グローバル化が進む近年、英語の能力を高めようと、英語に関する資格試験の受験を検討している方は少なくないでしょう。
国際的に認知度が高いといわれている「IELTS(アイエルツ)」は、英語圏の国々に留学、就労または移住を希望する方々の英語力を測定する試験です。
受験者は年々増加しており、2018年の実績では年間約350万人以上の方が受験しています。
今回は、IELTSの試験で評価される4技能の中の1つ、ライティングの「タスク1」について詳しく解説します。
IELTSライティング「タスク1」とは?
IELTSの試験は、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つの能力を測ります。
IELTSのライティングは「タスク1」と「タスク2」に分かれており、「タスク1」と「タスク2」では質問の形式や問われる要素が異なります。
「タスク1」では、図表を見て、そのデータや特徴を要約する問題が出題されます。試験時間は20分で、文字数は150文字とされています。
「タスク1」で出題される問題形式はある程度決まっており、「タスク2」に比べると対策をすることが容易といわれています。
「タスク1」の評価基準について
IELTSのライティング「タスク1」は4つの評価項目で成り立っており、それぞれ25%の配分で0から9点で評価されます。
4つの評価項目と基準について、紹介します。
タスクへの返答(TA)
設問に対して、十分かつ適切に解答できているかということと、解答がアイデアと結論は明確かということを評価するのが、TAです。
TAは、Task Achievementの略称です。TAで評価されることは、端的にいうと、ちゃんと図表について説明できているのか、ということです。
一貫性(CC)
適切な段落構成が取れているかということと、つなぎ語が適切に使えているか、ということを評価するのがCCです。
CCは、Coherence and Cohesionの略称です。CCで評価されることは、最初から最後まで一貫しているか、論理的か、ということです。
語彙(LR)
語彙を適切に使用できているかということと、同じ語彙を繰り返し使用していないかということを評価するのがLRです。
LRは、Lexical Resourceの略称で、端的にいうと語彙力について評価をする項目になります。
文法(GRA)
文法を適切に使用できているかということと、さまざまな構文を使用できているか、ということを測るのがGRAです。
GRAはGrammatical Range and Accuracyの略称で、文法について評価をする項目です。
「タスク1」問題形式例について
IELTSのライティング「タスク1」の問題形式は以下の7パターンに分けることができます。
「タスク1」を解答する際に大切なことは、グラフの種類にとらわれず、グラフが何について説明しているのかを明確に読み解くことです。
ここでは、出題傾向が高い5パターンをピックアップして、解説します。
ラインチャート
出題確率が1番高いといわれているのがラインチャートです。
ラインチャートの問題で出題される特徴は、時間の経過と共に変化するグラフ(時間軸があり、1つのものの数値が変動しているグラフ)といわれています。
ラインチャートの問題では、特異な点(上昇・下降)を理解し、それを説明することが求められます。
棒グラフ
棒グラフも比較的出題確率が高いといわれています。
棒グラフの問題で出題される特徴は、ラインチャート同様、時間の経過と共に変化するグラフ(時間軸があり、1つのものの数値が変動しているグラフ)です。
また、数値の高さ、あるいは高低を比較したり、割合を比較したりするグラフも多いといえるでしょう。
棒グラフの問題では、高低の比較に焦点を当てながら、説明することが求められます。
円グラフ
円グラフも、ラインチャート、棒グラフと並んで出題確率が高い形式で、割合の比較をする時に用いられるグラフの形です。
円グラフはグラフの内容を理解しやすいですが、円グラフ単体だけで出題されることはめったにありません。
必ず円グラフ×円グラフ、円グラフ×表、といったセットで出題される、複合型グラフが多いといわれています。
複合型グラフは、関連している2つ以上のグラフの傾向や特徴を読み取ることが必要とされます。
円グラフ×円グラフは、年代が違う比較を表すことが多く、円グラフ×表といった異なる種類のグラフがセットで出題された時は円グラフとの関係を説明していることが多い傾向にあります。
円グラフの問題では、それぞれのカテゴリーが占める割合を比較することが求められます。
ダイアグラム
ダイアグラムは、前述の3種類のグラフと比較すると出題確率は少ない傾向にあります。
ダイアグラムで頻繁に出題される内容は、プロセスを説明するもので、いわゆるフローチャートです。
何かの製造や処理、手続きなどの工程が10個ほどの絵と文で書かれているもので、図をすべて順番どおりに説明していきます。
問題文を見た時に、地図ではなく何らかの手順が書かれていたら、フローチャートと判断して問題ありません。出題パターンは以下の2つに分けられます。
- ・自然プロセス:人間、動物、水など、さまざまな自然界のプロセス
- ・人口プロセス:ビール、コーヒー、セメント、レンガなどが作られるプロセス。ATMやインターネットの原理なども出題される
ダイアグラムのフローチャート問題では、図に書かれている情報をすべて説明することが求められます。
表(テーブル)
表(テーブル)は、情報をまとめたり数値の時間的な変化や構成を比較したりする時に用いられます。
出題確率は、前述の3種類のグラフとあわせて8割程度といわれていますので、比較的高いといえるでしょう。
問題文に記載されている年代が2つ以上で何かを比較している場合は、時間の経過と共に割合も変化する表(テーブル)であることが多い傾向にあります。
行や列の数値から、変化や比較を説明することが求められます。
「タスク1」は解答テンプレを覚えるのがおすすめ
IELTSのライティング「タスク1」は「タスク2」と異なり、自分の意見を書く必要がありません。
そのため、テンプレートを覚えて解答する方法がおすすめです。
ライティングの型に沿って書くことで、文法や語彙において多少のミスがあっても、バンドスコア「6.0」までは比較的容易に取得できるようになるといわれています。
ここでは、テンプレートの例について詳しく紹介します。
テンプレート例
「タスク1」の基本的なライティングの型は以下の通りです。
●導入文
図表が表していることを1文で説明します。
複数のチャートや表などがある場合は、すべてのチャートや表について説明する必要があります。
導入文を書く時のポイントは、まず問題文をパラフレーズ(言い換え)することが挙げられます。
問題文の重要でない情報の部分に同義語や類句を当てはめていきます。この時、問題文を一字一句コピーすることは避けましょう。
キーワードを使用することも重要なポイントの1つです。例えば、日付、時間、国、性別などです。
導入文は明確に説明することが大切なので、関係のない情報を提示することは避けましょう。
●概要
図表の大きな特徴の要約をします。
グラフがどのように変化したか、または、どのカテゴリーが1番最高(最低)を記録しているかということを書くと良いでしょう。
2つの大きな事実(図や表の目立つ事実)を書き、2つの文章にまとめる方法が基本です。
概要を書く時のポイントは、つなぎ語を使用し、内容から読み取った情報を要約することです。
この時、概要にデータや数字を含めることは避けましょう。次の段階である詳細1でデータを参照する必要があるためです。
また、図表に将来の予測が示されている場合は、将来の傾向もまとめに書くようにしましょう。
●詳細1
概要の段階で2つの事実について書いているので、事実1を詳細1に書くと収まりが良いでしょう。
目安は、大体2文章〜3文章です。
「タスク1」では、主な特徴を挙げ、データを参照して説明を裏付けることも求められます。
主な特徴とは、図の中で最も目立つ要素のことです。
たとえば、5つの年齢層で2年間の推移を示したグラフだとすれば、5つの年齢層、主な傾向、突出した数字(最高値か最低値)、2年間、この4つのことが重要な特徴として挙げられます。
この4つのことを、詳細1と詳細2で説明することが大切です。
1つでも特徴を見落としてしまうと、説明が不完全だと評価されるため注意しましょう。
詳細1では、グラフの全体的な傾向と1番特徴的な数値や最高値と最低値などを、データを参照し明確に記載することが重要なポイントです。
また、出題されている表やグラフが複合型だった場合、詳細1には1つ目のグラフについて記載するようにします。
●詳細2
詳細2では、概要の段階で書いた事実2について掘り下げて書きましょう。
詳細1同様、大体2文章〜3文章を目安にします。
出題される図やグラフの形式にもよりますが、グラフの中での数値の変動をまとめたり、カテゴリーや年代別に比較したりする内容を書くと良いでしょう。
グラフや表が複合型だった場合は、詳細2には2つ目のグラフについて書くようにします。
タスク1は、図表を説明する問題なので、必ずしも結論を書く必要はありません。
文字数が足りない場合に、最後に書き加える程度に考えておけば大丈夫です。
「タスク1」の対策・勉強法
IELTSのライティング「タスク1」の対策や効果的な勉強法について紹介します。
対策
「タスク1」の対策としておすすめの方法は、「段落分け攻略法」です。
「段落分け攻略法」とは、グラフや表などのビジュアル情報の内容を、前述で説明したライティングの型通りに構成(段落分け)していく方法のことです。
「段落分け攻略法」については、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
勉強法
「タスク1」の効果的な勉強法として、まず問題集で問題の構成を覚えることが挙げられます。
前述で説明した、ライティングの型である構成をしっかり頭に叩き込み、何も考えなくても実践できるようにしましょう。
アウトラインを書く練習をする方法も効果的です。
まずは問題を見て、最初に簡単なメモを書き、それをもとに本文を書いていく方法です。
メモにまとめて、それに沿って書くことを心がければ、内容が逸れてしまうことはありません。
また、問題集は、模範解答があるものを選びましょう。模範解答の模写をする勉強方法も効果的なためです。
模範解答をただ読むだけでは頭に入らないので、模写をするのがおすすめです。
模写をする際には、ライティングの型である構成をしっかりと意識することを心がけましょう。
次に、主語と動詞の使い方に注目します。
模写をしている時は、どうしても特殊な単語に目がいってしまい、その単語を覚えることばかりを考える傾向にあります。
そうなると、正しく使うということがなかなかできません。
模範解答には、さまざまな主語や動詞が使われているため、その点に注目することが大切です。
構成を意識することと主語と動詞に注目することができるようになったら、個々の単語や表現の言い換えに注目してみましょう。
良い模範解答は、さまざまな言い換えをしています。
しかし、言い換えできる単語とできない単語があるので、その点も注意して模範解答を分析することが重要なポイントです。
スコアアップのコツ
IELTSを受験していて、なかなかスコアが上がらないという方も少なくないでしょう。
IELTSのライティングのスコアアップを目指すには、添削が必須です。その理由は、演習問題を解くだけでは、直すべきところに気づくことができないためです。
自己添削は、コストもかからず、直すべきところに自分で気づくことができれば、同じミスをしにくくなるメリットがあります。
自身で行う添削方法やポイントは以下のページで紹介しています。自己添削を行う際に、ぜひ参考にしてみてください。
着実にスコアアップしたい方へ
自己添削をする場合のデメリットは、添削の精度に個人差が出てしまう点だといえるでしょう。
かなり英語ができる方であれば良いでしょうが、そうではない場合は、なかなか自分のミスに気づくことができません。
特に、IELTSのライティングは他の技能に比べて、スコアアップするのが難しいといわれています。
IELTSのライティングでスコアアップを目指すのであれば、IELTSのライティングタスクを熟知した方による添削サービスを利用することをおすすめします。
バークレーハウス語学センターでは、IELTSに精通した講師陣による、ライティング添削はもちろん、IELTS対策に特化した講座をご用意しています。
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