英検のスキルは、TOEICやTOEFLのような「スコア」ではなく合否のみで表されることが一般的でした。
しかし現在は、CSEスコアと呼ばれる仕組みが導入され、より客観的に自身の英語力を測れるようになっています。
今回は、CSEスコアの概要をはじめ、英検の各級とCSEスコアの関係性、配点の例などを紹介します。
英検のCSEスコアとは?
CSEスコアとは、2016年度より英検に導入されたスコアシステムのことです。
従来の英検では、合否と級のみで判定していました。
しかしCSEスコアが導入されたことで、英検における「リーディング」「ライティング」「リスニング」「スピーキング」の4技能のスコアと、これらを合計した総合スコアがわかるようになったのです。
4技能のうちどれが得意か不得意かはっきりとわかるようになり、今後の英語学習の指針になります。
また、CSEスコアでは「英検バンド」と呼ばれるバンドも導入されています。
これは、CSEスコアと合否結果をもとに、自身の英語力を示せる指標のようなものです。
バンドでは合格ラインと自分自身のスコアラインを確認できるようになっており、「合格まで後どれぐらいか」という位置が一目でわかります。
合格を目指している方はもちろん、合格後にさらなるスキルアップを目指す方にとっても役立つ資料だといえるでしょう。
英検バンドについて、詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてチェックしてみてください。
CSEスコアの導入の背景にはグローバル化が関係している
英検は、日本国内において、長い歴史を持つ英語の資格検定試験です。
1963年の設立以来、日本国内で高い信頼性や知名度を築いてきましたが、グローバル化が進み、採点基準の改変も必要となりました。
従来の採点基準では国際的な基準とのズレがあり、スキルが通用しにくくなる場面が増えたためです。
より国際的な評価基準で採点するため、CSEスコアが導入されました。
CSEスコアの導入によって難易度がより公平に
全受験者の採点終了後に統計的手法を用いて算出されるのがCSEスコアです。
ここでいう「統計的手法」とは、受験者の応答状況を見たうえで難易度・形式の異なる試験の結果を比較するための理論を指します。
全受験者の応答パターンによってスコアが左右されるため、「今回の試験はたまたま難易度が高かった(または低かった)」という不公平さがなくなり、全受験者がフェアな状況で試験を受けることができるのです。
CSEスコアにより、バランス重視になった英検
一方で、CSEスコアの導入によって「合格するのが難しくなった」と感じる方もいるようです。
これは、4技能の英語力のバランスが重視されるようになったためです。
従来の英検では、4技能の設問ごとに異なった配点がされていました。
よって、1つの技能が苦手であっても他の技能の設問でスコアを稼げれば合格できる可能性が十分にあったのです。
しかし、CSEスコアの導入によって、4技能ごとの配点はすべて均等になりました。
設問数が少ない技能であれば1問あたりの配点が高くなり、逆に設問が多いと1点当たりの配点は低めに設定されています。
したがって、極端に苦手な技能が1つでもあると合格が難しくなってしまうのです。
たとえば英検2級の一次試験では、各技能の満点は650点と設定されています。
一次試験ではリーディング・ライティング・リスニングの3技能の力が測られるため、満点は1,950点。
合格ラインは1,520点となります。
ここで、1つでも極端に苦手な技能があると要注意。
たとえ2つの技能で満点を取れたとしても、残りの1技能でも最低250点以上を取れなければ不合格となってしまいます。
CSEスコアの導入によって、4技能でまんべんなく点数を稼げる力が求められているのが現状です。
英検の級とCSEスコアの配点表
英検の級とCSEスコアの配点は、以下の通りです。各技能の満点や合格ラインの点数をまとめて紹介します。
級 | CSEスコアの配点 |
---|---|
1級 |
・合格ライン:2,630点 ・全技能の満点:3,400点 ・各技能の満点:850点 |
準1級 |
・合格ライン:2,304点 ・全技能の満点:3,000点 ・各技能の満点:750点 |
2級 |
・合格ライン:1,980点 ・全技能の満点:2,600点 ・各技能の満点:650点 |
準2級 |
・合格ライン:1,728点 ・全技能の満点:2,400点 ・各技能の満点:600点 |
3級 |
・合格ライン:1,456点 ・全技能の満点: 2,200点 ・各技能の満点:550点 |
4級 |
・合格ライン:622点 ・全技能の満点: 1,000点 ・各技能の満点:500点 |
5級 |
・合格ライン:419点 ・全技能の満点:850点 ・各技能の満点:425点 |
このように、CSEスコアによって級ごとの技能スコアや合格ラインが定められています。
前述したようにたとえ満点の技能があっても、総合スコアが合格ライン以下であれば不合格となってしまうため注意が必要です。
国際指標「CEFR」と「CSE」は何が違う?
英検のCSEスコアは、国際的な語学力の指標である「CEFR(セファール)」に対応しています。
つまりCSEスコアを用いることで、自身の英語力を国際的な基準で把握できるようになっているのです。
そもそも「CEFR」は、外国語の運用能力を測定する世界共通の指標です。
正式名称を日本語に訳すると「ヨーロッパ言語共通参照枠」となり、その名の通り、ヨーロッパで設けられました。
発表されたのは2001年で、2018年には補遺版も発表されています。
CEFRによる習熟度は、高い順からC2~A1で示されます。
従来の英検は、どちらかというと日本国内向けに英語力を証明する意味合いが強くありました。
しかし、CSEスコアが導入されたことにより、英検の級にCEFRの基準を照合することができるようになっています。
たとえば、英検1級のスキル(CSEスコアで2,600~3,299点)をCEFRの基準に照らし合わせると「C1」となり、「熟達した言語使用者」と評されます。 準1級(CSEスコアで2,300~2,599点)は「B2」に該当し、「自立した言語使用者」として評価されます。
CSEスコアとCEFRのスコアを照らし合わせることで、
・「CSEスコアが2,300だから、B2レベルでも上位に入れている」
・「英検CSEスコアが2,400だからC1までもう少し」
というように、自身のレベルや位置を確かめることが可能です。
自身の英語スキルを、国際的な指標に沿って確かめられることは、CSEスコアの大きなメリットです。
今後の英語学習やスキルアップの指針になります。
CSEスコアの成績表
CSEスコアの成績表には、トータルスコア・技能別スコア・英検バンドといった項目がそれぞれ記載されます。
それぞれの項目にどのような内容が記録されるのか、以下で紹介します。
トータルスコア
文字通り、その級で受験した各技能のスコアの合計数です。
1~3級であれば、一次試験に受験するリスニング・リーディング・ライティングの3技能のスコア合計が記載されます。
二次試験では、ここに「スピーキング」の項目が加わり、全4技能を踏まえたトータルスコアが確認可能です。
なお4~5級ではスピーキング試験が任意の受験となるため、リスニング・リーディングのスコア合計が記載されます。
技能別スコア
各技能のスコアが記載されます。
英検のCSEスコアでは各技能に均等な配点がされているため、自身がどの技能を得意としているのか・苦手としているのか、を確認できます。
英検バンド
自身のスコアと合格水準を比較し、両者にどの程度の距離があるのかを確認できる項目です。
スコアが合格ラインより上であれば「+」、下回っていれば「-」と表示されます。
たとえば準2級の英検バンドであれば、「GP2+1」というように表記されます。
この「GP」はGrade Pre(グレード:準)の略語です。+の後に続く数字が大きければ大きいほど、余裕を持って合格できたことを意味しています。
逆に-の後の数字が大きければ大きいほど合格まではまだまだ遠く、小さければ小さいほど合格まで近いことがわかるのです。
たとえば英検バンドに「GD2-1」と表記されていれば、「準2級合格まで後少し」ということがわかります。
4技能を均等に効率よく伸ばすことが合格への道
前述のように、CSEスコアが導入された英検では4技能をバランスよく伸ばす必要があります。
1つでも極端に苦手な技能があるのであれば、できる限り早く対策を講じなくてはなりません。
各技能別の対策方法をおさらいしていきましょう。
リスニング
リスニングが苦手な方は、「語彙力と文法の知識がまだ足りていない」と「スピードやネイティブの発音、リズム感に慣れていない」という2つのパターンに分けられます。
前者の場合は英文を読んでも音声が聞き取れないため、まずは単語・熟語のインプットと基礎の文法をしっかりおさらいしましょう。
単語をどの程度知っているのか、正しい使い方ができているかを確認するのが効果的です。
文法については、問題集を解いてみて中学何年生レベルなのかを把握するのが良いでしょう。
後者についてはとにかく英語の音声に慣れることと、「シャドーイング」を行うのが有効です。
シャドーイングとは、聞こえてきた音声のすぐ後に、その音声を真似して音読(発声)する方法のことです。
ただ単に、英語の音声を聴いて黙読するのではなく、自分なりに真似をして音読することで、ネイティブの発音やスピード感、リズム感に効率よく慣れることができます。
リスニング力だけでなく、発音の矯正やスピーキング力の向上にもつながります。
リーディング
リーディングが苦手な原因は、リスニングと同じく語彙力不足や文法知識の不足があります。
これらの基礎を固めることはもちろん、英文を声に出して読む基本の音読をはじめ「多読」「精読」という勉強法を取り入れることも大切です。
たとえば多読は、簡単で幅広いジャンルの英文を多く読むこと。
英語のままの文章を、その場で大まかに理解する力を鍛えられます。
多読の段階では。細かいところまで丁寧に読まなくても問題ありません。
多読では、内容の大意を素早く読み取る力を鍛えるように意識しましょう。
一方の精読は、難しい英文をゆっくり読み込む勉強方法です。
速く読むことは意識せず、いくら時間をかけても良いので文章全体の構造や意味を理解するようにしましょう。
知らない単語や熟語、表現が出てきたら、都度辞書で調べることも大切です。自身が和訳した内容と正しい答えを照らし合わせ、「どこが間違っていたか」「どんな構造の文章を読み違えやすいのか」を学習することで、より高度な語彙力や表現力を身につけられます。
ライティング
ライティングの設問では、質問の英文を正確に読み取れる力、質問に対する回答を文章にできる語彙力・基礎文法力が必要となります。
たとえば「日常的に節電を心がけるべきか?」という問題が出されたとしたら、まずは「節電を心がけるべきだと思う」、「心がけなくても良いと思う」というように、自身の立ち位置を明確にしましょう。
その後、どうしてそう思うのかという理由を著述します。
この時、必ずしも高度な英文を書く必要はありません。
自身の立ち位置と、その理由(客観的な根拠に基づく)を書き切ることができればOKです。
ただし、単語や熟語のスペルミス・文法ミスにはしっかりと注意を払いましょう。
加えて、同じ表現を何度も使い過ぎるのもいただけません。
どの技能においてもいえることですが、語彙力と文法の基礎地盤を固めおくことも重要です。
スピーキング
英検のスピーキング試験は、音読とその文章に関する質問、イラストに登場する情景や登場人物の行動に関する質問、受験者自身に関する質問で構成されています。
解答の正確さはもちろんですが、解答の情報量やスムーズさ、積極的な姿勢なども評価対象になります。
過去問を参考に、試験の出題形式に慣れることが大切です。この時、面接官役として学校や塾の先生や英語スクールの講師に協力してもらうことも忘れずに。
また、英語を話すときは正しい発音でゆっくり・はっきり話すよう心がけましょう。
ネイティブ特有のアクセントや抑揚のつけ方を真似すると、スコアにつながりやすくなります。
英検は、CSEスコアが導入されて各技能をバランスよく伸ばすことが重視されるようになりました。
級が上がるごとに、独学でカバーするのが難しいと感じる部分も増えてくるでしょう。
着実なステップアップをするには?
そこで重要なのが、英語スクールの対策講座を受講して得意な技能を伸ばし、苦手な技能は確実に補強することです。
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