IELTS(International English Language Testing System:アイエルツ)は、世界140ヶ国、10,000以上の機関が採用している英語を母国語としない人を対象とした、世界最大級規模の英語能力試験です。
IELTS試験の問題作成と運営はイギリスの University of Cambridge ESOL Examinations(Cambridge ESOL)、英国教育省ブリティッシュ・カウンシル、豪州教育委員会 IDP Education Australia & IELTS Australia の3つの団体が共同で行っています。
日本国内での受験の申し込みはブリティッシュ・カウンシルが管理し、公益財団法人日本英語検定協会が運営を行っています。
今回は、IELTSの用途として「大学入試にIELTSは役立つのか」という点をテーマに、大学入試におけるIELTSの有用性を紹介しましょう。
そもそもIELTSは大学入試で役立つの?
IELTSは、英語圏への学校の進学や移住申請要件の指標として採用されており、大学や大学院で学位取得を目指す学生を対象とした「アカデミック・モジュール」と、仕事や移住を目的とした人を対象とした「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2種類の試験があります。
出題内容は、
- リスニング
- リーディング
- ライティング
- スピーキング
この4技能を審査する試験で、スピーキングは、面接官と対面式で行われることが大きな特徴です。
IELTSのスコアは0から9.0まで0.5刻みのバンドスコアで、合格や不合格はありません。
成績証明書には、リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの各セクションのバンドスコアと、総合評価としてオーバーオール・バンドスコアの計5種類のバンドスコアが示されます。
IELTSのスコアは、イギリスやオーストラリア、アメリカなどの英語圏への大学進学において、英語能力を証明するために採用している大学が多数存在しています。
主要英語圏の大学への進学のために必要なIELTSのスコアは、6.5が目安です。
入試難易度の高い大学などは、7.0以上必要とされる場合が多くなっています。
アメリカの大学進学ならTOEFLのスコアが必要と考えがちですが、アメリカの大学では、TOEFLと並行してIELTSのスコアも採用する大学も増えており、IELTSはその採用規模からも英語能力を測る上で高い信頼を得ていることが分かります。
日本でも大学入試で採用されているIELTS
日本の大学入試において、英語は今まで行われてきた「リスニング、リーディング」の2技能に、「ライティング、スピーキング」を加えた4技能を測る試験の実施が決定されました。
そこで、4技能を総合的に評価する試験として、民間の「英語外部検定試験」の利用が認められることになったのです。
英語外部検定試験のIELTSは多くの大学で採用されており、IELTSのスコアによって入試の加点などの優遇が受けられる大学があります。
大学入試の英語外部検定試験にはIELTSのほかに英検、TOEFL、TOEICなども採用されていますが、どの試験のスコアを採用するかは大学によって異なるため、志望校でIELTSが利用できない場合もあるので注意が必要です。
IELTSを大学入試で採用している大学と優遇されるスコア
IELTSを大学入試に採用している大学では、国際性の高い学部や学科で優遇されるケースが多くみられます。
ただし、グローバルな学部や学科ほど、求められるスコアは高めに設定されています。
ここでは、主に受験者数が多い大学の優遇内容をIELTSのスコア別に紹介します。
IELTS 3.0~を採用している大学・学部
- ▼東京理科大学
- ○全学部(理学部第二部以外)【出願資格】
IELTS 3.5~を採用している大学・学部
- ▼芝浦工業大学
- ○全学部【出願資格】
IELTS 4.0~を採用している大学・学部
- ▼明治大学
- ○商学部【出願資格】
- ▼青山学院大学
- ○総合文化政策学部【出願資格】
- ▼立教大学
- ○全学部(異文化コミュニケーション学部以外)【出願資格】
- ▼法政大学
- ○情報科学部
- ○理工学部(機械工学科 航空操縦学専修以外)
- 【出願資格】
- ▼中央大学
- ○経済学部
- ○文学部(英語文学文化専攻以外)
- 【出願資格】
- ▼関西大学
- ○文学部
- ○経済学部
- ○政策創造学部
- 【出願資格】
- ▼東京理科大学
- ○全学部(理学部第二部以外)【10点加点】
- ▼駒澤大学
- ○全学部(医療健康科学部以外)【100点中75点換算/高得点採用】
- ▼東海大学
- ○全学部(医学部医学科以外)※4.0~5.0【100点中80点換算/高得点採用】
- ▼専修大学
- ○全学部※4.0〜5.0【100点中80点換算/高得点採用】
IELTS 4.5~を採用している大学・学部
- ▼青山学院大学
- ○地球社会共生学部【出願資格】
- ▼中央大学
- ○総合政策学部
- ○文学部(英語文学文化専攻)
- 【出願資格】
- ▼法政大学
- ○人間環境学部
- ○スポーツ健康学部
- ○生命科学部
- 【出願資格】
- ▼明治大学
- ○経営学部【出願資格】
- ▼学習院大学
- ○国際社会科学部【200点中120点換算】
- ▼立命館大学
- ○国際関係学部【100点中80点換算】
- ▼中京大学
- ○全学部(国際英語学部以外)【満点換算】
- ▼東洋大学
- ○全学部【100点中80点換算/高得点採用】
IELTS 5.0~を採用している大学・学部
- ▼明治大学
- ○経営学部【20点加算】
- ▼青山学院大学
- ○国際政治経済学部(国際政治学科・国際コミュニケーション学科)【出願資格】
- ▼学習院大学
- ○国際社会科学部【200点140点換算】
- ▼立命館大学
- ○国際関係学部【100点中90点換算】
- ▼東洋大学
- ○全学部【100点中90点換算/高得点採用】
- ○国際学部(グローバル・イノベーション学科)【出願資格】
IELTS 5.5~を採用している大学・学部
- ▼明治大学
- ○経営学部【30点加算】
- ○国際日本学部【満点換算】
- ▼立教大学
- ○異文化コミュニケーション学部【出願資格】
- ▼法政大学
- ○法学部(法律学科・国際政治学科)
- ○経済学部(国際経済学科)
- ○現代福祉学部
- 【出願資格】
- ▼学習院大学
- ○国際社会科学部【200点中160点換算】
- ▼立命館大学
- ○国際関係学部【満点換算】
- ▼関西大学
- ○外国語学部【満点換算】
- ▼東京理科大学
- ○全学部(理学部第二部以外)【20点加算】
- ▼東海大学
- ○全学部(医学部医学科以外)【満点換算】
- ▼専修大学
- ○全学部【満点換算】
- ▼東洋大学
- ○全学部【満点換算】
IELTS 6.0~を採用している大学・学部
- ▼早稲田大学
- ○文学部
- ○文化構想学部
- 【出願資格】
- ▼法政大学
- ○グローバル教養学部【出願資格】
- ▼学習院大学
- ○国際社会科学部【200点180点換算】
IELTS 6.5~を採用している大学・学部
- ▼南山大学
- ○全学部【満点換算】
IELTS 7.0~を採用している大学・学部
- ▼学習院大学
- ○国際社会科学部【満点換算】
IELTSのスコアを持っていることで大学入試や英語圏の大学進学で有利になることは前述の通りです。
ただし、学校によっては規約や評価基準の変更に伴い、必要なスコアが変わることもあります。
そのため、優遇されるスコアや学部などを確認する際は、学校案内やオフィシャルサイトから直接確認したほうが確実でしょう。
大学入試においては、一定以上のスコアで英語試験が満点換算や加点、出願資格になるので、IELTSのスコアを持っていると大学入試を有利に進めることができます。
注意すべき点としては、国内外を問わず「英語力を証明する資格」は大学によって大きく異なるため、「志望する大学の入学要項」をよく読んだ上で、IELTSを受験するか否かを検討することが必要です。
ちなみに、アメリカ英語がスタンダードな日本では、TOEFLがメジャーと思われがちですが、世界ではイギリス英語がスタンダードで、英国系スタンダードであるIELTSの受験者数は、TOEFLの約5倍となっています。
結局、大学入試でIELTSを受けたほうがいいの?
英国系のIELTSは、世界ではスタンダードな英語資格と言えます。
志望大学にもよりますが、大学入試や英語圏の大学進学を有利に進めるために、IELTSを受験しようと考えている人には、IELTSの試験日程に合わせて、できるだけ早いタイミングで、IELTS対策と学習を行うことをおすすめします。
IELTS対策の勉強法には、独学、オンライン英会話、英会話・英単語アプリ、通学コースや短期語学留学などさまざまですが、「何から始めてよいか分からない」という場合には、IELTS対策を専門としているスクールを利用するのも選択肢のひとつです。
自分に合ったIELTS攻略の勉強法を見つけて、大学入試や英語圏の大学進学を有利に進められるよう、目標とするIELTSのスコアを獲得し、それを活用して、志望する大学の合格を勝ち取りましょう。
ちなみに、英語圏のなかでも「イギリスへの進学や留学(または移住)」を検討している場合においては、英語力の証明にIELTSではなく「IELTS for UKVI」が必要となるケースが多いという点に注意してください。
このIELTS for UKVIについて、詳しくは以下の記事で詳しく紹介しています。