自身の経験をもとに、40年近く語学指導や留学指導に携わっている横山さん。
高校生や大学生、ビジネスパーソン、アスリートに至るまで、さまざまな方の世界進出をサポートしています。
自身が経営するアゴス・ジャパンでは年間約2,000人の大学・大学院留学を指導。
横山さんは、ビジネスパーソンにとって「英語力」や「留学」は大きな力になると語っています。
今回の記事では、日本と海外の教育の違い、ビジネスシーンにおける価値の高め方やキャリアアップについて迫ります。
日本の教育と海外のEducationの違い
「教育」を英語にすると「Education」
英語を学んでいる方ならほとんどが知っているはずです。
言葉とはおもしろいもので、語源には文化が表れます。
「教育」と「Education」を比べると、日本と海外の教育に対する考え方の違いを知ることができます。
「教育」とは「教えて育てる」ことです。
つまり、先生主導で知識や学び方を生徒に伝えるのが日本流の教育です。
一方、「Education」の語源は「Educe:中から導き出す」です。
つまり、生徒の中にある好奇心や情熱、興味に気付かせ、発信と行動を導き出すのが海外流の教育なのです。
これは日本でいうところのコーチングに似ています。
「教育」を受けた人と「Education」を受けた人の違いとは?
「教育」を受けて育った人は、ただ一つの正解(the answer)を探そうとします。
一方、「Education」で求められるのは、ただ一つの正解(the answer)ではなく、自分なりの正解(my answer)です。
自分はどう思うのか、自分はどうしたいのか…
「Education」を受けた人は、自分の中にある正解、または「そのときの最適解」を探そうとします。
世の中にある問題のほとんどは、決まりきった答えがありません。
だからこそ、自分の中にある「納得度の高い最適解」を探すことはとても大切です。
また、グローバルに活躍するうえでも「Education」は重要な意味をもっています。
端的にいうと「教育」はインプット重視、「Education」はアウトプット重視です。
たしかに日本はインプットの教育に優れています。
しかし、社会で求められるのはアウトプットです。
社会に出るとアウトプットが評価されて、アウトプットの質によって社会に対する影響力(インパクト)の大きさが変わり、インパクトが給料に反映されます。
日本の「教育」に慣れてしまうと、学生と社会人は求められるものが変わると考えがちですが、グローバルで学んだ人は学生のうちからアウトプットの重要性を理解しています。
自分だけの価値の見つけ方
日本の「教育」ではインプットを重視するため、持ち物を価値であると考える人がたくさんいます。
学位、知識、体力、スキル…
「自分が何を持っているか」が「自分の能力」であると感じるのかもしれません。
しかし、持ち物自体に価値はなく、持ち物が結果に結びついたときに価値になるのです。
「能力」とは、自分の持ち物が結果を出したとき、後付けで呼ばれる名前にすぎません。
たとえば「ウサイン・ボルトの能力は何だと思いますか?」と尋ねると、ほとんどの方が「足が速いこと」と答えます。
しかし、彼の本当の能力は「足の速さを、世界中の人々が熱狂するオリンピックのために使ったこと」です。
勘のいい方はここまでで気付いたかもしれませんが、「能力」とは「持ち物」ではなく「持ち物の使い方」です。
持ち物は、使い方次第で宝にもなれば、ゴミにもなります。
世の中には「能力が低くて評価されない」と悩んでいる方がたくさんいます。
しかし、能力が低いのではなく、持ち物の使い方を誤ってしまうと、能力と呼ばれないだけなのです。
日本一や世界一の能力はなくてもいい
そして、持ち物は組み合わせで考えることが大切です。
ウサイン・ボルトは「世界一の足の速さ」をもっていました。
しかし、自分の持ち物の中から日本一や世界一を探すのは大変です。
たとえば、ぼくの場合だと以下のような持ち物の組み合わせを活かして、「留学希望者やアスリートがグローバルに活躍するための支援」をしています。
一つひとつの持ち物でみると、ぼくより優れている人はたくさんいますが、この組み合わせをすべてをあわせもっている人はほとんどいません。
つまり、「留学希望者、アスリートを含む、15歳から35歳ぐらいのレンジの人材がグローバルに活躍する支援」において、ぼくより適任な人はあまりいないということでもあります。
いくつかの持ち物を組み合わせて、他人にはできないアウトプットを生み出せれば、自分特有の価値になります。
英語が自分の価値を高める
英語は自分の価値を高めるうえで役立ちます。
たとえば、プロ野球選手がメジャーリーグに行くと年俸が5倍になったり、10倍になったりすることがあります。
でもメジャーリーガーになったとたん、球が速くなったり、たくさんホームランが打てるようになったりするわけではありません。
表面的な成績は変わらないのに年俸が上がるのは、見てくれる人の数、そこに価値を感じる人 (インパクト) が増えるためです。
見てくれる人の数が増えると、社会に対する影響力が高くなります。
そして、社会に対する影響力が高くなった結果、仕事の報酬も高くなります。
これはスポーツ界に限った話ではありません。
たとえば、日本では一般的なエンジニアの年収は500~600万円ほどですが、シリコンバレーでは年間2,000万円を稼ぐエンジニアは決して少なくありません。
でも彼らが日本のエンジニアと比べて、何倍も難しい仕事をやっているとも限りません。
同じような「持ち物」で、同じ仕事をしていても、社会に対する影響力によって アウトプット、それに紐づく報酬は大きく変わります。
つまり、今英語が話せない方は、英語ができるだけでも、もっと活躍できる場を得られるかもしれないのです。
XのY乗=インパクトが給料になる
ここまで社会に与える影響力が給料になると伝えてきましたが、具体的にどうすれば影響力を高められるのか悩む方もいるはずです。
そんな方々に紹介したいのが「XのY乗=インパクト」という公式です。
手のひらに指で書いてみてください。
Xとは持ち物です。
学位、知識、体力、スキル、人脈、お金…人によって持ち物は違います。
Yとは持ち物の使い方です。
持ち物を「どこで誰と何のために使うか」(=キャリア選択)によって、生み出される影響力(インパクト)は大きく変わります。
インプット重視の日本の教育を受けると、Xに目を向けがちになります。
でもインパクトを大きくするには、Xを積み上げつつ、Yを増やす方がインパクトは飛躍的に広がります。
そこではじめの一歩として英語ができると、自分の持ち物を世界で使えるようになります。
国を越え、産業を越え、言語を越えると、持ち物の使い方の幅が広がるのです。
今は気持ち一つで世界に飛び出せる時代
ぼくが大学生のとき、国際電話は1分900円でした。
すこし会話するだけでもすごい金額がかかります。
アメリカやヨーロッパへの航空券はサラリーマンの月給を超えていました。
だから世界とつながるのはとても高くついた時代でもあり、つながるには海外に行くしかない時代でした。
そのため、ひと昔前までは「お金がない人」や「時間がない人」にとって、世界に飛び出すことは難しいことでした。
それが今ではZOOMやSNSを使えば、無料で世界中の人とつながれます。
世界に飛び出せない、世界とつながれない、つながらない理由は、あなたの頭の中にしかありません。
できない理由は「お金」でも「距離」でもなく、マインドセットです。
できないのではなく、やらないことを選んでいるのです。
ぼくは講演をするとき、最後に必ず「なにか一つ行動を起こしてみてください」と伝えます。
何も行動が起きなければ、私のメッセージは「独り言」で終わってしまいます。
他部署の同僚とランチに行ってみる、オンライン英会話を始めてみる、これまでの自分がやらなかったことを一つ、なんでもOKです。
ぜひ新しい一歩を踏み出してみてください。