英語の文は、能動態(active voice)、受動態(passive voice)のどちらかの形をしています。
行為者(actor)が文頭にくるのが能動態、行為(action)を受ける側が文頭にくるのが受動態です。
英語で文章を書く場合、大抵は能動態を使います。
不自然な受動態は、「しまり」がなく、モヤモヤした長文になってしまうためです。
しかし、受動態には特定の効果的な活用術がいくつか存在します。
つまり、受動態を使う目的が明確であれば問題はありません。
この記事では、受動態の文法、受動態を使うべきシーンについて紹介します。
受動態とは
受動態(passive voice)とは「(行為を)受ける」側が文頭に来ることです。
日本語で説明すると「AはBに話しかけた」は能動態、「BはAから話しかけられた」は受動態です。
はじめに、能動態と受動態の文章を見比べてみましょう。
能動態: I invented this machine.「(私が)この機械を発明しました。」
受動態: This machine was invented by me.「この機械は(私の手によって)発明されました。」
能動態: I’ve never told this story to anyone before.「(私は)この物語は誰にも語ったことがありません。」
受動態: This story has never been told before.「この物語は(誰にも)語られたことがありません。」
能動態: A Japanese university poll found that younger people are less interested in marriage. 「ある日本の大学が、若い世代は結婚に興味を失っていることを発見した。」
受動態: It was found that younger people nowadays are less interested in marriage.「今の若い世代は結婚に興味を失っていることが発見された。」
正直、どの例文も受動態の方がなんとなくぎこちない印象ですね…
それではどんなときに受動態を使うべきなのでしょうか?
受動態はどんなときに使われる?
受動態を使うべきタイミングには、主に4つのパターンがあります。
- 行為者が不明なとき(犯罪や大昔のできごとなど)
- 行為者が誰なのかが重要ではないとき(または明らかなとき)
- 一般的な真実を語るとき
- 科学的な解説をするとき(論文や報告書など)
それぞれのパターンについて例文を紹介します!
行為者が不明なとき
My apartment was broken into.「私のアパートが侵入されました。」
*犯人は不明です。
Some historical artifacts were lost centuries ago.「歴史遺産が何百年も前にいくつも失われました。」
*何百年も前に失われたという事実に重点を置きます。
Fire was discovered millions of years ago.「火は数百万年前に発見されました。」
*大昔に発見された事実に重点を置きます。
行為者が誰なのかが重要ではないとき
Michael was awarded the medal of honor.「マイケルは名誉勲章を与えられました。」
She was elected president of her class in high school.「彼女は高校時代に、学級院長に選ばれました。」
I was authorized to visit the secret parts of the museum.「美術館の秘密の部分を見学する許可をもらいました。」
一般的な真実を語るとき
English is taught in most schools around the world.「英語はほぼ全世界の学校で教えられています。」
CO2 is produced by burning fossil fuels.「二酸化炭素は化石燃料を燃やすことで発生します。」
The subject is followed by a verb and a complement.「主語の後には動詞と補語が来ます。」
科学的な解説をするとき
Liquid nitrogen is slowly poured in a container.「液体窒素はゆっくりと容器に注がれます。」
A vacuum is created by removing the air from a space.「空気を空間から抜くことで真空にすることができます。」
A water molecule is made up of two hydrogen atoms and one oxygen atom.「水の分子は二つの水素と一つの酸素の原子によって構成されています。」
受動態のちょっと便利な使い方
主に受動態が使われるのは、上で紹介した4つのパターンです。
しかし、そのほかにも便利な使い方として2つのパターンを覚えておくとよいでしょう。
- 行為者が誰なのかをはっきり指摘したくないとき(ビジネスや政治など)
- 行為を重視するとき
こちらも例文を紹介するのでぜひチェックしてみてください!
行為者が誰なのかをはっきり指摘したくないとき
The document wasn’t attached to the email.「資料は添付されていませんでした。」
*添付を忘れた人を指摘しない「親切な」言い回しになります。
The meeting has been cancelled.「会議はキャンセルされました。」
*誰によってキャンセルされたかは重要ではありません。
Mistakes have been made.「過ちは犯されました。」
*政治やビジネスの記者会見などでよく聞く表現です。
行為を重視するとき
Apple Computers was established in 1976 by Steve Jobs, Steve Wozniak and Ronald Wayne.「Apple社は1976年にS・ジョブズ、S・ウォズニアックとR・ウェインの3人で設立されました。」
Vaccines against anthrax and rabies were discovered by Louis Pasteur.「炭疽菌と狂犬病のワクチンは、ルイ・パスツールによって発見されました。」
My car was fixed by my brother.「私の車は弟によって修理されました。」
受動態の作り方
受動態の文章を作るときは、以下のステップで作成します。
- 受動者を主語にする
- 動詞をbe+過去分詞にする
- byをつける
続いてはそれぞれのステップについて詳しく紹介します。
受動者を主語にする
受動態では、受動者(行為の対象)を主語にします。
たとえば、先ほど例にあげた「Apple Computers was established in 1976 by Steve Jobs, Steve Wozniak and Ronald Wayne.」は、「Apple Computers」が行為の対象です。
能動態と受動態を見比べてみると…
能動態:Steve Jobs, Steve Wozniak and Ronald Wayne established Apple Computers in 1976.
受動態:Apple Computers was established in 1976 by Steve Jobs, Steve Wozniak and Ronald Wayne.
受動態の文章を作るには、受動者(ここでは「Apple Computers」)を文頭にもってきて、主語にします。
動詞をbe+過去分詞にする
受動態を作る際は、基本的にbe動詞が必要です。
応用編として、できごとの場合はカジュアルなgetを使うこともありますが、基本は「be+過去分詞」と覚えておきましょう。
また、be動詞の後に来る動詞を過去分詞にする必要があります。
規則動詞の場合は動詞の最後に-edをつけるだけですが、不規則動詞(writeやdrinkなど)は不規則に変化するため、しっかりマスターしておきましょう。
なお、能動態と受動態はどちらかがより自然に聞こえるケースもあります。
例文とともに自然な表現を紹介します!
能動態の方が自然な例
(能動態)I heard that story on the news.「その話はニュースで聞きました。」
(受動態)That story was heard by me on the news.
受動態の方が自然な例
(能動態)A car accident injured me.「車の事故で怪我をしました。」
(受動態)I was injured in a car accident.
文法上のルールはないため、慣れていくことが大切です!
byをつける
be+過去分詞の後にbyをつけると行為者を表せます。
byの後ろには能動態の主語が置かれますが、「by+行為者」は無理につける必要はありません。
会話の中では文を言い終えてからもハッと行為者を付け足せる点が便利です。
byが不要な例
I got my hair cut by my hairdresser.「髪を切ってもらった。」
*大抵はプロの人に髪を切ってもらいます。
The bill was passed by the Congress.「法案は可決されました。」
*議会によって可決されるのが一般常識です。
The perpetrators were arrested by the police.「加害者は逮捕されました。」
*逮捕ができるのは警察だけです。
受動態の時制
受動態の時制は、be動詞やgetと同じ時制になります。
後は過去分詞を付け加えるだけです。
それぞれの時制の受動態について例文とあわせてみてみましょう!
現在形
Employees are regularly evaluated at XYZ Corp.「XYZ社では社員は定期的に査定されています。」
The kids are told to be quiet.「子供たちは静かにしてるように注意されている。」
The actor isn’t nominated for Best Actor this year.「この役者は今年は主演男優賞にノミネートされなかった。」
I don’t often get invited to parties.「私はあまりパーティーに誘われることがない。」
I don’t like to be told twice.「2回同じことを言われるのは嫌いです。」
過去形
This house was built in the late 70s.「この家は70年代後半に建てられました。」
Our company was established in 1949.「当社は1949年に設立されました。」
Hamlet was written by William Shakespeare.「ハムレットはシェイクスピアによって書かれました。」
The actress was/got nominated several times for Best Actress in the past.「女優は過去に何回も主演女優賞にノミネートされている。」
Nobody was/got hurt in the accident.「事故による怪我は誰も負わなかった。」
未来形
The game will be released in June.「このゲームは6月に発売されます。」
The incident will quickly be forgotten.「この出来事は早く忘れられる。」
After the meeting, the agreement will be signed by both parties.「ミーティングの後に契約は交わされます。」
Dinner will be prepared by the time the kids get home.「子供たちは家に替えまでには夕食はできています。」
You will be given the opportunity to lead your own team.「自分のチームをリードする機会を与えられます。」
現在進行形(過去進行形)
Our house is being built.「私達の家はただいま建造中です。」
The building is being demolished at the moment.「建物は今取り壊されています。」
I am getting my car fixed next week.「来週車を修理してもらいます。」
He is getting vaccinated this month.「彼は今月ワクチンを打ちます。」
*未来の予定を指す現在進行形です。
Our house was still being renovated when we moved in.「引っ越した時には家はまだ改築中でした。」
現在完了形(過去完了形)
I’ve been contacted by the client.「クライアントから連絡を受けています。」
The package has already been delivered.「荷物は既に配達されています。」
The perpetuator has been caught.「加害者は捕まりました。」
The professor hasn’t been requested to talk this month.「教授は今月演説の要求はされていません。」
When I called the company, the document hadn’t been sent yet.「先方に電話をした時には資料はまだ送られていませんでした。」
受動態の作り方と時制をしっかり理解できたら、最後は受動態の疑問文をチェックしましょう!
受動態の疑問文
疑問文には、Yes/Noで答えられる疑問文と、疑問詞(5W1H)を使った疑問文があります。
Yes/No系の疑問文は、動詞と主語の位置を入れ替えるだけです。
5W1H系の疑問文では、動詞・主語の入れ替えに加えて、文頭にwhat、who、why、when、where、howなどが置かれます。
疑問文についても例文をもとに確認してみましょう!
Yes/No系の疑問文:
Are employees regularly evaluated at XYZ Corp?「XYZ社では社員は定期的に査定されていますか?」
Was anybody hurt in the accident?「その事故で誰かけがをしましたか?」
Did anybody get hurt in the accident?「事故で怪我を負った人はいましたか?」
Will the game be released in June?「ゲームは6月に発売されますか?」
Was your house still being renovated when you moved in?「引っ越したときには、家はまだ改築中でしたか?」
Have you been contacted by the client?「クライアントから連絡を受けましたか?」
5W1H系の疑問文
Who were the products imported by?「製品は誰によって輸入されましたか?」
What products are imported to Japan?「どんな製品が日本に輸入されてますか?」
Which products are being imported to Japan at the moment?「今のところ、どの製品が日本に輸入されていますか?」
When were these products imported to Japan?「製品はいつ日本に輸入されていましたか?」
Why were these products being imported to Japan?「何故この製品は日本に輸入されていましたか?」
How have these products been imported to Japan?「製品はどの様に日本に輸入されてきましたか?」
まとめ
英語の文は能動態(active voice)と受動態(passive voice)のどちらかの形をしています。
それぞれ「行為者(actor)」と「行為(action)を受ける側」のどちらを重視したいかによって使い分けます。
基本的には、直接的に表現できる能動態を使うことが多く、受動態は使うタイミングを間違えると、無駄に遠回しな文に聞こえてしまいます。
しかし、適切に活用できれば、より自然な表現として伝えられるケースもあるため、まずはこの記事で紹介した6つのパターンをマスターしてみましょう。