「TOEICのリスニングが聞きとれない…」
そんな悩みを聞くことが多くあります。
TOEICのリスニングは45分間と時間が長いうえ、読みあげスピードも日常会話に近いため、苦手とする人が多いのも納得です。
しかし、コツをおさえて対策すれば、リーディングセクションよりも得点しやすく、満点をとることも夢ではありません。
この記事では、例題をもとにした、TOEICリスニングの傾向と対策についての解説、スコアアップのコツとおすすめ教材を紹介します。
TOEICリスニング問題の特徴
まず、TOEICリスニングの問題は、4つのパートに分かれています。
それぞれのパートを一言でまとめると次のようになります。
概要 | 内容 | 難易度 | |
Part1 | 写真描写問題 | 選択肢のうちのどの選択肢が写真を正確に描写しているか選ぶ | ★★ |
Part2 | 応答問題 | ある発話に対して、どの選択肢の回答が正しいかを選ぶ | ★★★ |
Part3 | 会話問題 | 会話を聞いて、その会話内の情報と一致している選択肢を選ぶ | ★★★★ |
Part4 | 説明文問題 | アナウンスなど1人が話す英文を聞き、その中の情報と一致している選択肢を選ぶ | ★★★★★ |
Part1:写真描写問題
このパートでは、各問題に1つの写真があり、それに対してA~Dの4つの英文が読まれます。
その中で1つだけ、写真を正しく描写している英文がありますので、それを選ぶというのが課題です。
~サンプル問題~
A. One of the men is typing on a keyboard.
B. One of the men is putting on a watch.
C. The men are buying a computer.
D. The men are looking at a laptop.
正答:D
A. 男性の1人が、タイピングしている
B. 男性の1人が、時計を身に付けている最中だ
C. 男性たちは、パソコンを買っているところだ
D. 男性たちは、ノートパソコンを見ている
Dの選択肢を選ぶときには「laptop」という単語が「ノートパソコン」を示していると理解する必要があります。
A~Cにも「keyboard」「watch」「computer」など、写真に登場する単語が載っていますが、文全体を見てみると不正解なことがわかります。
とくにBの「put on」という表現は、身に付けるという動作を示す表現で、状態を表すわけではないので不正解です。
動作と状態にも注意しましょう。
写真に登場していない名詞が聞こえたら、その選択肢は誤り!
ただ、この方法で絞れる選択肢は少ないため、文章全体の意味をしっかり理解する必要があります。
Part2:応答問題
このパートでは、短い英文が読まれ、それに対してA~Cの3つの英文が読まれます。
その中から回答として正しい選択肢を選ぶ問題です。
~サンプル問題~
質問. Who is in charge of this project?
A: It’s free of charge.
B: Paul is.
C: Yes, it was very difficult.
正答:B
質問. このプロジェクトの担当は誰ですか?
A. それは無料です
B. ポールさんです
C. はい、それはとても難しかったです
日本語訳をみてみると、とてもシンプルな問題ということがわかるはずです。
しかし、質問の中に使われている単語が、選択肢の中で使われてひっかけとなっていることがありますので、注意しましょう。
また、質問に対して明確に答えずに「担当は誰ですか?」に対して「まだ発表されていません」のように、まっすぐに答えないこともあるので注意して解きましょう。
Part3:会話問題
このパートでは、30秒程度の会話が流れ、それに対して3問ずつ4択問題があります。
パート1やパート2と違って、ここからは設問と選択肢は問題冊子に書かれています。
会話のトピックはビジネス関連が多く、日常的な場面も混ざっています。
~サンプル問題~
M: Hi Mary, can I ask you a favor?
W: Sure, what happened? Do you want me to help you with your presentation next week?
M: No, it’s not about that. My presentation will be fine. But I just won’t be able to attend the meeting with our boss tomorrow. So, I was wondering if you could share some important information with me later.
W: Well, I could, but why don’t you just ask our boss to reschedule the meeting? I’m sure he would be fine with that.
M: That’s a good idea. I will give him a ring right now.
- What problem does the man mention?
A: He cannot finish his presentation in time.
B: He won’t be able to attend the meeting.
C: He has lost his cellphone.
D: The information in the presentation was wrong.
- What does the woman suggest the man do?
A: attend a meeting
B: send an email to his boss
C: ask his boss to change their schedule
D: check where the meeting will be held
- What does the man say he will do?
A: call their boss
B: go to their office
C: make a change to his presentation
D: cancel a meeting
正答:1. B 2. C 3. A
設問の内容は、会話の場所や登場人物、どんな問題が起きているかなど、多岐にわたります。
多少は本文と選択肢で言い換えられてはいますが、しっかりと聞き取れれば素直に答えられる問題ばかりです。
設問は問題冊子に書いてあるので、音声が始まる前に目を通すことができます。
先読みのテクニックを使って、設問できかれる内容に注意を向けてリスニングに臨みましょう!
Part4:説明文問題
このパートでは、30秒ほど1人の人が話して、それについての3問の問題が冊子に書かれています。
3問にはそれぞれA~Dの4つの選択肢があるので、音声の内容と一致するものを選びます。
トピックはPart3と同様に、ビジネス関連が多いものの、ショッピングモールでのアナウンスから留守電メッセージまで多岐にわたるため、シチュエーションを正しく理解することが大切です。
~サンプル問題~
Hi, this is Maria from Room 303. I checked in just now, and everything looks fine in this room.
But I can’t connect Wi-Fi of the hotel. I gave it a try in this room as well as in the lobby, but it didn’t work.
I thought I had a wrong password, so I checked twice. And I’m sure I have the correct one.
I have a meeting tomorrow, and I was asked to send them the presentation material by 10 pm tonight.
But if I cannot connect to the internet, I need to find another way to avoid problems… So please call me back and tell me what I should do?
- Who most likely is the speaker?
A: a building manager
B: a guest at a hotel
C: an IT specialist
D: a receptionist
- What problem does the speaker have?
A: She cannot access the Internet.
B: She has a wrong password.
C: She does not have her presentation material.
D: She does not know the location of the lobby.
- What does she need to do by 10pm tonight?
A: Make a call to her boss
B: Fix her computer
C: Submit a material
D: Find a password
正答:1. B 2. A 3. C
今回は録音メッセージが残っているというパターンでした。
Part3と同様、いろいろなパターンはありますが、質問自体は比較的素直なものが多く、大まかに聞きとれれば答えられるものばかりです。
Part4は1人の人がずっと話しているため、話についていけないという人も多いです。
聞きとれない部分があっても焦らずに。先読みをしたうえで要点をおさえておきましょう。
TOEICのリスニングが聞きとれない理由と対策
日本人はリスニングよりもリーディングの方が得意という人が多いです。
英文を読めばわかるのに、聞いたらわからないということも多いでしょう。
このような課題を解消するには、3つのポイントがあります。
以下では、それぞれのポイントについて紹介します。
音声変化(リエゾン)に慣れていない
まず、もっとも多い理由は、音声変化を理解していないことです。
英語には大きく分けて、次の3つの音声変化があります。
- リエゾン(リンキング):音が繋がること
- リダクション:音が消えること
- フラッピング:TがRの音のように変化すること
Can you が「キャンユー」ではなく「キャニュー」のように発音されたり、Waterが「ワーラー」のように発音されたりするのは、聞いたことがある人も多いはずです。
そして、この音声変化は特殊な状況で起きるのではなく、ほぼすべての単語で毎回起きていると考えてもよいくらい頻繁に起きています。
厳密にはすべてではないですが、それくらい多いと考えてよいでしょう。
そのため、この音声変化を知らない、または完全に身についていない人はリスニングで苦戦してしまいます。
また、複数の単語がつながることで起きる音声変化もあるため、単語ごとに発音を覚えるだけではなく、文章の中でどのような変化が起こるのかを理解しておく必要があります。
英語の語順のまま理解できていない
英語を日本語に訳すように、後ろから理解してしまう人など、英語を英語の語順のまま理解ができない人も多いようです。
日本の英語教育では、英語を「訳す」ということが頻繁に行われていています。
そうすると、日本語と英語の語順はきれいに真逆になっているので、英語を訳すときには文の一番最後から訳すことが多いです。
そのような学習を中心に行っていて英語の語順のまま理解できないと、TOEICのリスニングスピードにはついていけません。
リーディングでは文字情報が書いてあるので、ゆっくりと理解している時間がありますが、リスニングは聞いたその場で理解しないといけません。
そのためには前から順に理解していく必要があります。
前から理解していくためのトレーニングとしては、スラッシュリーディングが有名ですので、前から理解できない人は取り入れてみてください。
英語の語順のまま理解するトレーニングは、TOEIC対策だけではなく、日常会話においても役立ちます。
英語力を向上させるうえでぜひ身につけたいスキルです。
リーディング力・単語力が弱い
リスニングの対策をしていると、聞きとるトレーニングばかりを考えてしまいがちですが、意外と重要なのがリーディング力と単語力です。
スクリプトを読んでじっくり考えても理解できないということは、そもそもリーディング力が足りないということです。
その場合は、リスニングの練習をすると同時に、文字を見ながらじっくり理解するという練習も必要になります。
また、文字を見てもわからない場合、単純に単語を知らないケースも多いです。
その場合はもちろん、リスニング力を鍛えるよりも単語をたくさん覚えていくようにしましょう。
聞いた単語を即座に脳内で訳せるようになれば、リスニング力の向上にもつながります。
TOEICのリスニングでスコアアップさせるコツ
英語力を上げるための勉強をすることは前提ですが、せっかく英語力を高めてもTOEIC本番でスコアにつながらなければ意味がありません。
英語力が高くてもTOEICに苦しんでいる人や、英語力が低くてもTOEICで高得点を出せてしまう人もいます。
TOEICも試験である以上、英語力以外の部分でスコアをアップさせるためのコツが存在します。
以下では、TOEICのリスニングでスコアアップに直結させるコツを3つ紹介します。
「先読み」で内容を予測しておく
パート3とパート4では「先読み」が必須です。
先読みとは、設問の音声が流れる前に、問題になっている3つの設問を読んで理解しておくことです。
パート3とパート4は30秒以上音声が続くので、全ての内容を覚えることはとても難しいです。
とくに、わからない単語が出てきたり、聞き取れない部分があったりすると混乱してしまうこともあります。
そのため、先に解答に必要な情報を頭に入れておき、その情報を意識して聞きとるようにするとスコアが上がります。
また、先読みをしておけば、音声を聞きながら解答できる問題もありますので、情報を覚えていなくてもその場で解けてしまいます。
そして、それぞれのパートにはDirection(パートごとの説明)の時間があります。Directionの内容は毎回まったく同じなので聞く必要はありません。
Directionの時間を有効活用して、印刷されている設問や図表に目を通しておきましょう。
聞きとれなかったとしても悩まない
TOEICリスニングでは、答えがわからなくても悩まないようにしましょう。
TOEICリスニングはとてもテンポが速いので、悩んでいるとすぐに次の問題が始まります。
そして、準備不足のまま回答すると、正答率が下がってしまいます。
深追いをしないためには、自分が正解すべき問題数を頭に入れておきましょう。
たとえば、600点目標の人は約60%~70%を正解すればよいわけです。
また、TOEICは4択のマークシート方式の試験ですので、勘で答えても25%(Part2は33%)の確率で正解になります。
そのため、600点目標の人は50%くらい自信を持って答えられればよいことになります。
逆にいえば、半分も間違えてよいのです。
そう考えると気持ちが楽になるのではないでしょうか。
TOEICの問題には難しさの強弱がありますので、自分の目標点数に合わせて冷静に問題を解くようにしましょう。
はじめの方が簡単で、あとの方が難しいということもありません。
わからない問題に悩むよりも、一旦マークしてしまって次に進むことが大切です。
基本中の基本ですが、わからない問題も必ずマークするようにしましょう。
頻出のパターンを知っておく
TOEICリスニングでは、ある程度問題のパターンが決まっているので、それを知っているとスコアが上がりやすくなります。
たとえば、Part1ではよくwearとput onの違いが出題されます。
とても似た単語ですが、wearは「着ている状態」で、put onは「着る動作」という違いがあります。
そのため、手袋を身に付けた状態で作業をしている人を描写する場合、身に付けている状態を示すwearが正解になります。
そのほかにも、TOEICを意識して勉強しないとわからない単語はあります。
lean against(立てかけられる)やmow(芝刈りをする)などの単語もPart1では出てくることが多いので、覚えておくと有利になります。
また、パート3やパート4でも頻出の設問パターンはありますので、TOEIC対策の問題集でよく見る設問を暗記してしまうのも1つの方法です。
暗記してしまった設問は、出題されたときに一瞬で理解できますので、設問を読む時間が短縮できます。
頻出のパターンは必ず対策するようにしておきましょう。
TOEICリスニングのおすすめ教材
それでは最後に、TOEICリスニングの勉強におすすめの教材を紹介します。
しかし、どんな教材にも向いている人と向いていない人がいます。
以下では、それぞれの教材について、おすすめポイントだけではなく、どんな人におすすめかも含めて解説します。
【アプリ】スタディング&アルク TOEICL&R対策講座
スタディング&アルクTOEIC L&R対策講座のおすすめポイントは、講師の質です。
担当の早川先生はTOEIC満点を取得しており、TOEICの対策パターンを熟知しているのはもちろん、企業研修や大学で3万人以上の指導をしてきた、超がつくほどのベテラン講師です。
また、オンライン講座で実績のあるスタディングが提供していることもあり、オンラインでの勉強のしやすさにも定評があります。
PCだけでなくスマホからも講義動画を見られるので、通勤時間などのスキマ時間を使って学習できます。
ただし、最高レベルの講師に加えて、日々の学習内容もふんだんに盛り込まれているため、やはり本を買うのに比べると費用がかかります。
そのため、書籍を使って自分で考えて勉強できる人にとってはコスパがよくないかもしれません。
多少の費用をかけてでも、信頼できる講師の授業を受け、最短でスコアを伸ばしたい人にはとてもおすすめです。
【アプリ】スタディサプリENGLISH TOEIC対策コース
もっと手軽にTOEIC対策をしたい人には、スタディサプリがおすすめです。
私がおすすめする最大の理由が演習の量です。
スタディサプリでは、TOEIC約20回分の問題演習ができます
約20回分を公式問題集(1冊3000円)で解こうとすると、10冊分必要になるので、3万円かかってしまいます。
それにそもそも、公式問題集は現在7までしか出ていないので、20回分も解くことはできません。
それだけの量の演習が月額3000円程度で受けられるため、とてもコスパはよいと思います。
ただし、だらだらと続けてしまうと費用がかさんでしまう点には注意しましょう。
月額3,000円といえど、1年間払っていると4万円近くかかってしまいます。
1年間も同じアプリで勉強していても続かない人が多いと思いますので、長期戦で考えている人にとってはあまりコスパがよくないでしょう。
短期決戦で一気にたくさんの問題を解きたい人にはとてもおすすめです。
【書籍】サラリーマン特急 新形式リスニング
最後に、もっともリーズナブルな良書を紹介します。
TOEIC L&R TESTサラリーマン特急 新形式リスニングは、新書で持ち運びやすい形式ではあるうえ、情報量が多いです。
問題の解説や解き方の説明、発音など、内容が充実しています。
何より問題の質が高く、本番に近いトレーニングができます。
しかし、あえて欠点をあげるとすれば、問題の難易度は本番よりも少し簡単な印象がありますので、上級者にはおすすめできません。
また、コンパクトなわりには内容が濃いですが、これ1冊でTOEIC対策を網羅するには問題数が足りないと思います。
TOEIC対策の入門としては十分なので、何万円も教材にかけられない人や、TOEICの受験に慣れておらず、TOEICリスニングの基本について知りたいという方にはおすすめです。
出題傾向をおさえてスコアアップを目指そう
日本人はリスニングが苦手な人が多く、TOEIC対策の中でもパート1からパート4は苦労するセクションかもしれません。
しかし、TOEICのリスニングは、内容を聞きとれればしっかり点数がとれるようにできています。
また、毎回同じパターンで出題されるため、聞きとるのが苦手でも、パートごとの特徴や出題傾向を理解したうえで学習を進めれば、スコアアップにつなげられます。
自分のレベルや学習スタイルに合った教材を選択して、効率よくTOEIC対策を進めましょう。