IELTSの試験では、他3セクション(ライティング、リーディング、リスニング)の前または後にスピーキングのセクションが来ます。
IELTSスピーキング対策にお悩みの方も少なくありません。
本記事では、IELTSのスピーキングでスコアアップを目指す方のために、スピーキングテストの内容、スピーキングの点数を効率的に上げる勉強法、試験時に役立つコツについてご紹介します。
スピーキングの点数が伸び悩んでいる方は、ぜひ本記事を参考にし、スコアアップのヒントを見つけ出してください。
IELTSのスピーキングの内容は3つのパートに分かれる
IELTSのスピーキングは、その名の通り「話す力」です。
つまり、試験官とどれだけ英会話ができるかを測る試験です。
最近では、各テストセンターによって対面形式もしくはオンライン形式の2つなっており、どちらも試験官とマンツーマンの面談方式でテストがおこわれます。
試験では、パート1からパート3の3つで構成され、試験全体でかかる時間は長くてもだいたい15分です。
しかし、それぞれのパートで問われる内容や所要時間が異なります。
以下の表にまとめましたので、参考にしてみてください。
内容 | 所要時間 | |
挨拶 | パスポート確認・自己紹介 | 1~2分 |
パート1 | 身近なトピックについて (仕事や勉強、住まい、好み、習慣など) | 4~5分 |
パート2 | 与えられたお題についてスピーチ | 準備1分 + スピーチ2分 |
パート3 | パート2に関連したトピックについて (一般的・抽象的な内容) | 4~5分 |
スピーキングの4つの評価ポイントを把握する
IELTSのスピーキングテストは、試験官とどれだけ会話ができるのかを測るテストとお伝えしました。
- 「英会話ができていれば点数が取れる」
- 「外国人と話せるから大丈夫」
- 「留学していたから問題なし」
受験者の中には、上記の考えになりがちな人もいるでしょう。
しかし、IELTSは単に日常会話ができるだけでは点数が上がりません。
では、IELTSスピーキング試験と普段の英会話とでは、何が違うのかを次の4つの評価基準を見ながら確認しましょう。
- 流暢さと話の一貫性(Fluency and coherence)
- 語彙力(Lexical resource)
- 文法の正確さ(Grammatical range and accuracy)
- 発音(Pronunciation)
上記4つの項目に関し、以下の例を参考に解説します。
たとえば、2人の受験者がいたとします。
Aさん
ネイティブと同じような発音ができる。
文法が正確ではないので、理解に困ることがある。
Bさん
日本語のアクセントが強い。
単語や文法が正確なので、理解しやすい。
この2人のうち評価が高いのはBさんです。
たとえ発音がきれいでも、文章が整っておらず理解に苦しむのであれば点数が下がります。
Bさんのように、アクセントや訛りが強くても、理解できるのであれば問題ありません。
では、もう1人の例を見ていきましょう。
Cさん
内容が薄く、ありきたりな話
様々な単語や文法を使えている
Cさんも、Bさんと同様に高い評価を得られやすいです。
IELTSでは内容がノーベル平和賞並みのものか、いかに秀逸かは関係ありません。
ありきたりなアイデアでも様々な文構造や語彙を用いて、話続けられれば高得点につながります。
文法や単語など正確でなくても通じればOKという普段の会話とは違い、IELTSでは4つの評価基準に沿って英語力が測定されます。
評価基準を理解したうえで、なるべく無駄な労力を削減して、自分の目標スコアへ向けて効率的な学習をしていきましょう。
IELTSスピーキングテストのパート別対策
パート1
パート 1では身近なトピックについて質問されます。
だいたい1~2つのトピックについて聞かれることが多く、各トピックにつき3~4つの質問が聞かれます。
パート1の対策をする際に意識するポイントは1つです。
「例や理由を加えて、話を広げる」
たとえば、「What is your favorite animal?」(あなたの好きな動物は何ですか?) と質問されたとします。
NG:「I like dogs the best.」
(私は犬が一番好きです。)
OK:「I like dogs the best because they are cute and therapeutic.」
(犬が一番好きな理由は、かわいくて癒されるからです。)
NGパターンでも、間違いではないです。
ですが、高得点を狙うのであれば、OKパターンのように、理由なども含めて答えることが非常に大切です。
どんな質問が来ても話を広げられるように、普段から対策しておきましょう。
パート2
パート2もパート1と同様に、過去の経験・人物・本・場所(旅行先)・イベントなど身近なトピックがよく出ます。
パート2で意識するべきポイントは全部で2つです。
まず1つ目は、「トピックカード(問題文)をよく読む」ことです。
たとえば、以下のような
Describe a famous person you like or admire.
(あなたが好きな、もしくは尊敬している有名人について説明してください。)
という質問で、有名な人ではなく、身近な家族や友達について話すと「問題が理解できていない」と判断されてしまいます。
問題文をしっかり読み、理解したうえで回答する練習をするとよいです。
2つ目のポイントは「カフェで友達に話す感覚」です。
パート2では、2分間話し続けなければならないというプレッシャーがあるので、途中で止まってしまったり、言い直しが多くなってしまうパートです。
パート2はスピーチの形式ですが、プレゼンなどのかしこまったスピーチである必要はないです。
カフェで友達と話す感覚で、練習をしましょう。
パート3
パート3では、パート2のトピックに関連した話題を深堀りして、ディスカッションがおこなわれます。
パート2のトピックがわかったところで大まかな内容を推測することは可能です。
しかし、試験官はパート1とパート2の回答で確認できなかった英語能力をパート3で確かめるために、予想外な質問が投げかけてくる可能性が高いです。
普段考えたこともないような質問がきたとしても、パート1と同様に話を広げなくてはいけません。
その際に、自分のことについて話すよりも「一般論を話す」ということに意識して練習しましょう。
たとえば、次のような質問が聞かれたとします。
Do you think holidays are an essential part of people’s lives?
(休日は、人々の生活に欠かせないものだと思いますか?)
NG: Yes, I think so. Holidays are essential because I get tired easily and my work efficiency will decrease without holidays.
(はい、そう思います。休みが欠かせない理由は、私は疲れやすいですし、休みがないと仕事の効率が落ちるからです。)
OK: Yes, I think so. Holidays are essential because, in general, people get tired easily and your work efficiency will decrease without holidays.
(はい、そう思います。休みが欠かせない理由は、一般的に、人々は疲れやすいですし、休日がないと仕事の効率が落ちるからです。)
NGパターンでは、一応問題に対する答えにはなっているものの、自分のことしか述べられていません。
あくまでも「人々の生活にとって」という部分に答える必要があります。
OKパターンのように、一般論として回答するような対策をしていきましょう。
また、スピーキングを独学で対策するのは難しいので、スピーキングテスト対策の一環として、『バークレーハウス』で対策するのもおすすめです。
IELTSスピーキング勉強のコツ
ここまでは、パートごとのポイントを確認してきました。
次に、IELTSのスピーキング力向上のためのコツを紹介していきます。
頻出の問いに目を通す
各パートでも、よく聞かれるトピックや質問タイプが決まっています。
参考書や過去問を解いたときに出会った問題は、実際に本番のテストでも似た問題が聞かれる可能性が非常に高いです。
普段から色々な問題に触れていれば、本番で似たような問題が出た際は落ち着いて対応ができるはずです。
また、ゼロベースでアイディアを考え出す必要もありません。
好印象をあたえる話し方を意識
スピーキングテストは試験官との1対1の会話になります。
就職の面接とまではいかないまでも、相手が聞き取りやすいかどうかを意識して、大きな声で、ゆっくり、ハキハキと答える練習をしましょう。
また、「アイアム ア スチューデント」のようなカタカナ英語は、相手が理解できない可能性が高く減点対象となりえますが、ある程度は日本語訛りでもOKです。
ネイティブっぽい発音を意識しすぎるよりも、英語特有のリズムや抑揚、強弱に重点を置いて話す練習をしましょう。
また話す速さもネイティブレベルでなくても大丈夫です。
日本語ネイティブでもゆっくり話す方がいるように、英語でもゆっくり話す人、早口な人と話す速さは十人十色です。
意識するべき点としては、スピーキングテスト全体を通して一貫したスピードで話すことです。
回答は2~3文程度
パート1での対策でも述べましたが、短すぎる回答は避け、理由や根拠、具体例なども含めたボリュームのある回答を意識しましょう。
特にパート1やパート3の1問1答タイプの問題は、普段の練習の時から2~3文は答えられるようにしておきましょう。
一貫性と論理性を重視
どのパートでも、一貫性のある論理的な回答を心がけましょう。
先に述べた通り、IELTSのスピーキングテストでは、まず質問に答え、その後になぜそう思うのかの理由などを付け足していきます。
アイデアや意見を付け足していく際に、ただ付け加えるのではなく、「ディスコースマーカー」を使いこなせると一貫性が出てきて、得点アップにつながります。
例文・単語例
- however
- After that
- Especially
- Most importantly, …
- One thing is … Another thing is …
などいわゆる接続詞や副詞などといわれるものです。
使い方を間違えると、意味の通らない、かつ一貫性のない文章になってしまうため、文章に合わせて正確に使えるようにしておきましょう。
沈黙をなるべく避ける
質問されて、回答を考えているときに無言状態に陥りやすいですが、この無言状態は面接官の評価を下げてしまう原因の一つです。
もちろんアイデアを考えたりする場合に、少し止まるというのはあり得ますが、会話中の不自然な沈黙、特に長い沈黙がないようにする必要があります。
そのために使えるのが「フィラーワード」です。
フィラーワード例
- Let me think…
- That’s a difficult question.
- How should I put this?
- I’ve never thought about this.
- I think A. oh Actually, B.
などなど、使える表現はたくさんあります。
ディスコースマーカーと似ていて、アイデアを考えている間、話し始める前、意見を変える場合などで使える表現が様々です。
こちらも同じく、ただ使えばいいのではなく、状況に合わせて正しく使えるように普段から練習しましょう。
模範解答
ここで、模範解答を見ていきましょう。
その前に、伝えておかなくてはならないのは、IELTSスコア8.5~9.0が出ると想定した模範解答となっています。
以下で紹介する模範解答のように話さなくてはいけないわけではないので、安心してください。
また、実際に受験したことがある方は知っていると思いますが、試験では試験官が笑って反応してくれたり、相づちを打ったり、皮肉や冗談を言ったりすることはないという点も頭に入れておいてください。
では、これまでに紹介した評価基準や対策と勉強のコツを踏まえて、模範解答の内容をいくつか解説していきたいと思います。
AとBに交代でQ&Aをしてもらい、それぞれのポイントを見ていきましょう。
繰り返しと聞き直し
A: What job would you like to have ten years from now?
(10年後、あなたはどんな仕事をしていたいですか?)
B: Sorry, what was it? 10 years’ time, was it?
(すみません、何でしたっけ?10年後でしたっけ?)
B: Is there anything you never eat?
(10年後、あなたはどんな仕事をしていたいですか?)
A: Is there anything I never eat …? Well, usually I try something at least once.
(私が絶対に食べないもの…?そうですね、いつも、一度は食べてみるのですが。)
上記を見ると、二人が「質問を繰り返す・聞き直す」ことをしていました。
これは、目標スコアが何点あっても誰でも使えるテクニックです。
英語ネイティブでも質問を聞き逃したり、聞かれていたことを忘れてしまったりして、もう一度質問を聞くということはよくあります。
また、答えを考える時間稼ぎのために、試験官の質問を言い直したりもします。
何度も聞き直すことは減点となってしまいますが、一度くらいであれば質問を聞き直す、言い直すことはまったく問題ありません。
一回目で聞き取れなかった、うまく発言できなかったとしてもセカンドチャンスはかならずありますので、焦らずに対処しましょう。
話を広げる
次に、紹介するポイントは「話を広げる」です。
B: What do you do when you’re all together?
(みんなで一緒にいる時は何をしますか?)
A: We usually argue. Aside from arguing, of course, for example, with my dad, I’ll go to coffee shop, and you know, we enjoy taking about sort of interesting subjects.
(私たちはたいてい議論します。もちろん、言い争う以外にも、例えば、父と喫茶店に行って、面白い話題で盛り上がったりします。)
A: What is the top country? (Of all the countries you have visited)
(トップの国はどこですか?今まで訪れたことのある国の中で)
B: That’s a hard one but I suppose … it’s hard … maybe Italy. I have close friends in Naples and yeah, I just loved everything about the city.
(それは難しいですね……難しいけど……たぶんイタリアです。ナポリに親しい友人がいますし、この街のすべてが気に入りました。)
上述のように、2人ともただ質問に答えるだけでなく、ディスコースマーカーやフィラーワードを用いて沈黙を避け、補足情報を追加して2~3文程度で答えていました。
ディスコースマーカーやフィラーワードは正確に使えるようになるまで練習が必要です。
話を広げる練習は比較的簡単にできるので、取り入れてみましょう。
最後のポイントは、評価基準の1つである文法に注目してみましょう。
「シンプルな英文と複雑な文」を使いこなすことです。
文法項目で点数を上げるためには、とにかく難しい文章を使わないといけないと思いがちで、実際に高得点を狙おうとすると、陥りやすいミスのTOP3に入るポイントです。
これまでに述べてきた内容ではないのですが、対策する際にぜひ意識してほしい箇所です。
A: Do you think electronic books will ever completely replace printed books in the future?
(今後、電子書籍が印刷された書籍に完全に取って代わることはあると思いますか?)
B: Ah… No. I think it will be even more popular than today. But, I don’t think it will completely replace the old paper books basically, because it hurt your eyes, you know. Particularly, if you work in the office all day, it hurts your eyes and reading something again on another electronic device just hurts your eyes more.
(いいえ、電子書籍は今よりもっと普及すると思います。でも、基本的に古い紙の本に完全に取って代わることはないと思います。特に、一日中オフィスで仕事をしていると、目が痛くなりますし、また別の電子機器で何かを読めば、さらに目が痛くなります。)
上記の会話で使われている単語は基本的ですし、どれも中学校で学ぶようなものがほとんどです。
文構造に注目すると、最初の回答のようにシンプルなものもあれば、仮定法を使った少々難しい文章も使っていることがわかります。
このようにIELTSのスピーキングで点数を上げるには、難しい文法を使うことももちろん大切ですが、学校で習うようなシンプルな英文も混ぜて使うことも必要です。
難しい文法や文構成ばかりを使っても点数は上がらないので注意しましょう。
IELTSスピーキング本番!直前対策はできる?
本番当日になると、今まで練習してきたことを実行するのみです。
正直な話、当日にできることは限られています。
ただし、本番直前でも点数UPにつながる部分はあるので、見ていきたいと思います。
実体験を話す必要はない
質問はすべて正直に答える必要はありません。
また、冒頭でも述べた通り、IELTSのスピーキングには、どれだけ素晴らしい内容を話しているかという評価項目はありません。
なので、回答に困ったら、友達の話やドラマの話をあたかも自分のことのように話してもいいですし、作り話で進めても問題ありません。
意識すべきなのは、とにかく話し続けることです。
話を盛る
回答には、情報を付け加えて膨らませる必要があります。
話を広げる目安としては、試験官から止められるまで話せると理想です。
そのためにも、どんどん話を盛っていきましょう。
1問1答になってしまわないように気を付けて、フィラーワードやディスコースマーカーを用いて、できるかぎり話を広げましょう。
もちろん、予想していなかった問題や、今まで考えたことのないような問題が出て答えに困ることは頻繁にあります。
しかし、わからなかった場合は素直に言っても点数に支障はありません。
知識不足であれば、理由を説明しましょう。
聞き返す
質問が理解できず、曖昧なまま答えるよりかは、聞き直して答えた方が良いです。
実生活で相手の質問が分からないまま話を続けるということはまずないはずです。
IELTSでも、同様に実際に英語で会話ができるかが根底にあるので、質問が分からないまま答えると、質問を理解できない英語力という判断になってしまいます。
「もう一度言ってください」と聞き直したり、「○○はこういう意味ですか?」と確認したり、質問を理解したうえで答えていきましょう。
試験官は友だち
たくさん練習してきても、試験官と対面すると緊張してしまいます。
こればかりは、人間なのでしょうがないです。
IELTSのスピーキングテストは普段の会話と違って、相手から相づちや反応など返答が返ってきません。
話していても捉えどころがなく、自分が今話している内容は正しいのかどうかなどと不安になり、余計に緊張してくる、という負のスパイラルに陥ってしまう方も多いです。
そこで、緊張を少しでも緩和するためにも、試験官を友達・家族や普段よく話す人と想定してみましょう。
また、直接目を見るのではなく目と目の間や鼻など、少し目線を外して会話するのも良いかもしれません。
これらの方法で、緊張をゼロにはできませんが少しでも自分がリラックスして話せる工夫を取り入れましょう。
まとめ
今回は、IELTSのスピーキングでスコアを上げるための勉強方法や対策を見ていきました。
スピーキングの問題の概要と評価基準を理解したうえで、今回紹介したコツなどを普段の練習にぜひ取り入れてみてください。