TOEICとTOEFLは、互いによく似た試験です。
「TOEIC L&Rの900点とTOEFL iBTの100点では、どちらの方が英語力が高いのか」
「就活を控えた大学生はどちらを受験すべきなのか」
「アメリカの大学に進学したい高校生はどちらを受験すべきなのか」
TOEICとTOEFLの違いについて、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、TOEICとTOEFLの違いについて解説するとともに、上の疑問にも答えていきます。
TOEICとTOEFL
TOEIC(トーイック)とTOEFL(トーフル)は、世界最大の非営利テスト開発機関であるETSが作成しています。
ETSは、アメリカのニュージャージー州に拠点を構える組織です。
兄弟のような2つの試験ですが、試験の形式や用途には大きな違いがあります。
TOEICとは
TOEICは、“Test of English for International Communication”の略称です。
日本語に訳すと「国際的なコミュニケーションのための英語のテスト」。
つまり、TOEICの目的はコミュニケーションです。
試験内容は、日常のワンシーンやビジネスシーンを想定しています。
TOEFLとは
TOEFLは、 “Test of English as a Foreign Language”の略称です。
日本語に訳すと「外国語としての英語のテスト」。
つまり、TOEFLの目的はアカデミックなテストです。
TOEICはコミュニケーションに重点を置いている一方、TOEFLはすべてアカデミックな内容のみで占められています。
この違いは、それぞれの試験の内容や特徴に大きく関係しています。
TOEICとTOEFLの違い
TOEICとTOEFLの違いを考えるとき、主に5つの点で違いがあります。
「試験内容」「試験形式」「試験費用」「スコア」「難易度」です。
以下では、それぞれのポイントについての違いを解説します。
試験内容
TOEICは「聞く」と「読む」の2技能を測るのに対し、TOEFLは「話す」と「書く」を含めた4技能を測る試験です。
さらに、TOEICは日常的な内容、TOEFLは学術的な内容が題材となっています。
例をあげると、TOEICでは店員と顧客、同僚どうしなど、TOEFLでは学生と教授などのシチュエーションが多く登場します。
また、リーディングの面でも大きな違いがあります。
TOEICのリーディングは、語彙や文法の知識を問う問題が多いのが特徴です。
長文読解の文章量も200~400語程度とそれほど長くありません。
一方、TOEFLのリーディングは、海外大学の教養課程の教科書に載っているような文章が出題され、700語程度のパッセージが主です。
TOEFLの内容は学術的ですが、専門知識がなくても解けるようになっています!
試験形式
TOEIC L&R | TOEFL iBT | |
試験会場 | 大学や貸会議室 | テストセンター |
解答形式 | マークシート | パソコンへの入力 |
開催頻度 | 月1回程度 | 週1回程度 |
試験時間 | 約2時間 | 約3時間 |
<試験会場>
TOEICは、大学や貸会議室で実施され、受験する都道府県を選べますが、試験会場は選択できません。
TOEFLは、主にテストセンターで実施されており、試験会場の選択が可能です。
<解答形式>
TOEICは、問題用紙と解答用紙が配られて、マークシート形式で解答を記入します。
TOEFLは、問題も解答もパソコン上で操作して入力します。
TOEFLのスピーキングでは、ヘッドセットのマイクに向かって話すと、音声が録音されて後日採点されます。
<試験時間>
TOEICは、リスニング45分とリーディング75分で約2時間です。
TOEFLは、リーディング54~72分、リスニング41~57分、スピーキング17分、ライティング50分で約3時間です。
リスニングとスピーキングの間には、10分間の休憩があります。
TOEFLのリーディングとリスニングの試験時間に幅があるのは、得点に加算されないサンプル問題があるためです。
サンプル問題は、問題のレベル調整や新たなタイプの問題の評価に利用されています。
受験費用
TOEIC L&Rの受験費用は、7,810円です。
1年後の同月から3か月以内に再受験する場合、リピート割引が適用されて7,150円で受験できます。
一方、TOEFLの受験費用はドル計算となっており、245ドルです。
110円のレートで計算すると約26,950円となり、TOEICよりもかなり高額です。
スコア
TOEIC L&Rのスコアは、5点きざみで10点~990点。
TOEFL iBTのスコアは、1点きざみで0点~120点です。
セクションごとに分けると、以下のような配点になります。
TOEIC L&R | TOEFL iBT | |
リスニング | 5~495点 | 0~30点 |
リーディング | 5~495点 | 0~30点 |
スピーキング | 0~30点 | |
ライティング | 0~30点 | |
合計 | 10~990点 | 0~120点 |
難易度
TOEICやTOEFLは、英検2級レベル(一般的な英語力)の高校生がはじめて受けると、とても難しいと感じるはずです。
どちらも語彙の幅が広く、リスニングはネイティブのスピードに近いためです。
TOEICとTOEFLを比較すると、TOEFLの方が難しいと感じる方が多いでしょう。
<リーディング>
TOEICは日常生活や職場で使われる単語、TOEFLはキャンパス内や講義で使われる単語が頻出です。
語彙のハードルをクリアすれば、問題としてのレベルには大きな差はありません。
ただし、TOEFLでは心理学や生物学などのアカデミックな内容が多く、700字程度の長いパッセージを読む必要があり、TOEIC以上に慣れが求められるでしょう。
<リスニング>
リスニングについては、多くの人がTOEFLの方が難しいと答えます。
TOEICは短い放送文が連続して出題されるのに対し、TOEFLは放送文が長い分、問題の間には明確な区切りがあります。
TOEFLで出題される5題のうち、3題が長めのレクチャーを聞く問題のため、苦手とする人が多いようです。
<スピーキング>
TOEICにはスピーキングがなく、比較はできませんが、TOEFLのスピーキングの難易度について紹介します。
TOEFLのスピーキングは、以下の2つのパートに分かれています。
- Independent Task
- Integrated Task
Independent Taskは、2つの相反する意見に対して、どちらに賛成するかを理由とともに説明します。
準備時間は15秒、解答時間は45秒です。
Integrated Taskは、課題を読んだり、講義を聞いたりして、内容をまとめて話す問題です。
留学中の大学生活におけるワンシーンを想定されています。
<ライティング>
ライティングもTOEFLのみ、軽く解説します。
スピーキングと同様、IndependentとIntegratedの2つのTaskが出題されます。
Integrated Taskでは、300語程度の英文を3分で読み、約2分のレクチャーを聴き、内容に関する設問に150~225語程度の英語で解答します。
Independent Taskでは、与えられたトピックに関するエッセイを30分以内、300語以上の英語で解答します。
ライティングテストとしては非常にレベルが高いです!
TOEICとTOEFLのスコアを換算すると…
TOEICとTOEFLのスコアを比べるには、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)が参考になります。
CEFRは、外国語の運用能力をレベル別に表す指標です。
CEFR | TOEIC L&R | TOEFL iBT |
C2 | 114~120 | |
C1 | 945~990 | 95~113 |
B2 | 785~935 | 72~94 |
B1 | 550~775 | 42~71 |
A2 | 225~540 | |
A1 | 120~215 |
CEFRをもとに、記事の冒頭で紹介した「TOEIC900点とTOEFL100点では、どちらの英語力が高いのか」という疑問に答えるなら、TOEFL100点となります。
ただし、日本ではTOEFLよりもTOEICの方が、知名度が高いです。
「TOEIC900点」は多くの人にとってイメージしやすく、「TOEFL100点」がどれくらいすごいのかわからないと感じる方もいます。
学校や企業においても同じことがいえます。
つまり、TOEFL100点よりもTOEIC900点を評価する企業もあるかもしれません。
以下では、どちらを受けるべきかについて解説します。
自分にとって都合のいい方を受ける必要があるということ!
TOEICとTOEFLはどっちを受けるべき?
ここまで紹介したとおり、どちらの試験を受けるべきかは、学生や社会人などのステータスではなく、目的によって選ぶべきです。
言い換えるなら「自分が目指す場所で評価されやすい方を受ける」のが正解です。
以下では、TOEICとTOEFLのそれぞれについて、どんな方におすすめかを解説します。
TOEICを受験すべき方
TOEICは、就職やビジネスシーンで強みを発揮します。
TOEICを実施するIIBCが2019年に調査した結果によると、528の企業のうち、新卒採用にTOEICを「要件としている」、「参考にしている」割合は49.1%にのぼります。
また、昇進・昇格の要件や参考とする予定の企業も増える傾向にあるようです。
冒頭で紹介した「就活を控えた大学生」はTOEICを受験すべきです。
TOEFLを受験すべき方
TOEFLは、海外でのキャンパスライフに直結する英語力を身につけることができます。
さらに、アメリカの大学の多くがTOEFL iBTを入学の資格基準としています。
目安として80点以上のスコアを持っていると、アメリカの多くの大学の入学基準を満たします。
冒頭で紹介した「アメリカの大学に進学したい高校生」はTOEFLを受験すべきです。
TOEICとTOEFLの勉強法
「TOEICとTOEFLは別物なので、勉強法も大きく異なる」という説明を聞くことがありますが、基本的な勉強法は変わりません。
まず、もっとも重要なポイントとして、TOEICやTOEFLを受験するにあたり、語彙・文法のレベルを十分に備えていることです。
語彙や文法を理解しないまま、問題演習や受験をしても力にはつながりません。
TOEICの勉強法
TOEIC対策は、単語・文法ともに大学入試レベルの準備で大丈夫です。
ただ、ビジネス英語独特の表現や単語も出てくるので、それらもチェックしていくといいでしょう。
<リスニング>
リスニングでは、音声を聴くだけではなく、オーバーラッピングやシャドーイングにも取り組むべきです。
ものまねをするような感覚で練習すると、より効果が出やすくなります。
また、TOEICのリスニングでは書き込みができないため、ノートテーキングの技術は必要ありません。
短い対話文の直後に質問があるので、メモを取る練習よりも、話題の全体像をつかんでいく短期記憶の練習の方が数倍役立ちます。
<リーディング>
リーディングは、速読即解を意識した解き方の練習が必須です。
一語一句をしっかり理解するよりも、解答の根拠を素早く探す力が求められます。
TOEFLの勉強法
文法は大学入試レベルで十分ですが、語彙はTOEFL用の単語集を購入して使いましょう。
アカデミックな単語が多く登場するため、高校レベルの単語では対応できません。
個人的なおすすめは「旺文社TOEFLテスト英単語3800」です。
\ 音声付きでリスニングにも役立つ /<リスニング>
リスニングでは、講義形式の問題に慣れる必要があります。
講義は、歴史・生物学・心理学をはじめ、教養課程で学ぶような内容です。
質問文と選択肢が問題用紙に印字されているので、本番を想定した演習では、事前に目を通す練習も効果的です。
<リーディング>
リーディングにおいても、人文学や生物学をはじめとした内容が出題されます。
アカデミックな英文を多く読み、さまざまなジャンルに慣れておくことが大切です。
また、問題数は30問と少ないものの、1つのパッセージが700語前後であるため、精読していると時間不足になる可能性もあります。
要点をつかむ読み方を練習するのがおすすめ!
<スピーキング・ライティング>
スピーキングとライティングでは、TOEFL独特のIntegrated Tasksの対策が必須です。
あらゆるテーマについて、英語で考えることを習慣化したり、意見を英語で表現したりするトレーニングが有効です。
しかし、スピーキングやライティングを自学のみで対策するのはとても困難です。
専門の知識を持った指導者について学習することをおすすめします。
TOEICとTOEFLの勉強は両立できる?
TOEICとTOEFLの学習は両立できます。
どちらの試験も実用的な英語力にフォーカスしていて、無駄な問題はいっさい出題しません。
もちろんTOEICには出されるが、TOEFLでは出されない問題もあり、逆もまたしかりです。
しかし、どちらも英語学習者にとっては無駄にならない力です。
それぞれの特徴はありますが、対策を両立できないほど、大きく異なる試験ではありません。
英検・IELTS・GTEC・TEAPと比較
まず、それぞれの試験について簡単にまとめてみましょう。
検定試験 | 技能 | CEFR | 開催頻度 | 受験費用 | 評価方法 |
英検 | 4技能 | A1~C1 | 年3回 | 4,500~12,600円 | バンド スコア |
IELTS | 4技能 | B1~C2 | ほぼ毎週 | ペーパー:25,380円 PC:26,400円 | バンド |
GTEC | 4技能 | A1~C1 | 年3回 | 9,900円 | スコア |
TEAP | 2技能or4技能 | A2~C1 | 年3回 | 2技能:6,000円 4技能:15,000円 | スコア |
それぞれの試験の特徴についても紹介していきます!
英検
日本人にもっともなじみのある、国産の英語検定試験です。
初級者向けの対応する問題から用意されており、日本の小中高生にとって取り組みやすいレベル設定になっています。
英検2級や準1級は、TOEICやTOEFLの準備段階としてもおすすめです。
大学入試では、受験資格や換算点、加点など、選抜基準の一つとして利用されます。
一方、就職においてはTOEICほどのアピールにはなりません。
IELTS
IELTS(アイエルツ)は、International English Language Testing Systemの略称です。
イギリスのBritish Council、ケンブリッジ大学英語検定機構、オーストラリアのIDPが共同運営しています。
主に、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダへの留学や移住に際して、英語力の証明に用いられます。
最近では、アメリカでもTOEFLと同様に認定する大学が増えています。
また、日本の多くの大学でも選抜基準の1つとして活用されています。
ACADEMICとGENERALの2種類のモジュールがあり、目的によってどちらかを選択する必要があります。
評価は1.0~9.0のバンド式、0.5刻みで算出されます。
技能ごとの評価、平均値をとったOverAllの2種類で表されます。
GTEC
GTEC(ジーテック)は、ベネッセが開発した英語検定試験です。
GTECには、3種類の試験があります。
- GTEC Junior(小学1年生~中学1年生)
- 中高生向けGTEC
- 大学生・社会人向けGTEC
学校単位で受験できる点が最大の特徴で、とくに高校生の受験が多い傾向にあります。
多くの大学で評価基準となっていることも、高校生の受験が増えている要因です。
各技能320点満点、トータルスコアは1280点満点です。
TEAP
日本英語検定協会と上智大学の共同開発による英語検定試験です。
多くの大学で選抜基準として採用されており、国内の大学に進学予定の高校生におすすめの試験です。
各技能1000点満点、トータルで4000点満点で表されます。
TOEIC・TOEFLは中高生にも求められるように…
TOEICとTOEFLは、どちらも質の高い英語試験です。
これまで高校生には敷居の高い感覚があったかもしれませんが、大学入試改革にともなって中高生にもTOEIC、TOEFLレベルの英語力が求められています。
また、TOEICやTOEFLは、就職や留学においても評価基準となることの多い試験です。
TOEICやTOEFLをはじめとする英語試験には、それぞれ特徴と目標があります。
それぞれの試験の特徴や目的を理解したうえで学習を進められると、効率よくスコアアップにつなげられるでしょう。