「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、他の国を訪れるときにはその国の文化やマナーを知る必要があります。食事のマナーや交通ルールなど、日本では問題にならないことでも、他国では非常識と思われることも中にはあるでしょう。
特に留学先として人気のイギリスは、島国であることから他のヨーロッパ諸国とはまた違った雰囲気の文化が形成されています。
今回の記事ではそんなイギリスならではの文化を細かくご紹介していきます。これからイギリス留学しようという人は、ぜひ参考になさってみてください。
どんな人が多い?その国民性や関心事
我々が「イギリス」と呼ぶ国は、正式名称を「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」といい、実は4つの地域からなる連合国です。
それぞれに固有の文化や制度がありますので、より詳細を知りたい場合にはそれぞれについて調べる必要があることは知っておきましょう。ただ、4つのエリアに共通する”イギリスらしさ”はあります。
イギリスは「紳士の国」?
イギリス人はプライバシーを非常に重んじる傾向にあり、「親しき中にも礼儀あり」というフレーズがぴったりあてはまるような国民性です。
他の英語圏では初めての人同士でもフランクに話したり、家族の話や仕事の話など個人的なトピックもオープンに話したりすることがありますが、イギリスではそういった態度はあまり好まれません。
初めての人と交流を持つときには、相手の様子を見ながら徐々に距離を詰めていくようにしましょう。
芸術や音楽を愛する人が多い
イギリスの首都、ロンドンはしばしば「流行の発信地」といわれることがあります。
芸術や音楽への関心が高い人が多く、文化面においてさまざまな情報に触れられる場所です。ビートルズをはじめさまざまな有名アーティストが生まれた地であり、彼らゆかりの観光地も少なくありません。
また、著名な劇作家や小説家も多く輩出しています。シェイクスピアは言わずもがな、ディケンズやルイス・キャロル、アガサ・クリスティ、トールキンなど枚挙にいとまがありません。
現代作家なら『ハリー・ポッター』シリーズのJ・Kローリングもイギリス出身です。
スポーツへの関心も高い
サッカーとラグビー、このふたつは実はイギリス発祥のスポーツです。どちらもfootballを起源とし、時間をかけて発展し世界中に広まっていきました。
国内にはチームが多数あり、熱狂的なファンが多く、これらのスポーツが文化として根付いています。他にもゴルフやクリケット、テニスなどイギリス発祥のスポーツは数多くあります。
大きな大会が行われる時期には、テレビや街中の広告などで目にする機会は増えるでしょう。
イギリス人の食事情
続いて食事についてです。他の国へ行くと、レシピや食材が違うのはもちろんのこと、食に関する姿勢や習慣も異なることがほとんどです。
イギリス人は食べ物にこだわらない?
イギリスの食事について、「美味しくない」と聞いたことのある人は少なくないでしょう。
その背景には、歴史的に食へのこだわりが薄い文化であったことが挙げられます。イタリアやフランスでは「食事の場=社交の場」と捉えらえることが多く、その時間をいかに充実させるかが追求され、それに応じて食文化も発展していきました。
しかし、イギリスでは食事はあくまで食事であり、手軽に食べられるシンプルなメニューが広く普及していったのです。
一方で、近年ではそのイメージを払拭すべく、他国のレシピや食材を取り入れ新たな”イギリス料理”を生み出そうという動きもあります。
宮廷文化の名残アフタヌーンティー
イギリスでは19世紀中ごろにアフタヌーンティーの文化が生まれました。
当時は昼食を食べる習慣がなく、朝食と夕食の間の空腹を満たすために紅茶とサンドイッチなどの軽食を摂るようになったのがその始まりです。
現代では日常的にアフタヌーンティーを楽しむ人は少なく、誕生日などのイベント時にのみ行われることが多い”特別行事”になっています。
しかし、アフタヌーンティー文化によって紅茶が広く親しまれるようになり、また一緒にスコーンなどのお茶菓子も頻繁に食べられるようになりました。
今日では紅茶と焼き菓子はイギリスの食文化の一翼を担っています。
人気なのはパブ!市民の社交場
社交の場としてはパブが人気です。お酒を飲むだけでなく、仲間とおしゃべりをしたり新しい出会いを探したりする場として、若者から年配者にまで広く親しまれています。
食事がメインの場所ではないので、フードメニューはフィッシュ&チップスなど簡素なものが多いです。仕事や学校帰りにふらっと立ち寄り、「ちょっと一杯」という人々で賑わう場所です。
学校生活にもイギリスならではの文化がある
学校生活も、日本とは勝手が違うことがあります。そこには文化の違いだけでなく、教育制度の違いもあります。
カレンダーは9月始まり
学校のカレンダーは9月はじまりです。9~12月が1学期、1~4月上旬が2学期、そして4月下旬~7月が3学期です。
それぞれの学期の終わりにはChristmas holiday、Easter holiday、Summer holiday、と長い休みがあります。特に夏休みは約6週間と長いので、旅行などの予定が立てやすいでしょう。
混雑する時期でもあるので、早めに計画を立てるのがおすすめです。
ランチはカフェテリアで
イギリスの学校では、教室でランチを食べる習慣がありません。代わりに、カフェテリア(食堂)で持参したサンドイッチを食べたり、そこで提供される給食を食べたりします。
日本では「全員が同じものを食べる」のが一般的ですが、イギリスのランチタイムでは人によって食べるものが異なるのが当たり前です。また、日本では給食のときには生徒たちが配膳をしますが、イギリスでは「ディナーレディー」と呼ばれる配膳係がいて、生徒たちの食事の世話をしてくれます。
その点も日本の給食との大きな違いです。
国中がお祝いムードに包まれる日
イギリスは移民が多くさまざまな宗教が信仰されており、それぞれに文化や慣習があります。人によって立場に違いはあれど、下記のふたつはイギリスで大々的にお祝いされる行事です。
イースター
イースター(復活祭)はキリスト教の祝日で、イエス・キリストが十字架にかけられ処刑され、その3日後に復活したことをお祝いするイベントです。
年によってイースターの日付は変わりますが、イギリスでは毎年4月初め~半ばに行われます。友達や家族と集まって食事をし、子供たちは「エッグハント」と呼ばれる宝探しのような遊びを楽しむのが伝統的な過ごし方です。
公的な祝日には認定されていませんが、大切な人たちとの時間を楽しめるよう、ほとんどの仕事はお休みになります。公共交通機関の時刻表も変わりますので注意しましょう。
メーデー
メーデーは春の訪れと新しい生命の息吹をお祝いするお祭りです。伝統的には5月1日に開催されていましたが、今では5月1~3日あたりに祝日が設定されています。
メーデーには各地でイベントが開かれ、人々はモリス・ダンスと呼ばれる民族舞踊を踊ったり、自然をモチーフにしたコスチュームに身を包んだりと国中がお祝いムードに包まれます。
日本と何が違う?日常生活のマナー
最後に、日常生活で気を付けるべきマナーの違いについてまとめておきます。マナーとは周囲を不快にさせないためのルールですので、「外国人だから」とあぐらをかかず適応するようにしましょう。
テーブルマナーは知っておこう
テーブルマナーは国によって若干の違いがあります。ある国では「良し」とされる行為でも、別の国では失礼になってしまうこともありますので、イギリス式のマナーを確認しておきましょう。
他のほとんどの国と同様、ナイフとフォークはそれぞれ右手と左手に持ちます。食べ物を口に運ぶときは一口で食べられるサイズに切り分け、フォークの背にのせて食べましょう。
スープを飲むときには皿の手前から奥に向かってすくいます。フーフーと冷ましたり、音を立てて飲むのはマナー違反です。そして、食事が終わったらナイフとフォークは6時の方向に向けてそろえて置きます。
サービスを受けたらチップを
レストランやホテルなどでサービスを受けたときにはチップを支払いましょう。チップの相場は支払金額の10~15%です。
チップが支払われることを前提に賃金が定められているので、支払わないと店員さんに嫌な顔をされてしまうかもしれません。レストランなど飲食店の中にはお会計にサービス料としてチップを入れているところもあるので、レシートをよく確認し、払い漏れあるいは払い過ぎがないように気を付けましょう。
子供の頭をなでてはいけない?
日本では、子供の頭をなでる行為は親愛の表れであり、よく見られる光景です。
さすがに見ず知らずの人に触られると身構えてしまうこともあるでしょうが、顔見知りであれば特に問題になることはないでしょう。
しかし、イギリスではこれはマナー違反です。知り合いの子供であっても、むやみに触るのはやめましょう。
また、欧米では挨拶のときハグをするのが一般的ですが、イギリスでは必ずしもそうではありません。親しくなればハグをすることもありますが、人によってまちまちなので相手に合わせて対応するようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、イギリスの文化について見てきました。日本と異なるだけでなく、他の欧米諸国とも違う部分がありますので、渡英前に”イギリス流”のマナーを学んでおきましょう。
また、滞在する地域によっても独自の文化があることもあります。こういった文化の違いに触れられるのも留学の醍醐味です。
周りの人としっかりコミュニケーションを取りながら、異文化体験を楽しんでみてはいかがでしょうか。