日本人が英語の4技能で「スピーキング」と「ライティング」を苦手とするケースが多くみられます。
これは日本の英語教育や試験では、主に「リーディング」と「リスニング」が取り上げられてきたという歴史があるからかもしれません。
IELTSは英語4技能を測り、英語力を総合的に判断する試験として知られています。
今回は、IELTSアカデミック・ライティングの採点基準や課題の種類やライティングフォーマット、テンプレート、使える語彙や表現を紹介します。
IELTSライティング問題内容と採点基準は?
IELTSには、2種類のテストがあります。
1つはイギリスやアメリカ、カナダ、オーストラリアなど英語圏の大学や大学院への進学を目指す方が英語力を証明するために受験する「アカデミック・モジュール」。
もう1つは、英語圏への永住や移住する方が受験する「ジェネラル・トレーニング・モジュール」です。
IELTSの「ライティング」テストにおいては、「アカデミック」と「ジェネラル」で問題内容が異なります。
ちなみに、「リーディング」も問題内容がそれぞれのモジュールで変わりますが、「リスニング」と「スピーキング」に関しては同じ問題内容です。
また、IELTSには、受験方法も2種類用意されています。筆記で行う従来の「ペーパー受験」と「コンピューターを使って受験」するCD(Computer Delivered) IELTSです。
ペーパー受験とコンピューター受験で問題内容に変わりはありません。
ライティングは、ペーパー受験の場合は、紙に鉛筆で書いて解答します。CD IELTSにおいては、コンピューターのキーボードを使ってタイピングしてライティングを行います。
ここでは、双方の受験方法における「アカデミック・モジュールのライティング」の問題内容と採点基準について解説します。
IELTSアカデミック・ライティングの問題内容
IELTSアカデミック・ライティングの問題は2つのライティング・タスクが与えられ、60分で書き終えなければなりません。
それぞれのタスクの内容は以下のとおりです。
タスク1
グラフ、表、図を提示され、情報を要約して自分の言葉で説明するよう求められます。
データの選択と比較、プロセスの説明、オブジェクトの説明、または何かがどのように作用するかを説明します。
ライティングに必要な文字数は150文字以上です。
タスク1では、自分の意見や考えは求められませんが、グラフや表・図を見て、それらの情報をいかに簡潔にまとめて説明できるかという能力が必要になります。
タスク2
課題に対する考えと、その理由を自身の経験や知識を交えてエッセイを書くことを求められます。
ライティングには250文字以上の文字数が必要です。
タスク2においては、課題に対して賛成なのか、反対なのか、ほかにどのような意見を持っているのか、など自分の意見や考えをまとめてエッセイを書く必要があります。
IELTSアカデミック・ライティングの採点基準
IELTSライティングのタスク1とタスク2の配点は均等なのかどうなのか気になりますよね。
実は、タスク1とタスク2の点数の配分は1:1ではなく1:2。
タスク2の配点は、タスク1の2倍になるということになります。
従って、実際の試験の時間配分もタスク2のほうに時間をかけて、できるだけ高いスコアを狙っていくのが良いでしょう。
配点が分かったところで、次にそれぞれのタスクの採用基準を紹介します。
採用基準を知ることにより、「何を意識して書くのか」の答えが見えてきて、身につけるべきライティングスキルも分かってきます。
タスク1の採点基準
- Task Achievement タスクを十分かつ適切に達成しているか
- Coherence & Cohesion 論理の一貫性と流れの良さ
- Lexical Resource 語彙力(単語の難易度だけでなく選択も適切にできているか)
- Grammatical Range and Accuracy 文法の幅と正確性(表現の幅)
タスク2の採点基準
- Task Response タスクに十分かつ適切に対応しているか
- Coherence & Cohesion 論理の一貫性と流れの良さ
- Lexical Resource 語彙力(単語の難易度だけでなく選択も適切にできているか)
- Grammatical Range and Accuracy 文法の幅と正確性(表現の幅)
タスク1とタスク2のそれぞれ採点基準は全部で4項目。
その内の3項目は同じです。違う項目はタスク1では「Task Achievement タスクに対する到達度」に対して、タスク2は「Task Response タスクに適切に対応しているか」となっています。
これらの各4つの採点基準項目は、IELTSライティングのスコア範囲である0~9のバンドごとに、何ができているのかが詳細に記載されている採点基準が以下のIELTS公式サイト(英語)で紹介されています。
IELTSアカデミック・ライティング タスク1のテンプレート
タスク1では、グラフ、表、図からの情報を要約して説明する問題やデータの比較と選択、プロセスの説明、オブジェクトの説明、何がどのように作用するかを自分の言葉で説明する問題が出題されます。
グラフの種類は、棒グラフ、円グラフなどが使われますが、種類より大切なのはグラフが何を表していているかを読み取り、それを的確かつ要約して説明するライティングスキルが必要です。
タスク1の課題は、以下の6種類から出題されます。
- 時間の経過とともに変化するグラフの説明
- 割合を比較するグラフの説明
- 時間の経過とともに割合も変化するグラフの説明
- 複数のグラフの説明
- 地図を読み解いて説明する問題
- 手順を説明する問題
いずれの課題においても、タスク1では、自分の意見や考えを述べる必要はありません。
グラフやチャート、地図を説明するためのテンプレート(型)をもとに、練習を行えばIELTSライティング・タスク1の攻略ができるでしょう。
タスク1は以下の流れと内容でライティングを行います。
グラフやチャートなどを説明する問題なので、必ずしも結論を書く必要はありませんが、文字数が足りないときに最後に書き加える程度に考えておきましょう。
【1段落:導入】
- 1文目:課題のパラフレーズ
【2段落:概要】
- 1文目:1番目の主な特徴
- 2文目:2番目の主な特徴
- 3文目:一般的な特徴の比較(必要に応じて)
【3段落:詳細1】
- 1文目:1番目の主な特徴の詳細1
- 2文目:1番目の主な特徴の詳細2
- 3文目:比較(必要に応じて)
【4段落:詳細2】
- 1文目 :2番目の主な特徴の詳細1
- 2文目 :2番目の主な特徴の詳細2
- 3文目:比較(必要に応じて)
1段落の導入では、問題の内容を別の言葉で書き換える「パラフレーズ」をします。
例えば、問題で「The graph shows~(このグラフは~を表しています)」と書かれていた場合、同じ意味で違う言葉を使って「The image indicates~」と書き換えます。
テンプレートとしてもこれらのフレーズは覚えておくと良いでしょう。
2段落の概要と3と4段落の詳細では、以下の6つのポイントを意識して、データを読み取っていきます。
・データの意図 ・数値の急な変動 ・最も顕著な差異 ・類似点 ・例外 ・最も高い数値と低い数値
まずは、視覚的に表しているデータで何を伝えたいのかという意図をきちんと理解することが重要なポイントです。
要点が把握できたら、主に数値の「変動」や「差異」に着目していきます。
2段落の概要では、上記ポイントから読み取った3つほどの要点や特徴を書くと良いでしょう。
3と4段落では数値や変化など具体的にデータを描写・説明していくので「数値の変動」や「比較」などの表現が中心になります。
「概要」で使えるテンプレートは以下のとおりです。
As an overview, ~(概要として~)
It can be clearly seen that ~(~であることが明確に見て取れる)
「詳細」ではデータの数値について記述するテンプレートとして「A increased to xx% in [year](Aは○○年にxx%へ上昇した」や「B decreases by xx%(Bはxx%まで下落している)」 など、前置詞の「to」や「by」などの使い方を習得して、上昇や下落については、「increase」と「decrease」だけを使用するのではなく、ほかの言い方のパラフレーズも覚えて使えるようにしておきましょう。 また、「C rapidly declined to xx(Cは急激にxxへ落ち込んだ)」のようにデータの変動の度合いを表す語彙力をつけることをおすすめします。 データの数値が正確に読み取れない場合は「およそ」の「about」、「roughly」、「approximately」などを使い分けると良いでしょう。
地図のモノの位置を表すテンプレートとしては「A was located next to B in [year](○○年にはAはBのとなりにあった)」が使えます。
以下に「詳細」で使えるデータの数値の上昇・下落と度合いを表す単語、地図で役立つ位置の表現を紹介します。
【数値の上昇を表す動詞】
- increase
- go up
- climb
- grow
- rise
- rocket
- jump
【数値の下落を表す動詞】
- decrease
- decline
- go down
- fall
- drop
- plunge
- plummet
【変化の度合いを表す副詞】
- sharply/quickly/rapidly/steeply(急速に・急激に)
- considerably(かなりの程度に)
- significantly(大幅に)
- substantially(実質的に)
- steadily(着実に)
- gradually(徐々に)
- moderately(適度に)
- slightly(わずかに)
- slowly(ゆっくりと)
【モノの位置を表す表現】
- in front of~(~の前)
- opposite~(~の向かい)
- diagonally opposite~(~の斜め向かい)
- next to~(~のとなり)
- between A and B(AとBの間)
IELTSアカデミック・ライティング タスク2のテンプレート
タスク2では、以下の5種類の課題から出題されます。
- 賛成または反対の意見を述べる
- 2つの意見に対して主張する
- メリットまたはデメリットを述べる
- 課題解決の提案をする
- 2つの質問に対して解答する
タスク2では、意見や問題解決のための提案など自分の考えを述べるエッセイを書きます。
本当の意見や考えを書く必要はありません。
次に紹介するタスク2の構成に当てはめて、書きやすい内容であれば実際とは違う意見や考えでも大丈夫です。
【導入】
- 1文目:課題のパラフレーズ
- 2文目:主張
- 3文目:エッセイのアウトライン
【ボディ1】
- 1文目:アイディア
- 2文目:アイディアを裏付ける理由
- 3文目:具体例
【ボディ2】
- 1文目:アイディア2または考えられる反論
- 2文目:アイディアや反論を裏付ける理由
- 3文目:具体例
【結論】
- 1文目:結論(導入のパラフレーズ)
- 2文目:アイディアの要約
課題を読んで理解しライティングを始める前に、上記の構成項目に沿って課題に対する自分の意見や考えをまとめておきます。
ペーパー受験はもちろん、コンピューター受験でもメモを取ることができるので、できれば英語でまとめておくほうがベターですが、日本語でメモして日本語で考えながら英語に訳してライティングをする方法でも構いません。
「導入」では、課題をパラフレーズして、課題に対する自分の主張を明確に述べます。
最後の文で、主張に続く展開のアウトラインを書いていきます。
導入では「I agree with this statement.(このステートメントに同意します)」と同意を主張するテンプレートを覚えておきましょう。
導入で述べた主張に対して、「ボディ」では「アイディア(考え)」、「その理由」、「具体例」をライティングします。
アイディアに対する理由と具体例を挙げることにより、アイディアの説得力が増し、主張が揺るぎないものになるのです。
ボディで使えるテンプレートは以下のとおりです。
- To begin with, ~(まず~)
- In addition, ~(加えて~)
- What is more, ~(さらに~)
- Admittedly, ~(確かに~)
- One reading cause is ~(ひとつ読み取れる原因は~)
- One primary factor is ~(ひとつの主要な要因は~)
- One possible effect of ~(~の考えられる影響)
タスク2では、最後に「結論」を述べます。結論は基本的に導入の内容と同じになりますが、全く同じ単語・文章では減点の対象になります。
同じ意味でも違う言葉や表現を使うパラフレーズで書き上げていきます。
エッセイは結論がなければ完結しません。
結論はパラフレーズを使い、的確かつ簡潔に必ず書くようにしましょう。
以下が結論で活用できるテンプレートです。
- To conclude, ~(結論として~)
- To recapitulate, ~(要約すると~)
- To sum up, ~(総括すると~)
IELTSライティング対策まとめ
ここで紹介したIELTSアカデミック・ライティングのフォーマットにもとづいて、テンプレートを使って単語・表現を増したり覚えたり、独学でインプットを行いIELTS公式問題集でライティングの練習を積み重ねていけば、ライティングスキルも身についてくるでしょう。
しかし、模範解答を参考にしながらの独学では、限界があります。
IELTSのライティングで高い効果を得るためには、やはり、IELTS対策を専門とするスクールで学ぶのが効果的です。
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