みなさんは、留学前にどのような準備をすればよいか知っていますか?
滞在先の国の言葉や文化を学ぶことはもちろん大切ですが、海外は日本ほど衛生状況がよくない場合もあります。
事前に、病気の予防のためのワクチン接種を行うことも重要です。
本記事では、イギリス留学を検討している社会人や学生向けに、留学前のワクチン接種について解説します。
現地で気をつけるべき病気や、病気になった際の対処法も紹介していますので、ぜひイギリス留学へ向かう前の参考にしてください。
イギリス留学前のワクチン接種は必須?
そもそも、イギリスへ留学する前にかならずワクチンを接種しなくてはいけないのでしょうか?
海外渡航の規定は国によって異なりますが、イギリスの場合は観光が目的の旅行者も留学生も、成人であればワクチンの接種は必須ではありません。
しかし、日本と比較するとイギリスの衛生環境はまだ改善の余地があり、日本にいるとき以上に感染しやすい病気もあります。
そのため、病気になるリスクを下げるためにも、特別な理由がない限りワクチン接種は行う方がよいでしょう。
イギリス留学前は現地の病気事情を把握しておくと安心
イギリス留学に限った話ではありませんが、渡航前には現地でどのような病気が流行しているのか、リサーチをすべきです。
あらかじめ調査を行えば、感染しないための生活上の注意点や、接種が必要なワクチンを早い段階で知ることができます。
接種するワクチンの種類を決めたら、早速病院でワクチンを打ちましょう。
接種の際は、事前に病院の先生から副作用などのリスクも確認しておくと安心です。
イギリス留学後に気をつけるべき病気の種類
ここからは、イギリス留学でとくに警戒すべき病気について紹介します。
簡単な症状、感染経路の解説もするので、順番にみていきましょう。
麻疹(はしか)
まず、イギリス留学で注意しておきたい病気が麻疹です。
麻疹はイギリスだけでなく日本や諸外国でも知られている病気で、感染者との接触、飛沫物を介した空気感染などが原因で感染します。
症状は咳や発疹、微熱など軽症で済む場合もありますが、重症化すると深刻な後遺症が残る非常に恐ろしい病気です。
日本ではワクチン接種が義務付けられているので、極度に心配する必要はありません。
ただし、過去にワクチン接種を受けていない方や、追加接種が必要な方はかならず病院に行って予防接種をしましょう。
風疹
風疹も麻疹同様、世界中に存在する感染症です。
感染力が非常に強く、症状は発熱や発疹、リンパ腺の腫れなどがあります。
風疹はとくに妊婦が注意すべき病として知られており、万が一感染すると胎児に深刻な障害が残るか、最悪の場合は死に至るほど危険な病気です。
2回のワクチン接種が終わっていない方は、必ず渡航前に終わらせましょう。
A型肝炎
A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに感染することで発症する感染症で、海外で感染する病気としては頻度が非常に高いです。
汚染された水や氷、その水で洗われた野菜や果物を生で食べることで経口感染します。
食欲不振や腹痛などの症状が主で、一度感染すると終生免疫を獲得できますが、感染する前にワクチンをしっかり接種しておきましょう。
B型肝炎
B型肝炎は、血液などを介してB型肝炎ウイルスに感染することで発症する感染症です。
イギリス国内では流行していませんが、イギリス国外からウイルスが持ち込まれる可能性があります。
症状は食欲不振や嘔吐などで、ワクチンを接種することで抗体を獲得できますが、効果は2年から3年程度で消失するので注意が必要です。
破傷風
破傷風は、傷口から土を介して破傷風菌が体内に侵入することで発症する感染症です。
かつて国内外で猛威を振るった病気で、感染すると全身に痺れや痛みの症状が現れます。
そして重症化すると痙攣と呼吸困難を起こし、最悪の場合は死に至るため、ワクチンや治療法が確立している現代でも注意が必要な病気です。
イギリス国内で感染するのは稀ですが、念のためワクチンを接種することをおすすめします。
狂犬病
狂犬病はその名のとおり、犬などの生き物の唾液を介して、傷口から狂犬病ウイルスが体内に侵入することで感染する感染症です。
感染したあとでもワクチンを接種すれば助かりますが、一度発症してしまうと発熱や知覚異常、そして恐水症を引き起こし、ほぼ必ず死に至ります。
イギリスは世界でも数少ない狂犬病根絶国のひとつではありますが、渡航前には必ずワクチン接種をしましょう。
イギリス留学前に受けるべきワクチン
続いては、留学前に受けるべきワクチンについて紹介します。
聞き慣れない名前のワクチンもあるでしょうが、順番にみていきましょう。
MRワクチン
MRワクチンは、麻疹と風疹を予防する2種混合ワクチンです。
MRワクチンを接種することで麻疹と風疹に対する抗体を獲得し、感染を防ぐことができます。
どちらの病気も非常に感染力が高いので、追加接種をしていない方はMRワクチンを必ず接種するようにしましょう。
DPTワクチン
DPTワクチンは破傷風、ジフテリア、そして百日咳を予防する3種混合ワクチンです。
破傷風は傷口から感染するので、現地でトレッキングなどを行う予定があれば必ず接種しましょう。
使い接種まで終わらせることで、100%抗体を獲得できます。
A型肝炎ワクチン
A型肝炎ワクチンは、その名のとおりA型肝炎を予防する効果のあるワクチンです。
イギリスに留学する方に限らず、途上国に渡航する方や抗体保有率が低い60歳未満の方は、渡航前に接種することを推奨します。
A型肝炎ワクチンは、2週間から4週間の感覚で、2回の接種が必須です。
半年以上滞在するのであれば、半年目に追加接種を受けると5年以上ワクチンの効果が続きます。
B型肝炎ワクチン
B型肝炎ワクチンは、1年以上の滞在をする方は必ず接種しておきましょう。
ワクチンはまず4週間の間隔で2回接種し、それから20週間から24週間後に追加接種を行います。
ちなみに、0歳児に限り無料で接種可能です。
狂犬病ワクチン
狂犬病の発生が確認されていない国は、日本を含めてわずか12カ国のみです。
海外渡航、とくに東南アジア地域に行くのであれば必ず狂犬病ワクチンを接種しておきましょう。
狂犬病ウイルスの宿主は犬以外にもキツネ、コウモリなど非常に幅広いです。
そのため、できるだけ現地の野生動物とは接しないようにしましょう。
もちろん、飼い犬であっても狂犬病ウイルスのワクチンを接種していない可能性があるので、むやみやたらに触ってはいけません。
イギリスに長期留学する場合は現地でワクチン接種も可能
イギリスに留学する方が成人の場合、ワクチン接種は必須ではありません。
それでも感染症のリスクを考えると、ワクチンは接種した方が留学する側も受け入れる側も安心できますし、現地でも接種が推奨されています。
イギリスで感染症のワクチンを接種する際はNHSというシステムを利用しましょう。
以下、NHSについての簡単な解説になります。
NHS
NHSとは “ National Health Service ”の略称で、イギリスの国民医療制度のことです。
週15時間以上のフルタイム、かつ6ヶ月以上イギリスに留学する方は、NHSに加入することができます。
イギリス現地で、最寄りの診療所をかかりつけ医に登録するというシステムです。
NHSは国民の税金で運営されているため、診察に代金はかかりません。
NHSで診察を受けるにはGPへ登録が必要
GPとは“ General Practitioner ”の略称で、日本でいう地域の診療所のような存在です。
NHSで診察を受けるにはGPへの登録が必須のため、GPに紹介状をもらわなければNHSでの医療全般が受けられません。
GP登録するには、イギリスに滞在していて、かつ生活の拠点がイギリスにあることを証明する必要があります。
NHSのメリット・デメリット
長期滞在者であれば、いざというときにNHSのお世話になる可能性が高いです。
そんなNHSについて、ユーザー側のメリットとデメリットを紹介します。
NHSのメリット
NHSの最大のメリットは、すでに述べているように、受診が原則無料だという点です。
医療費は加入者からの保険料や一般財源などで賄われているため、無料での受診が可能となっています。
ただし、処方箋と歯科、それから眼科検診は対象外のため、注意しましょう。
NHSのデメリット
NHSを利用すれば、無料で医療サービスが受けられますが、提供されるのは最善医療であって最新医療ではありません。
また、NHSの受診を受ける際は、かなり長い待ち時間を要します。
病院の予約が取りづらく、手術のために数ヶ月以上待たされることもあるので、金銭的に余裕がある場合は別の医療サービスを受けた方がよいでしょう。
イギリス留学中に病気になった場合
留学中はどれだけ注意をしていても、病気になるときはあっさり病気になります。
もしもイギリス滞在期間中に病気になったら、以下に紹介する方法で対処しましょう。
NHSで診察する
イギリスで病気になった際に、留学生にとって一番頼りになるのはやはりNHSです。
GPから紹介状があればNHSで診察を受けられます。
ただし、すでに説明したとおりどのGPも予約が取りづらいため、予約が1ヶ月後ということも珍しくありません。
受診までの時間の長さがネックのため、気になる症状がある場合は早めに予約を取り、GPの診察を受ける必要があります。
またGPの紹介状がもらえれば、国立や公立の病院を無料で受診することが可能です。
プライベート病院で診察する
GPでの診察は待てないが、救急でもないという場合は、プライベート病院で診察を受けるのもひとつの手です。
プライベート病院はすぐに受診できるだけでなく、日本語で診察・治療が受けられる病院もあるので、多くの日本人が利用しています。
デメリットとなる点としては、自由診療のため医療費が高額になってしまう点です。
しかし、海外健康旅行保険に加入することで、医療費の負担を減らせます。
A&Eを利用し診察する
A&Eとは“ Accident and Emergency ”の略称で、病院の救急外来や救急部門のことです。
命に関わるような病気やケガをした場合は、直接A&Eへ行きましょう。
A&Eは救急部門ですが、毎日かなり多くの患者が集まっているので、症状によっては長時間待たされることもあります。
緊急の場合は「999」に電話をして救急車を呼びますが、対処法がわからないときは「111」に電話をしてNHSの相談ダイヤルで指示を仰ぎましょう。
市販薬や常備薬を服用し自力で治す
イギリスでは、日本ほど気軽に病院へ行くことはできません。
そもそもイギリスの病院は、よほど重症でない限り市販薬の購入をすすめるだけで診察を終わるケースがほとんどです。
そのため、多くのイギリス人は薬局で市販薬を購入し、自力で症状の改善に努めています。
市販薬を購入する場合は、スムーズに買い物をするために事前に症状や病名の英語訳を調べておきましょう。
イギリス留学中に病気にならないための工夫
留学期間中に病気にならないために大切なのは、徹底して病気の予防に努めることです。
病気にならないためにも、以下の4点に注意しながら過ごしましょう。
睡眠と食事に気をつける
留学期間中は、睡眠と食事に気をつけましょう。
イギリスと日本は時差が8時間あるので、留学して最初の数週間は体内時計が狂いがちです。
すると、満足な睡眠時間を確保できず、体調を崩す可能性が高まります。
また、急激な生活環境の変化によって食事が取れなくなるのも危険です。
栄養が足りないとそれだけで身体が弱り、ウイルスや菌への抵抗力が弱まってしまいます。
健康を保つために、不慣れな環境でも常によく食べて、よく寝ることを意識しましょう。
ミネラルウォーターを飲もう
イギリスでは、できるだけ水道水を飲まないようにしましょう。
日本に住んでいると実感しにくいですが、水道水が飲める国は世界中でも日本を含めて12カ国しかありません。
イギリスの水道水も基本的には飲めますが、十分な水道管の整備がされていなエリアもあるので、ミネラルウォーターの購入を推奨します。
ちなみに、イギリスの水道水は東部エリアが硬水、西部エリアは軟水が主流です。
体温調整ができる服を持っていく
イギリスは1日のなかに四季があるといわれるほど、天気が変化しやすい国です。
家を出たときは快晴でも、それから30分もしないで小雨が降り出す、ということも珍しくありません。
季節の変わり目に体調を崩しやすいように、寒暖の差が激しいと病気になりやすくなります。
そのため、イギリスで過ごす際はパーカーなど体温調整がしやすい服を持っていきましょう。
また、急な雨に備えて折り畳み傘も用意すると安心です。
日本から薬を持っていく
薬はイギリスでも購入できますが、日本人の体質に合わない薬も中にはあります。
そもそも、留学したばかりの時期は語学力に不安を持ち、病院や薬局に足を運ぶ勇気が持てない方もいるでしょう。
そのため、日本から事前に風邪薬や胃薬、頭痛薬などの常備薬を持ち込むことをおすすめします。
とくに便利なのは正露丸です。
腹痛のときはもちろん、虫歯ができた場合も穴に詰めることで、一時的な痛みの軽減効果も期待できます。
まとめ
以上、イギリスへ留学する前に行うワクチン、イギリスの医療制度について取り上げてきました。
海外で生活するにあたって、一番の心配事は体調管理です。
どれだけ健康な方でも、慣れない異国での生活でストレスが溜まった結果、病気になる可能性はあります。
そんなときに、頼ることができるのは自分だけです。
事前に必要なワクチンを接種し、また自分が病気になったらどうするかシミュレーションし、どの医療機関を受診するか調べておきましょう。
備えあれば憂いなしという言葉があるように、事前準備をしっかり行ない、充実した留学生活を過ごせるようにしましょう。