増えていきます。
しかし、900点以上が目標スコアになると10,000語から13,000語程度が必要になるため、単語学習の重要度も増していきます。
こんな選び方はダメ!単語帳選びのポイント
単語帳に限らず、TOEICに関する書籍は多くのものがあります。
どう選んだらよいかわからず、表紙のデザインや本の厚さ、価格などを重要視する方もいるでしょう。
単語帳選びにもさまざまな基準がありますが、やはり多くのTOEIC受験者が使用している単語帳は質のよいものが多いです。
そのため、売れ筋ランキングや人気をもとに、購入するのもよい方法です。
また、高校英語や大学受験用の単語帳では、TOEICで求められるビジネス関連の単語が少ないものもあるため、TOEIC対策用の単語帳がおすすめです。
おすすめの単語帳を何冊も買うのはNG
人気のある単語帳も一冊ではないので、すべて購入していろいろ試してみようと思う学習者もいますが、それは違います。
単語帳は一冊あれば十分で、それを繰り返し学習することによってより確実に定着します。
単語帳を複数購入しても、それぞれの本で書いてある重要度が違ったり、日本語の定義が微妙に違ったりして定着しにくくなってしまいます。
目標スコアだけで選ぶのはNG
TOEIC対策をする人の多くは目標スコアを持っており、単語帳も目標スコアをターゲットとしてレベル別に収録されていることが多いです。
はじめて受験する場合、600点を目標にする人が多いですが、600点がターゲットの単語帳を購入して目標を達成できたら、700点ターゲットの単語帳を購入する方法はやめましょう。
目標スコアごとに購入すると、最終的に何冊も購入することになるうえ、収録語が重複しているものもあるので意味がなくなってしまいます。
人気の単語帳の多くは900点までを網羅しているため、そういった単語帳を選択するとよいです。
広い目標スコアをカバーしている単語帳を購入することをおすすめします!
収録語数が多いからと選ぶのはNG
TOEIC対策に限らず、すべての言語学習者にとって単語力は必要不可欠な知識です。
TOEICにおいても、すべてのセクションの基本となるのは単語です。
そのため「多くの単語をマスターしよう」として、とにかくたくさんの単語を収録しているものを選ぶ、という結論に至ってしまいます。
しかし、単語学習で必要なことは繰り返しです。
1日に10個、20個を完全に覚えるよりも100個、200個をざっと確認し、単語帳を何周もする方がはるかに定着します。
また、単語学習はスキマ時間で取り組むのがおすすめです。
収録語数が多いと単語帳が分厚くなり、かさばったり、重かったりと持ち運びに苦労します。
単語帳はさっと取り出せるサイズが理想なので、収録語数だけで単語帳を選ぶのは得策ではありません。
効率よく単語を覚える方法
ひたすらその単語を書いて覚える人もいれば単語帳を見て覚える、という人もいます。
単語の覚え方に正解はないので、自分に合った方法で勉強ができていれば問題ありません。
しかし、「単語の覚え方が分からない」「単語が覚えられない」という人が多くいるのも事実です。
効率よく単語を覚える方法は1つではありませんが、どの方法にも共通して大切なことは「繰り返し」です。
1つの単語を1回で暗記するのではなく、ざっと覚えて2回目、3回目、4回目で少しずつ定着というサイクルで学習すると長く記憶しておくことができます。
とくに下の表のような覚え方がおすすめです。
ざっくりでいいのでこまめにサイクルを回しましょう。
このプロセスを3回から4回くり返すと一部の単語はしっかり定着するので、4回目以降は覚えられなかった単語を中心にチェックしていけば大丈夫です。
TOEICは中学や高校の定期試験とは違い、試験前の数日で詰め込むことができないため、毎日少しずつコツコツと単語を繰り返し復習することが欠かせません。
丸暗記しない
よく単語帳に書かれている定義を一字一句そのまま覚えようとする方がいますが、これはおすすめしません。
TOEICは和訳、英訳問題が出題されないうえ、形式もマークシートのため、単語の定義として書かれているフレーズを完璧に暗記しなくてもよいのです。
日本語の定義が難しい場合は、自分なりに簡単な日本語にして覚える方法もおすすめです。
同義語や類義語をおさえておく
単語を覚える際は、同義語や類義語もあわせて覚えておくことが大切です。
1つの単語に複数の品詞がある場合もまとめておさえておきましょう。
TOEICではパラフレーズ(言い換え)が頻出します。
たとえば、coworkersとcolleaguesはどちらも「同僚」という意味で使われます。
そのほかにもget in touch with~とcontactなど、単語と熟語の言い換えも頻出です。
1つずつ単語を覚えるよりも同義語や類義語をあわせて覚える方が大変ですが、TOEICスコアを上げるうえでは近道です。
フレーズで覚える
TOEICは、S&W以外ではライティングがないため、フレーズで覚えるようとする方は少ないかもしれません。
しかし、単語と定義を1対1で覚えていると、本試験の文章中で単語を見たときにぱっと意味が出てこないこともあります。
TOEICは、流れるように読まれるリスニングと、時間制限の厳しいリーディングからなるため、単語を見聞きした瞬間に訳せるようにする必要があります。
単語帳は例文がのっているものを選びましょう!
英語→日本語を中心に
単語帳アプリを使用している方の中には、日本語を見て英語に直す練習をしている方もいるかもしれませんが、TOEIC対策が目的であればやめましょう。
その時間で英語から日本語にする練習をした方が確実にTOEICスコアは上がります。
TOEICは英文を聞いたり、読んだりして設問に答える問題です。
日本語を英語に訳す能力が求められる問題は、1問も出題されません。
【レベル別】TOEIC対策のおすすめ単語帳7選
TOEIC対策の単語帳はさまざまなものが出版されています。
ここまで選び方のポイントを紹介してきましたが「結局どれがいいのかを知りたい!」という方もいるでしょう。
以下では、レベル別にTOEIC対策のおすすめ単語帳を7冊紹介します。
書籍 | おすすめの方 | おすすめできない方 | 収録語数 |
とにかく単語の暗記が苦手な方 | 収録語数が多い単語帳を探している方 | 約800語 | |
基礎的な単語を1冊で網羅したい方 | すでに基礎的な単語力がついており、TOEICで600点以上とれる方 | 約1,000語 | |
本番で出題された例文で学習したい方 | 収録語数が多い単語帳を探している方 | 約1,000語 | |
もっとも評価の高い単語帳を探している方 | 基礎的な単語力が身についておらず、TOEICスコアが600点未満の方 | 約1,000語 | |
苦手なパートをピンポイントで対策したい方 | 手軽に持ち運べるサイズの単語帳を 探している方 | 約1,150語 | |
すでに700~800点のスコアを獲得しており、難関単語にしぼって学習したい方 | 一般的なレベルの単語帳でもわからない単語が1~2割以上ある方 | 約1,000語 | |
収録語数の多い単語帳を探している方 | TOEIC対策のみに特化した単語帳を探している方 | 約3,000単語 |
どれもTOEIC学習者の間では定番として親しまれている良書なので、悩んだらこの中から選んで損はありません!
600点を目指す方におすすめの単語帳
スコアが600点に届かない方は単語力を磨く必要があります。
リスニングやリーディングがある程度できていても、単語が分からなければ問題が解けないためです。
TOEICで600点に満たない方の場合「単語力は十分にあるが、そのほかの能力が足りていなくてスコアが伸びない」ということはほとんどありません。
とくにPart 1はリスニング力というよりは単語力ですし、Part 7のリーディングでも単語を知っていれば瞬時に答えがわかる設問が多くあります。
世界一わかりやすいTOEICテストの英単語
著者の関先生のポリシーである「英語学習に丸暗記は必要ない」をコンセプトとした単語帳です。
収録語数は800語で十分とはいえないものの、語源やイメージからアプローチする解説は脳内に残りやすく、単語の暗記に苦戦する学習者にとっては目から鱗でしょう。
また、掲載されている例文もわかりやすく、例文とともに学習するのにおすすめです。
辞書で調べると例文が難しく、その例文に載っている単語も更に調べる、というサイクルが発生することがありますが、この本だとそれがありません。
また、周回チェックがついているので何周したか、その単語に何回触れたかがすぐに分かるようになっています。
周回チェックは、単語学習のサイクルを回すうえでとても役立ちます!
TOEIC L&R TEST 出る単特急 銀のフレーズ
TOEIC対策の定番である「金のフレーズ」の基礎バージョンです。
「金のフレーズ」は、TOEIC対策の単語帳の中でおそらく1番売れている良書ですが、600点に届かない方にとっては収録されている単語が難しいのも事実です。
まずは「銀のフレーズ」で基礎をかためてから「金のフレーズ」に進むのがよいでしょう。
このシリーズは無料音声アプリがついており、アプリをダウンロードすればスマートフォンで音声を再生できるため、リスニング対策にも活用できます。
また、「金のフレーズ」と「銀のフレーズ」は英語学習教材アプリのabceedにも収録されており、abceedでは英単語を画面越しに眺めるだけではなく、単語の定義を問題に答える形式で学習することもできます。
TOEIC Listening & Reading 公式ボキャブラリーブック
TOEICの問題を作成するETSがはじめて刊行した公式単語集です。
過去のテストから1,000単語を厳選し、以下の4つに分類して掲載しています。
- 名詞
- 動詞
- 形容詞・副詞・その他
- セットフレーズ
使用されている例文は、すべてTOEICで実際に出題されたものです。
TOEICでは過去問を公開していないため、本番で実際に出題された例文で学習できるのは公式ボキャブラリーブックだけです。
また、Kindle版を利用すればスマートフォンやタブレットでも学習できるほか、音声もアメリカ英語は(米)、イギリス英語は(英)と分かりやすく表記されています。
TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ
「金フレ」の略称で親しまれており、TOEIC対策にもっとも利用されている単語帳です。
大学のTOEIC講座でテキストとして指定されていることも多く、学習者だけでなく、大学教授やプロ講師からも評価が高い良書です。
目標スコア別になっているので学習がしやすく、TOEICで必要な知識をまとめたサプリメント(付録)が役立ちます。
サプリメントには、以下のような内容がまとめられています。
- Part 1の重要単語
- 部署、職業名
- 前置詞、接続詞、接続副詞
- 多義語
TOEICで90回以上満点をとったTEX加藤さんが執筆していることもあり、まさにTOEIC対策に特化した単語帳です!
800点を目指す方におすすめの単語帳
800点を目指している方は、基礎的な単語力は問題ないでしょう。
しかし、まだ応用単語は定着がしていないものも多く、継続して単語学習に力を入れていく必要があります。
頻出単語の多くはおさえられているはずなので、軽く目を通す程度でも大丈夫です。
頻出ではないものの、定期的に出題される、難易度の高い単語を中心に学習していきましょう。
学習方法は基礎的な単語と同じく、1日100単語から200単語に目を通すと効果的です!
TOEIC英単語 出るのはこれ!
TOEICで出題されやすい英単語がパート別に掲載されている点が最大の特徴です。
TOEICの単語帳はレベル別に分類されているものが多いですが、パート別に分類されているため、苦手なパートがはっきりしている方にはおすすめです。
また、毎回のTOEIC本試験の傾向を分析して頻出の単語を収録しているため、効率よく頻出単語を学習することができます。
900点~満点を目指す方におすすめの単語帳
900点から上を目指す方は頻出単語をおさえるだけでは足りません。
TOEICでテーマになりやすいビジネスシーンを中心に、難易度の高い単語までカバーする必要があります。
TOEIC L&R TEST 超上級単語特急 暗黒のフレーズ
TOEIC対策の定番である「金のフレーズ」シリーズの最上級版です。
一般的な単語帳は、頻出単語を中心に構成されていますが「暗黒のフレーズ」は900点以上を目指す方が覚えるべき単語のみが収録されています。
そのため「金のフレーズ」や「銀のフレーズ」に収録されているような頻出単語は掲載されていません。
単語の学習を繰り返して定着したけれど、900点の壁が突破できない方におすすめです。
TOEIC(R)L&R TEST英単語スピードマスター
さまざまな単語がシチュエーション別に掲載されています。
TOEICはビジネス関係の英語がほとんどですが、日常生活に関する内容(車が故障したから送っていくなど)の会話も出ます。
また、ビジネスシーンを想定した問題であっても、すべての単語がビジネス関連の英単語というわけではありません。
幅広いシチュエーションで用いられる単語を学習できるため、応用力が身につきます。
一方、TOEIC対策に特化した単語帳を探している方にはあまりおすすめできません。
多義語の解説ではTOEICで出題されにくい意味も掲載されているうえ、掲載されている単語がレベル別になっていないためです。
基礎的な単語はほぼ網羅してしまった方や、TOEICだけでなく総合的な英語力をつけたい方に向いているでしょう!
自分に合った単語帳で日々の積み重ねを大切に!
単語学習には終わりがありません。
どれだけ単語を学習しても本試験には知らない単語、新出の単語が必ず出てきます。
そのため、単語のみを学習するのは間違いです。
単語に加えてリスニング対策、リーディング対策をしていかなければなりません。
ただ、リスニングやリーディングの対策はまとまった時間で勉強する必要があるため、通勤や通学中などのスキマ時間には単語学習をするのがおすすめです。
毎日の生活の中でスキマ時間を有効に使って、1日あたり100単語から200単語を目安にコツコツ確認していきましょう。
単語学習においては日々の小さな積み重ねがもっとも大切な学習姿勢です。