自身の経験をもとに、40年近く語学指導や留学指導に携わっている横山さん。
高校生や大学生、ビジネスパーソン、アスリートに至るまで、さまざまな方の世界進出をサポートしています。
自身が経営するアゴス・ジャパンでは年間約2,000人の大学・大学院留学を指導。
実に、日本発のMBA取得者の約7割がアゴス・ジャパンで学んでいます。
横山さんは、世界を舞台に活躍できる「グローバル人材」は今後さらに重要性を増すと語っています。
今回の記事では、横山さんにとっての「グローバル人材」の定義、「グローバル人材」になるための5つの条件について迫ります。
グローバル人材の定義
グローバル人材とは「どこでも、誰とでも、自分らしくふるまえる人材」です。
「どこでも」は、場所もあれば、場面もあります。
地元でも、見知らぬ街でも、海外のカンファレンスでも、5万人が見つめるスタジアムの中でも。
「誰とでも」は、あらゆる人に対してです。
家族、友だち、上司にはじまり、違う世代、違う人種、価値観の違う人。
もちろん、はじめから「どこでも、誰とでも、自分らしく」でなくてもいいのです。
まずは「どこでも、誰とでも、そこそこ自分らしく」を目指しましょう。
「どこでも、誰とでも、自分らしくふるまえる」ようになったとき、あなたはグローバル人材へと成長できているはずです。
国際社会で活躍する人材の5本柱
これまでオリンピアンや俳優をはじめ、さまざまな方の世界進出をサポートする中で、国際社会で活躍する人には共通点があることに気付きました。
グローバル人材に欠かせないのは5つの柱です。
自己理解
自己理解とは、自分を理解することです。
自分を深く理解すると、進むべき道が明らかになります。
自己理解のためには、順序だてて「自分」という存在について考えることが大切です。
簡単にではありますが、以下の問いについて順番に考えてみてください。
上で紹介した問いは、自己理解の一つの方法です。
しかし、上の問いを突然投げかけられたとき、多くの方は答えられません。
多くの日本人は「自分」について考える習慣がないためです。
ぼくは高校・大学時代をアメリカで過ごしたのですが、当時はある3つの言葉を毎日のように投げかけられました。
“What do you think?” 「あなたはどう思う?」
“What do you want to do?” 「あなたはどうしたいの?」
“Why?” 「それはどうして?」
この3つの問いは、自己理解を進めるうえで、とても重要な意味をもっています。
3つの問いに答えるとき、自分の意見や行動について、他者に言葉で伝えるわけです。
そして、自分の意見や行動の真意を言語化するには、「自分」に対する理解が必須です。
さらに、個々の意識や行動を形成したきっかけは、今までの自分の人生の中にあります。
親からの教え、憧れたスターの言葉、過去の経験…
意見や行動が生まれたきっかけを考えることは、より深い自己理解につながります。
好奇心
最大の好奇心は、自分に対する好奇心です。
自分に対する好奇心も「自己理解」と似ていて、日本ではあまりなじみのない概念です。
自分に対する好奇心のイメージをもってもらうために、ぼくがワークショップでよくやっているトレーニングを紹介します。
「隣の人に自己紹介をして、隣の人の言葉で自分のことを紹介してもらう」
他者に自分のことを伝えるときには、以下のような流れを踏みます。
隣の人に自分のことを紹介してもらうには、熱意をもって伝えなければいけません。
また、自分が何を伝えたいかを明確にする必要があります。
一連の流れの中で自分に対する好奇心が芽生えるとともに、自己理解と伝え方も身につきます。
コミュニケーション
世界中の人々とコミュニケーションをとるには、英語が必須です。
ひと昔前、英語はアメリカ人やイギリス人をはじめ、ネイティブと話すためのものでした。
しかし、現在では母語が違う人々がコミュニケーションをとるための共通言語となっています。
いまや、世界で英語で語り合う機会ののうち、8割近くが非ネイティブです。
英語は、ネイティブと話すための言語ではなく、世界で活躍する人にとっての必要条件といえるでしょう。
日本語と英語ではコミュニケーション文化の違いもあります。
日本語はハイコンテクスト文化、英語はローコンテクスト文化です。
日本語ではすべてを語らずとも伝わるのに対し、英語では順序だてて事実を並べないと理解が得られません。
そのため、英語でコミュニケーションを図っていると、ロジカルシンキングが鍛えられるのです。
また「英語を流暢に話せる人は、コミュニケーションスキルに長けている」と考える方がいますが、これは誤りです。
コミュニケーションには、以下の3つの要素があります。
たしかに、グローバルなコミュニケーションにおいて、英語は大切な要素です。
しかし、英語力をつけたからといって、コミュニケーション能力が高まるわけではありません。
ダイバーシティ
近年、日本でも「ダイバーシティ」や「マイノリティ」といわれるようになりました。
しかし、言葉だけが独り歩きしているような印象です。
そこで「差異」という言葉について考えてみましょう。
「差」と「異」は似ていますが、それぞれ違った意味をもっています。
「差」は縦に並べてどちらが優秀かを比べること、「異」は横に並べて違いを比べること。
一人ひとり違う中、大切なのはどちらが優秀かではなく、それぞれの違いを尊重することです。
また、日本の教育やビジネスにおいては「出る杭は打たれる」考え方が主流です。
輪から飛び出した個性を削ってチームワークを形成します。
しかし、ダイバーシティを認めるのなら「個性を尊重して伸ばす」考え方に転換していかなければなりません。
ただ、個性を認める考え方、化学反応を起こす力を日本国内の生活や経験だけで養うのは難しいです。
日本では、みんなの当たり前が似ているためです。
「普通」や「常識」の感覚が似ていると、そこからはずれている人を疎外しがちです。
当たり前が違う場所に出ると、個性を尊重する力がつきます。
たとえば、留学では言語も、人種も、宗教も、産業も違う場所で生活をするわけです。
ダイバーシティを肌で感じることで、人類78億人がみんな「個人」というマイノリティであると理解できるようになります。
英語ができると、当たり前が違う環境にも飛び出しやすくなるのです。
イノベーション
みなさんは「イノベーション」という言葉をどう定義しますか?
「新しいものを生む」や「新たな発明」と考えるかもしれません。
しかし、それだけではありません。
イノベーションとは「あるものの新たな組み合わせに気付くこと」です。
たとえば、21世紀最大のイノベーションでもある「スマートフォン」をみてください。
まるで新たな発明のようですが、スマホの中身はすべて昔からあったものです。
電話、カメラ、カレンダー、地図、インターネット…。
スマホが生まれる前から全部あったけれど、手のひらサイズにまとめたのはスマホがはじめてです。
スマホのイノベーションは、新たな組み合わせに気付いたことです。
イノベーションは、ダイバーシティの話にも通ずる部分があります。
個性とは、自分にしかない特徴や能力ではありません。
唯一無二の組み合わせのことです。
日本一、世界一の能力でなくていいのです。
そこそこの能力を組み合わせて、ほかの人には生み出せない価値を生むことがイノベーションです。
英語ができると将来の選択肢が増える
「英語をやるべき。世界に出るべき。と言うつもりはない。」横山さんは取材中、幾度もそう語っていました。
「世界を知ってほしい。そして、一番納得できる(ワクワクする)未来に気付いて、目指して、近付いてほしい。自分にとって理想の未来を考えるとき、自分が知らない世界は選択肢にすら入らないから。」
今回の取材の中でもっとも胸に残った言葉です。
「世界を舞台に、好きな人と、好きなところで、好きなことができるようになるための応援。」をモットーに、横山さんはグローバル人材の育成に日々情熱をささげています。