- 国際バカロレアはどんな仕組み?
- どのようなプログラムがあるの?それぞれの違いは?
- 国際バカロレア認定校に通うメリットとは?
国際バカロレア(IB)は、世界中で注目される国際的な教育プログラムです。
探求型学習や論述力の育成を重視し、生徒がグローバルな視点で問題を解決する力を育むことを目指しています。
本記事では、IBの基本的な仕組みや3つの主要プログラム(DP・MYP・PYP)の特徴、IB認定校に通うメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
国際バカロレア(IB)とは?
世界的に人気の高いIBとは、どのような教育プログラムなのでしょうか?
まずはIBの定義や目的、ほかの教育プログラムとの違いについて説明します。
IBの定義
国際バカロレア(International Baccalaureate:IB)は、スイスのジュネーブに本部を置く非営利教育機関「国際バカロレア機構(IBO)」が認定・提供する国際的な教育プログラムです。
3歳から19歳までの生徒を対象に、年齢に応じた4つのプログラムが提供されています。
先進国と途上国では、民間の学校で提供されている学習内容のレベルが異なるため、同様の教育課程を卒業しても、国によって身に付く学力レベルに差が出る場合もあります。
しかし、IB認定校では、世界中どこにいても同水準の教育を受けることができ、条件を満たせば世界各国の大学入学資格である、IB資格を取得できる点が特徴です。
日本の教育レベルは他国と比べても高いため、一般的な高校を卒業すれば海外の大学へも問題なく進学できます。
ただし、IBのプログラムを通じて、学力だけでなく、グローバル人材として活躍できる国際的な感覚を育める点は大きな魅力です。
また、IB資格は多くの国の大学で高く評価されており、進学の際にも有利です。
国際バカロレアの目的
IBは「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を目的としています。
つまり、単に学力を向上させるだけでなく、グローバル社会で活躍できる多面的な能力をもつ人材を育成することを目指しています。
そのため、IBプログラムでは、暗記や試験対策を中心とした学習ではなく、探求型の学びを重視しています。
論述や批判的思考、自己管理能力を養うことができるよう設計されており、学びを深められるでしょう。
さらに、教育を通じて平和を促進するという理念も掲げており、「国際的な視野をもつ」という点も非常に大切にしています。
異なる文化や価値観を理解し、尊重する姿勢を育めるプログラムが充実しています。
IBの三大プログラム
IBには、年齢や学びの段階に応じた3つの主要プログラムがあります。
IBの三大プログラム
- DP(ディプロマプログラム)
- MYP(ミドルイヤープログラム)
- PYP(プライマリーイヤーズプログラム)
DPは、16歳から19歳を対象とし、高校に相当する教育内容を提供します。
大学進学を見据えた高度な教育を提供し、最終試験で基準以上の成績を収めることで、大学入学資格であるIB資格(ディプロマ)を取得できます。
MYPは、11歳から16歳を対象とした中学校の学習内容に相当するプログラムです。
学びの基礎を築きつつ、批判的思考や問題解決力を育成します。
PYPは、3歳から12歳を対象とした、小学校に相当するプログラムで、好奇心を育てる探求型学習を通じ、基本的な学びの姿勢を形成します。
各プログラムは、年齢や発達段階に応じて設計されており、グローバル人材の育成を目指す内容となっています。
各プログラムの内容や特徴は、記事の後半で詳しく説明します!
IGCSEとの違い
国際的な教育プログラムとして「IGCSE(International General Certificate of Secondary Education)」も挙げられます。
IBとIGCSEは、どちらも世界的に人気のあるプログラムとして知られていますが、目的や対象年齢、カリキュラムに違いがあります。
IGCSEはイギリスの名門、ケンブリッジ大学が提供するプログラムで、日本の中学課程にあたる14歳から16歳が対象です。
学習科目の試験によって成績が評価され、受講科目ごとに「IGCSE」資格が得られます。
一方、IBは、探求型の学習を中心に据えており、学びのプロセスや論述力に重点を置いています。
採点をされる正式な試験はなく、基準を満たした生徒にディプロマが発行されます。
年齢別に複数のプログラムがあり、IGCSEと同様の年代をターゲットにしたものは、11歳から16歳を対象とした「IB MYP(ミドルイヤープログラム)」です。
また、ケンブリッジ大学は、日本の高校課程にあたる「国際AS & A Level」というプログラムも提供しており、こちらは17歳から19歳が対象です。
IBで同年齢が対象となるプログラムは「DP(ディプロマプログラム)」です。
どちらのプログラムも修了することで、世界の大学への入学資格を得られます。
IB校に通うメリット・デメリット
続いては、IBのプログラムを履修することができるIB校に通うメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
IB校に通う最大のメリットは、国際的に認められた質の高い教育を受けられる点です。
幅広い科目から学習内容を選択でき、学びの自由度が高い点もメリットとして挙げられます。
IBのディプロマは世界中の大学で高く評価されており、海外大学への進学でも有利になることが多いです。
また、探求型学習を通じて批判的思考力や論述力を鍛えることができ、多文化共生の環境で学ぶことで、異文化理解やグローバルな視点も身につけられます。
IBのプログラムをとおして育める能力は、就職においても大きな強みとなります。
デメリット
一方で、IB校は学費が高額になる傾向があり、学業の負担が大きい点などがデメリットとして挙げられます。
とくに、ディプロマプログラム(DP)では、課題や論文作成が多く、時間管理が重要になります。
そのため、学業面において、高い自己管理能力が求められます。
ただし、厳しいカリキュラムをこなすなかで、主体的に学ぶ力や目標を成し遂げる自己管理能力を養う貴重な機会ともなります。
また、日本国内での大学進学を目指す場合、一部の大学ではIB資格が十分に認知されていないこともあるため、進路選択には注意が必要です。
ディプロマプログラム(DP)
IBの各プログラムの概要や特徴について、詳しく紹介します。
まずは、大学進学準備を目的とした「ディプロマプログラム(DP)」を見ていきましょう。
DPの特徴
ディプロマプログラム(DP)は、大学進学を目指す高校生向けの2年間のプログラムです。
16歳から19歳が対象で、IBのなかではもっとも高度なレベルのカリキュラムとなっています。
DPの目的は、大学進学を見据えた学問的な基礎を築くとともに、思考力や問題解決能力などのスキルを身につけることです。
修了試験で基準以上の成績を収めると、大学入学資格となるIBディプロマを取得できます。
DPは世界中の大学で高く評価されており、ディプロマをもつ生徒に対して入学を優遇するなどの措置がある大学も多いです。
とくに、海外大学への進学を目指す方にとっては、大きな強みとなるでしょう。
科目選択の自由度が高い
DPでは、6つの主要科目グループ(言語と文学、言語習得、個人と社会、実験科学、数学、芸術)から各1科目ずつを選択し、2年間で学習します。
そのため、自分の興味や進路に合わせたカリキュラムで学習できる点が魅力です。
また、6科目のうち、3〜4科目は上級レベル(HL:Higher Level)、その他の科目は標準レベル(SL:Standerd Level)で学習できます。
たとえば、理系を目指す生徒は数学と科学を、文系の生徒は言語と社会科目を上級レベルで選択するなど、進路に合わせてレベルを調整できます。
さらに、「知識の理論(TOK)」「課題論文(Extended Essay)」「創造性・活動・奉仕(CAS)」の3科目は必修科目として履修が求められます。
科目選択は大学進学やキャリア形成にも直結するため、慎重に計画することが重要です。
論述力・探求型の学習を重視
探求型学習を重視している点も、DPの大きな特徴の一つです。
エッセイなどの課題を通じて、論述力を鍛えられます。
たとえば、必修科目である「課題論文(Extended Essay)」では、生徒が自分の興味にもとづくテーマを選び、独自に研究を進めます。
このプロセスを通じて、大学で必要とされる研究スキルや批判的思考を養う機会となります。
また、「知識の理論(TOK)」という必修科目では、知識の本質について深く考え、異なる視点から物事を捉える力を身につけます。
こうした学びにより、表面的な理解に留まらず、知識を体系的かつ論理的に探求する能力が育まれます。
論述力や探求型の学習スキルは、大学進学だけでなく、社会に出てからも重要なスキルとして役立ちます。
大学受験のメリット・デメリット
DPの修了試験を合格し、IB資格を取得した生徒は、世界各地の大学への出願で有利になることが多いです。
多くの大学がIBの点数をもとにした入学基準を設定しており、とくに英語圏の大学では、DPを取得していることで入学がスムーズになる場合があります。
たとえば、アメリカやイギリスの大学では、DP資格をもつ生徒に奨学金を提供したり、入学後の単位認定をおこなったりするケースなどもあります。
一方で、日本国内の一部大学では、IB資格の認知度が十分ではなく、受験において一部の制約がある場合もあります。
大学受験を考える際は、志望大学がDP資格をどのように評価しているかを事前に確認することが重要です。
ミドルイヤープログラム(MYP)
続いては、IBの中等教育プログラムである「ミドルイヤープログラム(MYP)」を紹介します。
MYPの特徴
ミドルイヤープログラム(MYP)は、11歳から16歳を対象とした5年間のプログラムです。
IB教育の最終段階であるDPの基礎学習として、プログラムを通じて学びを日常生活や社会問題に結びつけることで、実践的な知識を深めることを目的としています。
MYPでは、以下8つの科目グループをバランス良く学習します。
- 言語と文学
- 言語習得
- 個人と社会
- 科学
- 数学
- 芸術
- 体育と健康
- デザイン
幅広い分野の教科に触れながら、総合的な学びを進められる点が特徴です。
また、実際の課題に対して自分なりの解決策を提案する力を育む、プロジェクト型学習も取り入れられています。
コミュニケーション能力や国際理解を重視
MYPでは、コミュニケーション能力や国際理解を育むことに重きを置いています。
たとえば、プログラム内では複数の言語が学べるため、グローバル社会で活躍するための語学スキルを磨くことが可能です。
また、異なる文化や背景をもつクラスメートとの共同プロジェクトを通じ、多様な価値観を理解し、尊重する姿勢を学びます。
国際的な視野をもつことが求められる現代では、これらの能力を早くから身につけておくことは、今後のキャリアにおいて大きな強みとなります。
MYPのプログラムを通じ、国際社会や異文化について深く考え、多様性を受け入れる力を養うための土台を築くことができます。
プライマリーイヤーズプログラム(PYP)
プライマリーイヤーズプログラム(PYP)は、3歳から12歳を対象としたIBの初等教育プログラムです。
子どもたちの好奇心を引き出し、学びへの意欲を高めることを目的としています。
PYPでは、DPと同じく探求型学習を中心に、子どもたちが自ら質問し答えを見つけるプロセスを重視しています。
以下6つのテーマをもとにした多様なカリキュラムで、子どもたちは幅広い視点で物事を考え、知識を体系的に構築できます。
- 自己の表現
- 他者との共有
- 自然界との関わり
- 社会の構造
- 時間と場所
- 人間の創造物
また、PYPでもコミュニケーション能力や協力する姿勢が重視されるため、グループ活動やプロジェクト型学習を通じて、他者との関係性を学びます。
こうした学びが、将来のミドルイヤープログラム(MYP)やディプロマプログラム(DP)への準備にもつながります。
IBの理想的な学習者像
IBが育成目標として掲げている「国際的な視野をもつ人間」を具体化するために、IBが理想とする10つの人物像「IBの学習者像」が表現されています。
IBプログラムを通じて磨くことができるスキル、人間性を詳しくみていきましょう。
探究する人
IBでは、自ら探究し、研究するスキルをもつことが重要視されています。
探究する人とは、自ら問いを立て、その答えを見つけるために積極的に学ぶ人です。
たとえば、環境問題に関心をもつ生徒が、自ら調査をおこない、地元での実践的な解決策を提案するような姿勢が求められます。
探究する姿勢は、学業だけでなく、将来のキャリアにおいても課題解決能力として役立つため、IB教育では非常に重視されています。
知識のある人
幅広い分野にわたる知識をもつことも、IBの理想的な学習者像に含まれます。
単に知識を詰め込むのではなく、身につけた知識を応用し、地域社会やグローバル社会をよりよくするための新しいアイデアを生み出す力が求められます。
たとえば、科学とアートを結びつけて新しいデザインを考えるなど、分野横断的な視点をもつことも重要です。
知識のある人を目指すために、IBでは教科書だけに頼らず、実験やプロジェクトを通じて知識を深める機会が豊富に提供されています。
考える人
考える人とは、複雑な問題を論理的かつ批判的に考え、解決策を導き出せる人のことです。
IBでは、問題解決力を育てるために、生徒が自ら考える機会が数多く提供されています。
たとえば、社会的課題に対して、多角的な視点で解決策を提案するディスカッションがおこなわれます。
このようなプログラムを通じて、論理的思考や判断力を養うことが期待できます。
考える力は、大学や職場でのリーダーシップを発揮する際にも欠かせないスキルです。
コミュニケーションができる人
多文化環境で学ぶIBでは、異なる背景をもつ人々との円滑なコミュニケーションが求められます。
そのような環境では、自分の考えを明確に伝える力と、他者の意見を理解する力が重要です。
コミュニケーション能力を磨くためにも、プログラムではグループプロジェクトをおこなう機会があり、メンバー間での頻繁な意見交換が必要とされます。
そのなかで、相手の視点を尊重しつつ、自分の意見を説得力をもって伝える力が鍛えられます。
この能力は、グローバルな社会で成功するために不可欠な要素です。
信念をもつ人
信念をもち、自分の価値観にもとづいて行動することも、IBの理想的な学習者像に含まれています。
また、自分自身がとった行動と結果に責任をもつということも重要な要素です。
たとえば、不平等や環境問題などの課題に対して、公正な考えと強い正義感をもって、具体的なアクションを起こす姿勢が求められます。
IBのカリキュラムでは、このような姿勢を養うための倫理的な学びの機会も多く用意されています。
心を開く人
心を開く人とは、自分と異なる価値観を理解し、それを受け入れる柔軟性をもつ人のことを指します。
異文化や新しい考え方に対して心を開くことは、IB教育の中心的な価値観の一つです。
IBの環境では、多様性に富んだコミュニティでの学びが日常的におこなわれるため、日常生活のなかで自然と異文化理解を深めることが期待できます。
また、自分の文化と他国の文化の違いを学び、相互理解を深める異文化理解のプロジェクトなども用意されています。
他文化を理解し尊重する姿勢は、グローバル社会で活躍するうえで大変重要な要素です!
思いやりのある人
思いやりのある人とは、他者の気持ちや状況を理解し、行動を通じて支援できる人です。
IB教育では、地域社会や国際的な課題に関心をもち、積極的に貢献する姿勢が求められます。
地域のボランティア活動に参加するなど、他者への思いやりを実践する機会が提供されます。
このような経験を通じ、共感力や社会的責任感を育めます。
挑戦する人
挑戦する人とは、未知の分野や困難な課題にも積極的に取り組む姿勢をもつ人です。
挑戦する力は、変化の激しい現代社会で柔軟に対応するために欠かせません。
IBでは、新しい言語を学ぶことや、全く異なる文化でのプロジェクトに参加することが求められ、生徒が自ら新しいことに挑戦する機会が数多く用意されています。
挑戦を通じて得られる経験は、自己成長や自信の向上にもつながります。
バランスのとれた人
バランスのとれた人とは、知識、体力、精神力のすべてをバランスよく発展させる力をもつ人です。
IBでは、学業だけでなく、心身の健康や人間関係においてもバランスを大切にする姿勢が求められます。
たとえば、学業に加えて、スポーツやアート活動、地域活動にも積極的に参加することで多面的な成長を図ります。
バランスを意識した生活は、ストレス管理能力や自己管理能力を養うことにもつながります。
振り返りができる人
振り返りができる人とは、自らの行動や経験を客観的に見直し、改善点を発見できる能力をもつ人です。
IB教育では、学びのプロセスを振り返り、次に活かす習慣を重視しています。
たとえば、プレゼンテーションや試験後に自己評価をおこない、次の目標を設定することが奨励されます。
振り返りの力をもつことで、継続的な成長と自己改善を可能にし、どのような環境でも成功する基盤を築けます。
日本国内のIB認定校の現状
日本国内では、IB認定校の数が年々増加しています。
国際的な教育を目指す私立学校やインターナショナルスクールだけでなく、一部の公立学校でもIBプログラムを導入している例もあります。
しかし、認定校の数は限られており、特定の地域に集中している傾向もあるため、居住地によってはIB校の選択が難しい場合もあるのが現状です。
また、学校によって提供しているプログラム(PYP、MYP、DP)が異なるため、進学希望や学年に応じた選択が重要です。
日本国内でIB教育を受けたいと考えている方は、各IB校のカリキュラム内容を比較し、理想の進路や現在の学年に合わせたプログラムを受けられるかを調査しましょう。
日本政府は、IB教育の普及を支援するための施策を進めているため、今後さらに多くの学校で導入されることが期待されています。
IBはグローバル社会で活躍する力を育む!
IBは、学問だけでなく、多文化社会で活躍するためのスキルや価値観を育むことができる、世界的に注目されている教育プログラムです。
受身型の学習ではなく、探求型の学びを通して、論述力やコミュニケーション能力を磨け、グローバル人材としての基礎を築くことが可能です。
また、IB資格は世界中の大学で高く評価されており、進学やキャリア形成の際に大きなアドバンテージとなることも多いです。
本記事で紹介した内容を参考に、IB教育の魅力を理解し、自身の進路やキャリアにあった学習の道を見つけてみてください。
バークレーハウスでは、留学を検討している方向けに留学サポートを提供しています。
現地学校の情報収集から出願対策、英語試験対策や渡航前の語学学習など、留学に関する準備をワンストップでサポート可能です。
無料留学カウンセリングも実施中のため、留学に対して不安や疑問がある方はお気軽にご相談ください。